アジアにおける外国人材争奪戦-海外出稼ぎ労働者の未来市場-

4、世界労働市場論の新局面

◇アジアで初めての人口大移動の時代

 EUや米国では、国際労働移動は早くからあった。EUは域内の自由化、域外からも移民を受け入れてきた。米国はヒスパニック系をはじめとして全世界から外国人材を受け入れてきた。

 アジアは従来、労働力の出し手であった。人口稠密であり、かつ人口増加が続いてきたので、海外出稼ぎ労働者の送り出し側であった。しかし、2010年代に入って、急速に人口減に転換した。従来から、シンガポール、香港のように、人口小国では人口規模のピークアウト以前から外国人労働者を受け入れてきた。日本も少ないが受け入れてきた。しかし、今後は巨大人口国(中国)で人口減少が大きく進むので(2050年に向けて2億4000万人も生産年齢人口が減少)、かなり大きな人口移動が起きるのではないか。

 図1に示したように、今後は同じアジア地区で、労働力が減少する国と増加する国が併存することになる。不足と過剰の両方があることが取引の誘因となる。加えて、出稼ぎ労働者の受入れは相手国への「経済協力」を意味するので(拙稿「続・中国が労働力を輸入する日」参照)、労働力不足の経済大国が受け入れに転じる可能性がある。

 アジアの大規模な労働移動は、中国の台頭(経済発展)と人口動態変化(労働力減少)が引き金になる。労働力の増加一途から減少への転換、外国人労働者を吸引できる賃金水準への発展が、同時に起きている。しかも、これが人口超大国で起きるので、交流人口の規模が大きくなる。

 これだけ活発な人口移動は、EU等欧米では前から見られたが、アジアでは初めてだ。しかも、巨大需要国がニューカマーとして現れ、これが未開発の奥地まで労働力供給源を掘り起こしていく。アジア初、そしてかって例のない大規模移動がみられよう。2020年代、国際労働移動は“新局面”に入っていくであろう。

◇外国人材の争奪戦の時代

 中国の台頭が、大規模な国際労働移動を引き起こす。沿海地区都市部企業の就業者数は2億821万人である(2016年)。外挿法で機械的に試算すると、2020年には2億4000万人になる。仮に日本と同様、就業者の2%を外国人労働者に依存すると、中国の沿海部は2020年に470万人の外国人労働者を受け入れることになる。

 今まで、労働力の輸出国だった国が輸入国になり、しかも日本の現状(128万人)の4倍近くを受け入れる。国際労働市場で470万人を需要するニューカマーの出現だ。仮にそうなれば、中国による労働力の「爆買い」が始まる。日本は中国とフィリピン人やインドネシア人等を取り合う競争となろう。外国人労働者の争奪戦である。

 日本は競争力があるであろうか。出稼ぎ労働者が得られる所得は、日本に来る方が中国に行くより高いであろうか。外国人労働者受入れの競争力は賃金水準とその国の魅力(ソフトパワー)の関数であるが、日本は魅力を持たれるものがあるであろうか。中国の爆買いに対抗する手段を考えなければならない。

◇水平分業

 中国の外国人労働者受入れは「水平分業」となろう。中国は沿海部と内陸部で経済発展の格差が大きく、また沿海部の中でも格差が大きい。沿海部は先進国の仲間入りしたとしても、内陸に遅れた地域があり、移行過程、過渡期の国である。中国全体してみれば、外国人労働者の送り出しもあれば、受け入れもあるであろう。

 海外出稼ぎ労働者の職種は多様だ。家政婦、サービス、工場、建設現場、農業、等々。送り出し国はいずれかに比較優位を持つであろう。例えば、フィリピン人は家政婦、インドネシア人は建設現場、中国人は農業など(比喩としての例示)。

 その場合、送り出し一方、受け入れ一方という一方通行ではあるまい。中国の場合、家政婦は輸入する、建設作業員も入ってくる。しかし、一方で、内陸からローエンドの労働力が日本やシンガポールを目指すかもしれない。つまり、「外国人労働者」と一括りにして捉えると、輸入もあれば輸出もあることになり、水平分業である。

 以上は、労働力需給を軸に国際労働移動を論じたものであって、労働市場そのものの分析はない。各国の労働市場を分析することで各国の比較優位を明らかにする作業も魅力的な研究になろう。

(参考)
拙稿「外国人実習生が日本を支えている-日本人並み待遇でも競争力低下問題-」Webみんかぶ2017年12月19日付けhttps://money.minkabu.jp/63861
拙稿「外国人実習生に支えられた野菜産地」『農業経営者』2018年1月号。
拙稿「外国人実習生の効果分析(茨城県農業の事例)-技能実習生は財産だ、後継者、高所得の決め手は実習生-」『農業経営者』2018年2月号。
拙稿「外国人実習生 農業の要に-ソフトパワー磨き競争力維持-」山形新聞2017年12月26日付け「直言」欄(7面)。
拙稿「日本は低賃金の国になってきた-外国人労働者受け入れの競争力低下どう防ぐか-」Webみんかぶ2018年1月17日付けhttps://money.minkabu.jp/64112
拙稿「中国が労働力を輸入する日-Xデーは2020年代前半-」Webみんかぶ2018年1月29日付けhttps://money.minkabu.jp/64284
拙稿「続・中国が労働力を輸入する日-フィリピン人家政婦20万人在留-」Webみんかぶ2018年2月6日付けhttps://money.minkabu.jp/64389
拙稿「奪われる外国人労働者-「安く雇う」から「人材採用」へ-」山形新聞2018年2月20日付け「直言」欄(7面)。
拙稿「外国人実習生受け入れ 日本の競争力低下」『農業経営者』2018年3月号。
拙稿「外国人労働者が日本を支えている」石橋湛山記念財団発行『自由思想』第148号(2018年3月予定)。

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