S&P 500月例レポート (2018年10月配信)_前編

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2018年9月
「アノマリーを破り再び過去最高値を更新」

―2018年分の値上がりは第3四半期に大半を実現―

 株式市場が広く値上がりした第3四半期は、多額の資金をビットコインに振り向けてはなりませんでした(ビットコインの価格が現在の6,661ドルではなく、2017年12月の1万9,871ドルに戻したのであれば別ですが)。一方、第3四半期の株式市場は13週のうち10週でリターンがプラスになり、さらに、珍しく9月もプラスを記録しました。これまで9月は54.4%の確率で値下がりし、平均下落率は1.00%でした。わずか0.43%(配当込みのトータルリターンは0.57%)の上昇とはいえ、値上がりしたことに変わりはありません。

 9月24日からの週は、第3四半期に値下がりした3週間のうちの1週間(0.54%の下落)として取引を終えましたが、そのことを気に留める市場参加者はいないようでした。空売り銘柄の含み損を抱えることになった株式ショート筋を除けば、ですが。ウォール街のムードは明るく、S&P 500指数は第3四半期に7.20%(配当込みのトータルリターンは7.71%)値上がりしました。これは、2013年第4四半期の11.35%以来、第3四半期としては10.72%を記録した2010年以来の上昇率です。

 数ティックを取りに行くトレードや、デイトレなど短期売買を行わなくても、この3カ月間はリターンを手にすることができました。S&P 500指数は取引レンジを上抜けて2,900を突破し、取引時間中の高値(2,940.91)と終値での高値(2,930.75)を更新し、第3四半期中に最高値を5回更新したからです(9月に1回と8月に4回)。

 年初来で見ても、最高値の更新は1月の14回を含めて19回に上り、個別銘柄でも、値上がりした銘柄数(348銘柄)が値下がりした銘柄数(157銘柄)を大きく上回りました。直近の株価上昇と値上がり基調の継続は、S&P 500指数が過去6カ月間の取引レンジから上放れたことを裏付けるものと言えるでしょう。

 インデックスとして長い歴史を持つダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は、2018年1月26日にS&P 500指数とともに最高値を付けた後、S&P 500指数に遅れを取っていましたが、9月に入って、年初来で12回目と13回目、大統領選挙以降では100回目と101回目となる最高値更新を記録しました。

 この3カ月を振り返ると、株価を動かしたのはテクニカル要因だったようです。減税と売上高の増加(2018年第2四半期は前年同期比11.2%増)を背景に、企業利益は暫定データで同26.7%増と拡大しました。貿易問題は駆け引きが続いているものの、進展もありました。米国とカナダの間では交渉が継続中で、米中間は緊張が高まっているように見えますが、いずれも合意に達するとの見方が多勢を占めています(カナダとは早い段階での合意が見込まれ、中国との合意は年末)。

 注意すべき点は、ウォール街では多くの市場関係者が引き続き中国との貿易問題を重大な懸念事項ととらえており、貿易戦争に発展する可能性もあると考えていることです。政治問題が経済問題を圧倒する場合もあります。

 現時点でS&P 500指数は、年初来8.99%の上昇、配当込みのトータルリターンがプラス10.56%、年率換算ではプラス14.37%と、好調に推移しています。バーでの会話と仲間に酒を振る舞っているトレーダーの人数(ただし、お金がなくてもトレーダーは平気で奢る場合があるので、この人数はあまり参考にはなりません)から判断すると、今ここで1年が終わったら困ると言う人はほとんどいないでしょう。

 第4四半期に向けた市場心理が暗いわけはなく、多くは明るい見通しを持っているものの、弱気派や逆張り派は常に存在するものです。一方、これまでのところ今年は困難な年でもありました。2018年の値上がり分の大半は第3四半期に実現したもので、それによって最適な状態が維持されています。現時点で見通すと、第4四半期もまた相場の波乱や政治の混乱が続くと思われます。

●「嘘には3種類ある。普通の嘘、真っ赤な嘘、そして統計だ」(マーク・トウェイン)

 ・貿易問題は9月も引き続きメディアを賑わし、グローバル市場を左右しました。NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉の合意期限である9月30日が迫る中(米国議会への通知。12月1日にはメキシコ大統領が退陣。カナダでは10月1日に地方選挙実施。米国では2019年1月3日に新議会が発足)、米国とカナダの交渉が続けられました。トランプ大統領は2018年9月24日に、それまでの関税対象である500億ドル相当に加えて、2,000億ドル相当の中国製品に対する追加関税を発動しました。当初の関税率は10%で、2019年1月1日には25%に引き上げられます(したがって、交渉のための時間的余裕があり、中間選挙前に米国の物価が上昇する事態を避けることができます)。大統領はさらに2,670億ドルの中国からの輸入に追加関税を課すことも検討していると表明しました(2017年の中国からの輸入額は5,050億ドル)。中国は報復措置として、同じく2018年9月24日付で600億ドル相当の米国製品に対する追加関税を発動しました。

 →米国市場は9月に0.03%上昇、年初来では9.09%上昇

  ◇時価総額は9月に70億ドル減、年初来では2兆1,510億ドル増

 →米国以外の市場は9月に0.03%下落、年初来では5.24%下落

  ◇時価総額は9月に2,730億ドル増、年初来では1兆1,540億ドル減

・過去最高の企業業績、貿易交渉の進展、個人消費拡大の兆候(減税が追い風)、持続的な経済成長を市場が好感したことから、第3四半期のS&P 500指数は7.20%上昇(配当込みのトータルリターンは7.71%上昇)と好調でした。同指数は9月20日に終値で今年19回目の最高値を更新し、2016年11月8日の大統領選当日以降の最高値の更新回数は89回となりました(取引時間中の最高値は2,940.91、終値での最高値は2,930.75)。ダウ平均も9月20日と21日に今年12回目、13回目の最高値(大統領選当日以降で100回目と101回目)を更新しました(取引時間中の最高値は2万6,769.16ドル、終値での最高値は2万6,743.50ドル)。

・米国10年国債利回りは8月末の2.86%(7月末は2.96%)から上昇して3.06%で9月を終えました。

・S&P 500指数構成銘柄の2018年第2四半期のEPSは好調で過去最高を更新しました。現在注目を集めている第3四半期は、法人税減税と売上高の増加を背景に高水準の利益とキャッシュフローが見込まれ、利益は前年同期比で27.8%増と、またもや過去最高の更新が予想されています。

・長期に及ぶ強気相場(2009年3月9日以降継続)はとどまる気配がなく、S&P 500指数は過去最高値を更新し、強気相場開始以降の年率リターンは16.51%、配当込みのトータルリターンは年率18.91%となりました。

・2018年第3四半期の63営業日中で1%変動した日数はゼロ(1928年以降では23.5%)、取引時間中の平均値幅が1%以上となった日数はわずか5日でした(1962年以降では67.4%)。

・過去3カ月間が順調だったことから、年初来のS&P 500指数は良好な結果となり、年初来の上昇率は8.99%、年率換算で12.20%、トータルリターンは10.56%、年率換算で14.37%となっています(2017年通年の上昇率は19.42%、トータルリターンは21.83%)。

●2018年9月

 過去の実績を見ると、9月は44.4%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は3.31%、下落した月の平均下落率は4.62%、全体の平均騰落率は1.00%の上昇となっています。10月は58.3%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は4.17%、下落した月の平均下落率は4.66%、全体の平均騰落率は0.49%の上昇となっています。今後のFOMCのスケジュールは、年内は11月7日-8日、12月18日-19日、2019年は1月29日-30日、3月19日-20日、4月30日-5月1日、6月18日-19日、7月30日-31日、9月17日-18日、10月29日-30日、12月10日-11日、2020年は1月28日-29日となっています。

●主なポイント

・9月のS&P 500指数は2,913.98で取引を終え、8月末の2,901.52から0.43%上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス0.57%)。8月は3.03%の上昇でした(同プラス3.26%)。過去3カ月間では7.20%上昇(同プラス7.71%)、年初来では8.99%上昇(同プラス10.56%)、過去1年間では15.66%上昇(同プラス17.91%)、大統領選当日(終値2,139.56)以降では36.20%上昇(同プラス41.41%)となっています。同指数は9月中に終値での最高値を1回更新して、年初来の更新回数は19回となりました(直近の高値更新は9月20日で2,930.75)。最高値の更新は2017年に62回(1995年の77回に次ぐ過去2番目の更新回数)、大統領選以降では89回となりました。

 ダウ平均は2万6,458.31ドルで取引を終え、8月末の2万5,964.82ドルから1.90%上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス1.97%)。8月は2.16%の上昇でした(同プラス2.56%)。過去3カ月間では9.01%上昇(同プラス9.63%)、年初来では7.04%上昇(同プラス8.83%)となっています。ダウ平均は9月中に最高値を2回更新しました。これは2018年1月26日に2万6,616.71ドルの最高値を記録してから237日ぶりの更新で、これにより最高値の更新回数は年初来で13回(1886年以降の最高値の更新回数は2017年の71回が過去最高)、大統領選以降で101回となりました。

・米国10年国債利回りは8月末の2.86%から上昇して3.06%で9月を終えました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。

・英ポンドは8月末の1ポンド=1.2960ドルから1.3034ドルに上昇し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは8月末の1ユーロ=1.1606ドルから横ばいでした(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は8月末の1ドル=111.17円から113.69円に下落し(同112.68円、同117.00円)、人民元は8月末の1ドル=6.8318元から6.8690元に下落しました(同6.5030元、同6.9448元)。

・原油価格は8月末の1バレル=69.92ドルから上昇して73.53ドルとなりました。7月末は68.43ドルでした(同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(米エネルギー情報局(EIA)による全等級)は8月末の1ガロン=2.906ドルから上昇して2.923ドルで9月の取引を終えました(同2.589ドル、同2.364ドル)。

・金価格は8月末の1トロイオンス=1,205.30ドルから下落して1,195.10ドルで月を終えました(同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。7月末は1,232.90ドルでした。

・VIX恐怖指数は8月末の12.86から低下して12.12で月末を迎えました。7月末は12.84でした。月中の最高は15.63、最低は11.10でした。(同11.05、同14.04)。

・第2四半期のEPSは暫定値で前年同期比26.7%増と過去最高を更新し、売上高も11.2%増で過去最高を更新しました。

・第2四半期の自社株買い額(暫定値)は2018年第1四半期(従来の過去最高)から増加して総額1,906億ドルとなりました。2018年第2四半期は前年同期比で58.7%増、2018年上半期は49.9%増でした。

・ビットコインは9月中に7,418ドルの高値と6,131ドルの安値を付け、8月末の7,067ドルから下落して6,661ドルで月を終えました(同1万3,850ドル、同968ドル)。

・ボトムアップベースで算出した1年後の目標値はS&P 500指数が3,184(現在値から9.28%上昇、8月末時点の目標値は3,093)、ダウ平均は2万8,618ドル(同8.24%上昇、同2万8,261ドル)と、引き続き上昇しました。

●ファンダメンタルズ

・S&P 500指数構成企業の2018年第2四半期決算は、暫定結果に基づくと素晴らしい内容となっています。営業利益は前年同期比で26.7%増加し、全体の80.0%の銘柄で予想を上回り、EPSは3四半期連続で過去最高を記録しました。売上高は同11.2%の大幅増加で過去最高を更新し、73.6%の企業で予想を上回りました。営業利益率も過去20年間の平均8.08%に対し、過去最高の11.55%(従来の最高は11.40%)となる見込みです。

 第3四半期の利益見通しは現在、前年同期比28.1%増と(同四半期の見通しについては大幅な変更はありませんでした)、再び過去最高の更新が予想されており、第4四半期には同25.0%増とさらなる記録更新が見込まれています。2018年通年では、利益は2017年を26.4%上回る見通しで(大半は減税効果による)、2019年は2018年から12.1%の増益が予想されています。とはいえ、経済の不透明感を考慮すると、この予想は依然として若干楽観的と受け止められています。

 2018年第2四半期の自社株買い(暫定値)は、過去最高を付けた第1四半期からさらに増え、1,906億ドルと過去最高を更新しました。第2四半期は前年同期比で58.7%増、上半期は同49.9%増となりました。9月に支払われた1株当たり現金配当は4.03ドルで、前年同月から24.46%増加しました。年初来では39.56ドルとなり、前年同期から9.42%増加しました。第3四半期の現金配当は1株当たりで13.66ドルと過去最高となり(2018年第2四半期の13.10ドルから増加)、合計で1,157億ドル(同1,116億ドル)となりました。年初来で291銘柄が増配し、減配したのはわずか2銘柄でした(そのうちの1社であるホテル大手のWyndham Worldwideは、事業をスピンオフして2社に分社化し、スピンオフ後の2社の配当率は分社化前と同じでした)。291対2という比率は最近の指数の歴史において比類するものがありません(筆者が入手しているデータは2003年以降のものです)。

 9月の配当金増加率の中央値は14.29%となり、8月の14.81%を下回り、7月の13.04%を上回りました。年初来の中央値は10.34%でした。また9月の平均増加率は14.58%となっています(8月は16.59%)。年初来の平均増加率は14.45%(9月時点でも14.45%)となり、2017年の同期間の11.36%を上回っています。9月までの12カ月間の支払配当額は前年同期比で9.42%増加し、2018年も過去最高となることが予想され、そうなれば7年連続で過去最高を付けることになります。ただし、事業環境、現金の入手可能性、予想される利益の増加、株主還元を強調する企業の「意欲」を踏まえても、実際の配当金の前年同期比の増加率が再び2桁になる可能性は少ないように思われ、合計で9%前半となることが示されています。それでもなお順調であり(特に減税効果を踏まえると)、依然として賃金の伸び率の数倍となっています。

 注目は、2018年第2四半期のGDP確報値が、個人消費と企業支出ならびに純輸出が増加して年率換算で前期比4.2%増となったことです。企業利益は6.4%増となりました。米商務省経済分析局の暫定報告によると、第2四半期に米企業は(現行規制の規定に基づき)海外保有利益1,700億ドルを国内に環流させました(第1四半期は2,950億ドル)。米家計資産は第2四半期に2.19兆ドル増加して過去最高の106.9兆ドルとなりました(S&P 500指数の時価総額は24.8兆ドル)。

※後編に続く


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