続・中国が労働力を輸入する日-フィリピン人家政婦20万人在留-

4、新々・中国論が必要な時

 筆者の予想では、ビザ規制が緩和され、正式に、フィリピン人家政婦の入国が認められるようになるのではないかと思う。これはフィリピンに対する中国の“経済協力”であり、中国の外交手段になるであろう。また、家事労働力に限らず、もっと広げた範囲でビザ規制の緩和がある可能性は小さくはない。

 筆者は90年代前半、鄧小平の「南巡講話」(92年)の頃、揚子江の下流域、蘇州や無錫など蘇南地区をよく歩いた。中国側関係者との交流でよく話したのは、「12億(当時)の人口と、上昇していく所得がもたらす「巨大な内需」は中国のソフトパワーだ。あなた方は軍事力の強化など不要ではないか。中国の内需はアジア各国に巨大な輸出市場を提供することになるだろう。皆、その市場が欲しくて、中国の意に背くことは出来ないはず。このソフトパワーを強化すればいいのであって、軍事力の拡大など要らないのではないか」と、冷やかし半分に議論しながら交流した。
 拙著『赤い資本主義・中国-21世紀の超大国-』(1993年刊)を上梓した頃の思い出である。中国の経済発展は予想通りになった。

 中国が労働力の輸入に転じるかどうかは、個別数値の予測の問題ではない。中国経済発展の新段階を意味する。発展途上国は労働力余剰である。経済発展に伴い雇用の場が増え、労働力過剰から不足の経済に移る。ルイス転換点を過ぎて人手不足になると、途上国卒業である。

 中国沿海部が労働力の輸入に転じるのは、中国経済が急速に進展し、多くの富裕層を生み出したからだ。賃金が上昇し、外国から出稼ぎ労働者を吸引できるようになったことが最も基本的な要因である。つまり、途上国を卒業し、先進国に移行したことのシンボリックな現象である(ただし、沿海部)。労働力受入れ論は中国が新しい発展段階に移行したという新々・中国論なのである。

 実際、中国沿海部は家政婦に月収14万円(中国・フィリピンの協議で検討されているのは22万円)を払える所得水準になった。格差は大きく、中上層は日本人よりはるかに所得が高い。中国の経済社会は新段階に入ってきたと言えよう。

 日本は、中国が労働力の輸入に転じることはない等と思わないほうがいい。それは油断であろう。外国人人材の受入れ分野で新たな競争者が現れたことを認識し、環境整備を急ぐ方が賢明な対応と思われる。

(参考)
1、拙稿「外国人実習生が日本を支えている-日本人並み待遇でも競争力低下問題-」Webみんかぶ2017年12月19日付けhttps://money.minkabu.jp/63861
2、拙稿「外国人実習生に支えられた野菜産地」『農業経営者』2018年1月号。
3、拙稿「外国人実習生の効果分析(茨城県農業の事例)-技能実習生は財産だ、後継者、高所得の決め手は実習生-」『農業経営者』2018年2月号。
4、拙稿「外国人実習生 農業の要に-ソフトパワー磨き競争力維持-」山形新聞2017年12月26日付け「直言」欄。
5、拙稿「日本は低賃金の国になってきた-外国人労働者受け入れの競争力低下どう防ぐか-」Webみんかぶ2018年1月17日付けhttps://money.minkabu.jp/64112
6、拙稿「中国が労働力を輸入する日-Xデーは2020年代前半-」Webみんかぶ2018年1月29日付けhttps://money.minkabu.jp/64284

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