新産業革命における米国の圧倒的競争力、最大要因は資本市場の効率性

(4) 市場原理に忠実な米国の金融主体、世界の金融イノベーションを主導し続けてきた

●世界一効率的な米国資本市場

 このように米国の資本市場の効率性、先進性は際立っている。それは米国金融資本市場が、世界で最も資本の合理性追求に厳しく、市場金融化が浸透してきたことと関連している。米国金融資本市場の構成主体は、以下に見るように市場親和的なビヘイビアを特徴としている。

 まず家計は資産運用において現金預金比率が著しく低く、株投信など市場性商品が運用対象の大半である(図表10参照)。また企業金融は内部資金中心で銀行借り入れは僅少であり、高ROE、資本効率を求める株主の圧力により、企業は財務レバレッジを大きく高めている。つまり、IPOの増加にもかかわらず、自社株買いによりネットの株式発行はマイナスが続き、債務の増加もあり、Equity to debt swapと言える現象が続いている。そしてそうしたリスクテイクは市場における資産価格上昇(株高、ジャンク債リスクプレミアム低下、長期金利低下)により、家計と企業部門に「好都合」の現実となり続けている。

 米国企業は、利益が高成長する一方、資本生産性の上昇(技術革命による設備コストの劇的低下)により恒常的にフリーキャッシュフローが余剰となっており、それを株式配当と自社株買いでほぼ100%株主に還元している。つまり余剰資本を抱え込んでいない。

 更に金融機関経営が大きく変化している。リーマン・ショック以降、収益スプレッド縮小、規制強化(DF法)、ネット証券の浸食などにより、セールス&トレーディングの収益が急低下し、アドバイザリー業務などより知的付加価値部門へのシフトを迫られている。ヘッジファンドビジネスの退潮、資産運用・個人向けはRIA(Registered Independent Adviser)の登場で変容を遂げている。金融機関はより知的な価値創造にシフトを迫られている。
 
zu10-11
 
●米国で花開いた金融イノベーション(新仕組み、新商品)

 そもそも現在の米国資本市場の効率性は、米国が20世紀以降、世界の金融イノベーションをリードし続けてきたことの延長上にある。①銀行ローンより債券発行という金融形態(米国資本市場を支えた基軸は20世紀初頭の鉄道債発行など債券発行による資金調達が主であった)、② 経営者支配の確立(1932年バーリ・ミーンズによる所有と経営の分離)、企業の社会化の進展、③逸早い金融自由化とディスインターミディエーション、機関投資家現象、ERISA法(1974年)制定による退職年金の運用責任からコーポレートガバナンスの確立、④MMF、CD、先物市場CMEの創設、ジャンク債の創設、証券化商品、シャドーバンキングの発展など、資金調達手段、資金運用手段の多様化が進展し、市場のマッチング機能が飛躍的に高まったこと、⑤企業財務の変化、多様化→M&A、LBO、株主アクティビズム、グリーンメイラー、自社株買い、デレバレッジ、株式ボーナス・ストックオプション、等々。これらは資本の合理性のあくなき追求と言え、米国資本主義の健全性を示している。

 改めて米国資本市場の強さの要因を列挙すると、①労働と資本市場が流動的、効率的で、資源配分が迅速に変化できること、②金融政策の効率性(日本の誤りvs米国の成功)、③ガバナンスの透明性、④ルール設定で世界トレンドをリードできること、⑤オリジネーション(商品製造力)、販売力(市場アクセス)で世界を圧倒していること、等が指摘できる。金融とは究極のプラグマティズムである。米国の企業経営に対しては、短期主義、格差、経営者の高給と強欲、等の批判がなされるが、それらは米国の資本市場のリスクキャピタルの提供と活発なイノベーションの副作用と言えるものであり、アプリオリの批判は当たらない。

 最後に米国労働市場の効率性にも言及しておく。図表12は主要国の労働市場の弾力性を比較したものであるが、米国の労働市場の対GDP弾力性が最も高いことが明瞭である。資本と並んで労働市場の効率性も米国の先進的イノベーションを支えていると言える。
 
zu12
 
●展望

 以上の検証から、米国金融資本市場の相対的優位性は続く。最も市場変化に対して柔軟な米国の特質により、今後も新しい金融ビジネスモデルは米国で生まれるのではないか。

 今や、世界各国は新産業革命に直面し、そこで勝ち抜く競争を展開している。古い分野から新しい分野へ、資本と知的資源、労働力を移転させなければならない。米国がこの競争に大きく先んじているのは、資本市場と労働市場が最も弾力的で、資源移転がスムーズであるからに外ならない。

 例えば10年前、ドイツとフランスの失業率は10%でほぼ同じであったが、今日ではフランスが10%で変わらないのに、ドイツは4%へと大きく低下した。この格差は、15年前のシュレーダー政権が行った、労働市場改革による労働市場の効率化が決定的だったと言われている。ここに焦点を当て、改革を主張したマクロン氏がフランス大統領選挙で勝利したばかりか、議会選挙においても、既成政党を凌駕する圧倒的議席数を確保した。フランスでは捲土重来を期した大改革が始まるだろう。

 日本には、労働市場と資本市場の硬直性が主要国の中で最も高い、という欠点がある。それがありながらも、過去最高の企業収益を上げているのだから、大したものだが、それにドイツで行われたような労働市場改革、アメリカに見られるような資本市場の効率化が加わるなら、将来展望は大きく開かれるはずである。資本市場改革はスチュワードシップコードの策定、コーポレートガバナンスコードの策定、GPIFなど公的機関投資家改革等、大いに進展した。また敵対的M&Aが受け入れられつつある。労働市場改革においても政権のイニシャティブに期待したい。

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