アジアにおける外国人材争奪戦-海外出稼ぎ労働者の未来市場-

3、ボルネオ先住民の海外出稼ぎ

 マレーシア領ボルネオ島は、戦前的古い知識でいえば、南方の未開拓地である。しかし、北西部サラワク州の州都・クチン市は人口60万人の大都会である。「オラウータンの島」と思っていたら、街を歩くと、先進国欧州の風情、民度の高さを感じさせる町である。赤道近くに位置する熱帯の島で、このような町が形成されているとは夢にも思わなかった(拙稿「(サラワク訪問記)日本に直結した経済発展と環境問題」(2013年)参照)。

 しかし、内陸に行くと、熱帯雨林生い茂る未開発地であり、先住民の村が点在している。しかし、ここにも、海外出稼ぎ労働者の求人が来る。虚を突かれた思いがした。国際労働市場は地球の隅々まで浸透している。実にワールドワイドだ。「全球的」という言葉が一瞬、脳裏をかすめたものである。

 先住民の村にも、出稼ぎで海外に行った経験者がいて、出稼ぎ収入で買った家電製品が自慢の種であったり、伝統的な住居であるロングハウス(長屋)を修復した住民がいる。それを見て、後続の人が現れるのである。

 行先は、シンガポールが多いが、オーストラリア、中東、香港もあるようだ。正式な労働許可は取らずに、不法滞在型の渡航のようだ。就職斡旋業者がいる。職種は、シンガポール、オーストラリア、香港は美容師、メイド、建設関係など、中東は看護師、建設関係、石油採掘の現場の仕事などである。シンガポールは近いので、いつでも直ぐに帰国できると、精神的に楽な気分で出稼ぎに行くようだ。

 賃金は、ボルネオの最低賃金は950リンギッド(2万9800円)であるが、シンガポールに行けばSドル1200~1300(11~12万円)、中東では一般の仕事でUSドル1500~1600(16~17万円)、石油採掘現場でUSドル3000(33万円)程度である。住み込み、食事付きで、もらった賃金は貯蓄して持って帰れるというのが応募の理由だ。先住民族の人は、イスラム教徒ではなく、食べ物や宗教的な問題がなく、また、農作業や重労働に慣れているので、真面目でよく働くと評価されているようだ。

 筆者は愚かな質問をした。「海外出稼ぎに行くのは、所得インセンティブが効いているのか、それとも外国文化に憧れて出稼ぎに行くのか」。オラウータンの森の住民ということで、貨幣経済への反応は低いのではと思ったのである。先住民を前近代人という差別に近い考えに支配された恥ずかしい質問であった。出稼ぎ経験者の豊かな生活を見ているから出稼ぎに出たのであり、労働賃金が高いところに応募する。

(注)本節はNPOボルネオ熱帯雨林再生プロジェクト理事長酒井和枝氏に負うところが大きい。

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