S&P 500月例レポート(2018年9月配信)_後編

ファンダメンタルズ

 S&P 500指数構成銘柄の97.8%に相当する企業が業績発表を終えましたが、営業利益が予想を上回った企業は79.7%という異例の高水準となりました。EPSは3四半期連続で過去最高を更新する見込みです(2018年第3四半期には4四半期連続で過去最高を記録する見通し)。営業利益率も過去20年間の平均8.08%に対し、過去最高の11.57%(従来の過去最高は11.40%)となる見込みです。売上高は前年同期比11.2%と過去最高に達する見通しで、筆者はこの点が今回の決算シーズンでは特に重要なポイントであると考えています。現時点で、498社のうち、営業利益が事前予想を上回った企業は397社、予想を下回ったのは75社、予想通りだったのは26社でした。詳細な売上データがある495社のうち365社(73.7%)で売上高が事前予想を上回りました。2018通年では、利益は2017年を26.7%上回る見通しで(大半は減税効果による)、2019年は2018年から12.2%の増益が予想されています(とはいえ、経済の不透明感を考慮すると、この予想は引き続き若干楽観的と受け止められています)。

 承認額の98.2%に相当する自社株買い(1,851億ドル)が実施されました。2018年第2四半期の自社株買い額は過去最高となった第1四半期(1,891億ドル)を3.0%下回りましたが、2017年第2四半期を55.1%上回りました。2018年8月に支払われた1株当たり現金配当は6.43ドルで、2017年8月から4.17%増加しました。年初来では35.53ドルとなり、前年同期から7.94%増加しました。年初来で277銘柄が増配し、減配だったのはわずか1銘柄だけでした。減配だったホテル大手のWyndham Worldwideは、事業をスピンオフして2社に分社化しました(スピンオフ後の2社の配当率は分社化前と同じ)。277対1という比率は最近の指数の歴史において比類するものがありません(筆者が入手しているデータは2003年以降のものです)。

 8月の配当金増加率の中央値は14.81%となり、7月の13.04%、6月の10.26%、年初来の10.34%を上回りました。また平均増加率は16.59%となっています(7月は17.95%)。年初来の平均増加率は14.45%(7月時点では14.29%)となり、2017年の同期間の11.36%を上回っています。8月までの12か月間の支払配当額は前年同期比で7.39%増加し、2018年は過去最高となることが予想されます。事業環境、現金の入手可能性、予想される利益の増加、株主還元を強調する企業の「意欲」を踏まえれば、実際の配当金の増加率は前年比で2桁になることもあり得ますが、現時点ではそのような可能性低いと思われます(ただし、見込みはあります)。

トランプ大統領と政府高官

・トランプ大統領は前提条件を設けずにイラン大統領と会談する用意があると表明しましたが、イランはこの申し出を拒否しました。8月下旬に米国エネルギー省は対イラン制裁の発動に先立ち、戦略石油備蓄から1,100万バレルを放出する計画を明らかにしました。トランプ大統領は(核合意の離脱から90日間の猶予期間の期限が切れた後)イランに対する経済制裁の一部再開を実施しました。イランがより厳しい内容の核プログラムに合意しない場合、11月5日に米ドルの売却や米国製品の販売を制限する追加制裁が発動される見通しです。

・オハイオ州で行われた下院の補欠選挙は大接戦となりました。不在者投票や暫定票の開票を経て、共和党のトロイ・ボルダーソン氏が民主党のダニー・オコナー氏に(票差1,680で)勝利しました。民主党が下院で多数議席を確保するためには(11月6日の中間選挙で)23議席を追加する必要があります。

・トルコ当局に拘束されている米国人の解放を求めた米国による経済制裁発動が、トルコ経済に追い打ちをかける格好となり、トルコリラと株式市場は引き続き下落しました。他の新興国市場も懸念を背景に下落しましたが、全面的に波及する事態には至っていません。トルコは米国製電化製品の不買運動実施を訴えています。また、カタールは(支援表明として)トルコへの150億ドルの直接投資を発表しました。

・トランプ大統領は米環境保護局による石炭火力発電所に対する規制を緩和することを計画しています。

貿易 - 戦争と平和

・米国は英国で起きた神経剤による元スパイ毒殺未遂事件をめぐり、ロシアに対して追加制裁措置を発動しました。この発表を受けて、ロシアルーブルは対ドルで2年振りの安値に下落しました。

・米国は160億ドル相当の中国製品に関税を発動し、中国も米国に対して同等の追加関税を実施しました。その結果、これまでに発動された関税は合計で1,000億ドルとなりました(さらなる追加関税が検討されています)。米中事務レベルの貿易協議は再開しましたが、両国とも自国の主張を述べるにとどまり、交渉は進みませんでした(本稿執筆時点)。

・これに関連して、企業が関税発動を見越して原材料と供給品を蓄えようとしたため、中国の対米輸出と輸入は増加しました。貿易と関税の状況次第では、原材料と供給品の積み増しによって、第3四半期の受注は減少する見通しです。

・トランプ大統領は2年前にトルコで起きたクーデター未遂事件に加担したとして拘束された米国人牧師の釈放を求め、トルコに対する制裁措置を発表しました。トルコはこの発表に対して対立姿勢をとっています。発表の1週間後、トランプ大統領がトルコから輸入するアルミニウムと鉄鋼への関税を2倍に引き上げるとツイートしたことを受けて、トルコリラは下落しました。トルコ10年国債の利回りは20%を上回る水準で取引され、こうした状況を受けて欧州市場も下落しました。

・米中は事務レベルの協議を行い、5月に中断された貿易交渉を再開しました。両国とも自国の主張に固執している模様である中、輸入関税は目下、次の段階に向かっているようです(トランプ大統領と習近平国家主席は11月に会談の予定)。

各国中央銀行の動き

・インドはベンチマーク金利を0.25%引き上げて6.5%としました。これはインフレ率と資本流出の抑制を目的としています。

・イングランド銀行は全会一致で利上げを決定し、金利を0.50%から2009年(1.00%)以降で最も高い水準となる0.75%に引き上げました。

・オーストラリア準備銀行は市場の不透明感と最近の干ばつで国内農家が受けた損害に配慮し、翌日物キャッシュ・レート・ターゲットを1.5%に据え置きました(金利は2年間この水準に据え置かれています)。

・ベネズエラは経済の安定化に向けて自国通貨を96%切り下げ、賃金を引き上げました(6,000%)。

・7月31日-8月1日に開催されたFOMC会合は、米国経済は「力強く」、見通しは楽観的であるとして、金利を据え置きました。市場はこの声明の内容を次回9月25-26日会合での利上げを認めたものと受け取りました。

・FOMC会合議事録(7月31日-8月1日開催分)は、FOMCには金利を引き上げる準備と意向があり、利上げが可能であることを示しました。利上げは9月25-26日開催の会合で発表されるとの見方が大半を占めています。また、FOMCメンバーは、労働市場は力強く賃金はまもなく上昇するとの見方をとっています。

・カンザスシティー連銀が開催する年次のジャクソンホール会議で、パウエルFRB議長はFOMCの段階的な利上げ政策を擁護しました(講演が行われた金曜日に0.62%上昇したことが示す通り、市場はこれを評価しました)。市場は概ね、パウエル議長の発言を9月25-26日開催の次回FOMC会合での追加利上げを肯定したものと受け取りました(12月18-19日の会合での利上げはなお議論されており、利上げ否定論が賛成論を上回っていますが、「彼ら」が投票するわけではありません)。FOMC会合議事録と同様に、パウエル議長は最近のFOMCの利上げに対するトランプ大統領の批判を取り上げませんでした。

・米上院はトランプ大統領がFRB副議長に指名したリチャード・クラリダ氏(ピムコのマネージング・ディレクターであり、コロンビア大学のエコノミスト)を承認しました。

・アルゼンチンの中央銀行はアルゼンチンペソが引き続き下落していることから(今年、対ドルで半分近くに下落)、金利を60%に引き上げました。アルゼンチンはIMFに500億ドルの融資の前倒しを要請しました。

利回り、金利、コモディティ

 米国10年国債の利回りは7月末の2.96%から低下して2.86%で取引を終えました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。英ポンドは7月末の1ポンド=1.3123ドルから1.2960ドルに下落し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは7月末の1ユーロ=1.1693ドルから1.1606ドルに下落しました(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は7月末の1ドル=111.84円から111.17円に上昇し(同112.68円、同117.00円)、人民元は7月末の1ドル=6.8112元から6.8318元に下落しました(同6.5030元、同6.9448元)。

 原油価格は7月末の1バレル=68.43ドルから上昇し69.92ドルで月末を迎えましたが、6月末の74.31ドルを下回りました(同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、7月末の1ガロン=2.924ドルから2.906ドルに下落しました(同2.589ドル、同2.364ドル)。金価格は7月末の1トロイオンス=1,232.90ドルから下落して1,205.30ドルで月を終えました(同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。VIX恐怖指数は7月の12.84から上昇して12.86で8月末を迎えました(同11.05、同14.04、月中の最高は16.86、最低は10.17)。

 S&P 500指数は2カ月連続で好調なリターンを上げました(7、8月で6.74%上昇)。夏場の不振ということはなく、商いは低調だったものの、相場は大きく上昇しました。8月のS&P 500指数は7月の3.60%(配当込みのトータルリターンはプラス3.72%)の大幅上昇ののち、8月も3.03%(同プラス3.26%)と再び大きく上昇し、5カ月連続での上昇を記録しました(年初来では8カ月中6カ月で上昇)。2月(3.69%下落)と3月(2.69%下落)の下落を受けて正式な調整局面(高値から10%下落)に入った相場は、今や再び史上最高値を更新しています。S&P 500指数は過去3カ月では7.25%(配当込みのトータルリターンはプラス7.76%)、年初来では8.52%(同プラス9.94%)、過去1年間では17.39%(同プラス19.66%)、2016年11月8日の米大統領選(トランプ氏が勝利、中間選挙は2018年11月6日)以降では35.61%(同プラス40.61%)上昇しています。年初来で8.52%という上昇率を年率換算すれば12.78%となりますが、これは強気相場が9年半の長期に及ぶ中で、依然として史上最高値を更新していることを踏まえれば(強気相場の平均期間は5.1年)、悪い内容ではありません。

 強気相場は8月に過去最長を更新し(2018年8月22日で113.4カ月)、これまでの上昇率は329%、配当込みのトータルリターンは423%に及んでいます。企業は減税を背景に過去最高益の更新が容易になると同時に、減税による利益の一部を増配と自社株買いを通じて株主に還元しており、市場は業績見通し(見通しは過去最高を更新)が示唆する以上の活気を見せています。

 8月は7月と同様、相場のボラティリティは低下し、1%以上変動した日数は23営業日中ゼロとなりました。市場が1営業日中に1%以上上昇したのは2018年6月1日(1.08%上昇)、1%以上下落したのは6月25日(1.37%下落)、2%以上変動(上昇あるいは下落)したのは2018年4月が最後となっています。8月の平均日中値幅(高値と安値の差)も7月の5.52%(6月の3.70%から上昇)から4.30%に低下しました。1年平均は5.38%、10年平均は7.19%となっています。

 出来高は7月(前月比17%減)から総計では7%増加したものの、実際の営業日数調整後(8月の23日に対して7月は21日)では若干減少しました。前年同月比では2%減少しています。

 セクター間のリターンの格差は3カ月連続で縮小が続いた後、相場の上昇が続く中で8月に拡大しました。8月はパフォーマンスが最高のセクター(情報技術)と最低のセクター(エネルギー)の騰落率の差は10.53%と、7月の6.25%、6月の7.13%、5月の9.41%から拡大しました。騰落率の差は1年平均では11.00%、年初来では27.26%となっています。

 8月は11セクター中8セクターが上昇し、7月の11セクターを下回ったものの、6月(8セクター)と同じとなりました。全般的な結果は大幅な業績拡大を反映し、税率の引き下げや貿易問題に進展が見られたことも追い風となりました。ただし、上昇は一様ではなく、コモディティ関連セクター(エネルギーと素材)は下落し、資本財サービスセクター(個別の貿易・関税問題に反応)はまちまちとなりました。

 8月はApple(AAPL)が19.6%上昇(年初来では34.5%上昇)し、時価総額1兆ドル(1.1兆ドルで8月を終了)を突破する中、情報技術セクターが7月の2.04%上昇に続いて6.74%上昇し、騰落率トップとなりました。同セクターは年初来では19.98%、大統領選以降では65.99%上昇しています。

ヘルスケアセクターは8月に4.18%上昇し(7月もS&P 500指数の3.60%上昇に対し、6.48%上昇と市場平均を上回る)、年初来では12.03%の上昇となりました。

 消費関連セクターはパフォーマンスに差が出たものの、少なくとも両セクターとも上昇しました。一般消費財セクターは8月に4.98%上昇し騰落率第2位となり、年初来では18.32%上昇(情報技術セクターに次ぐ第2位)しています。Amazon(AMZN)は8月に13.2%、年初来では72.1%上昇して時価総額1兆ドルの大台に近づき、9,820億ドルで8月を終えました。

 生活必需品セクターは8月に0.34%上昇しましたが、年初来ではなお6.11%の下落にとどまっています。原油価格が下落する中(ただし、一定のサポートにより下落幅は限られる)、エネルギーセクターが3.79%の下落で騰落率最下位となりましたが、同セクターは年初来ではなお2.66%上昇しています。素材セクターは0.74%下落し、年初来でも1.94%の下落となりました。資本財サービスセクターは0.01%下落して下落率3位となりましたが、年初来では1.24%上昇しています。

 8月も値上がりした銘柄数が値下がりした銘柄数を大幅に上回ったものの、その差は縮小しました。8月の値上がり銘柄数は315銘柄(平均上昇率は5.47%)と7月の381銘柄を下回りましたが、6月の284銘柄は上回りました。そのうち10%以上値上がりした銘柄数は41銘柄(平均上昇率は14.54%)と、7月の54銘柄(6月は32銘柄)から減少しました。一方、値下がりした銘柄数は189銘柄(平均下落率は4.32%)と、7月の124銘柄を上回った一方、6月の221銘柄は下回りました。そのうち10%以上下落した銘柄数は19銘柄(平均下落率は13.70%)と、7月の15銘柄(6月は16銘柄)から増加しました。

 年初来では、引き続き値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回り、その差は拡大しています。値上がり銘柄数は304銘柄(平均上昇率は18.81%)と7月の289銘柄(6月は245銘柄)から増加し、そのうち、188銘柄(7月は154銘柄)が10%以上、79銘柄(同58銘柄)が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は201銘柄(平均下落率は11.15%、同216銘柄)で、そのうち90銘柄(同85銘柄)が10%以上、22銘柄(同16銘柄)が25%以上値下がりしました。
 

 

 

 

 

 
 
 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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