新産業革命における米国の圧倒的競争力、最大要因は資本市場の効率性

(3) 資本市場激変の背景にある事実、利潤率と利子率の乖離

 伝統の枠を超えた金融政策が求められているのは、米国金融資本市場自体が大きく変化しているからである。変化の第一は間断ないコンピュータネットワーク技術の発展である。Eコマース、Eトレード、E決済、Eファンディングの進展、フィンテック、ネットでの情報伝播など、金融を構成する機能が急速にネットにより代替されている。

●教科書に書かれていない現実、高利潤下の金利低下

 より重要な第二の環境変化は、米国をはじめとする先進国金融資本市場において資本余剰が強まっていることである。世界的貯蓄過剰(バーナンキ氏)だけではなく、米国においても家計と企業での金融資産蓄積は大きい。家計金融資産/GDP、一人当たり金融資産は上昇する一方である。また企業部門でも高水準の利益が続く一方、投資資金需要は十分でなく、資金余剰(特に海外での留保利益甚大)が定着しているが、それはフリーキャッシュフローが恒常的に黒字化していることからうかがわれる。こうしたことが長期金利を傾向的に押し下げている。
 
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 今の資本市場が直面する金融困難を説明する不等式は「r1>g> r2」(r1が企業の儲け・利潤率、r2は企業の資本コスト・金利・利子率、gが成長)である。2つの不等式が同時に起こっているのが現在の情勢の大きな特徴である。利潤率が高い、つまり企業が儲かっており、配当率は2%、企業の益回りは5%、そしてROEは14%と高い。では、企業が商売をやる時に必要な資金の調達コストはというと、10年国債利回りは2%台と、この両者との乖離が著しく大きくなっている。

 一般に、利潤率と利子率はほとんど連動すると考えられる。景気が良くて企業が儲かる時には当然金利が上がる。そもそも利潤も利子も資本のリターン、利潤率と利子率は、本来おなじものなのだから、「r1= r2」これが普通の教科書的な経済の姿である。しかし、今起こっているのはr1とr2が極端に乖離し、そのサンドイッチになって成長率が停滞していることである。
 
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 資本市場の使命は適切な資本配分により最大の経済的厚生(インフレ抑制下の雇用増大)を実現することである。しかし利潤率が一方方向に上昇し、利子率が一方方向に低下するという環境の下では、従来型の金融政策では資本配分の非リスク資産への偏りを是正できず、経済厚生を実現できない。そればかりか資本の退蔵を高め、デフレの危機を強めてしまう。こうした環境の下で従来の常識からすれば、奇策、禁じ手が必要不可欠になってしまったのである。量的金融緩和はそうした現実に対する挑戦といえる。

●グリーンスパンの謎の原因、新産業革命仮説が最も説得的

 この「r1>r2」という普通ではない現実は、企業が産業革命に伴う生産性向上により、著しい超過利潤を獲得していることに根本の原因があると考えられる。IT、スマートフォン、クラウドコンピューティングなどの新産業革命は、グローバリゼーションを巻き込み、空前の生産性向上をもたらし、労働投入、資本投入の必要量を大きく低下させている。このミクロでは明白な生産性の向上が、マクロ統計には表れていない。それどころか主要国の労働生産性はリーマン・ショック以降顕著に低下している。

 いくつかの仮説が考えられるが、ミクロで節約された資源が、マクロでは活用できずに遊んでいるということが最も妥当な解釈ではないか。つまりミクロの節約が企業収益の顕著な増加をもたらすと同時に、マクロ的には「slack(余剰)」を生んでいるのである。この利潤率の上昇、利子率の低下というかい離現象はほぼ20年にわたって続いている。グリーンスパン元FRB議長が2005年コナンドラムと指摘したが、イエレン議長の現在も大きな不思議として再認識されている。

●株価上昇はバブルではない

 この資本余剰状態は恒常的に資産価格に上昇圧力を与えており、それはリーマン・ショック前も後も続いている。それによって上昇する資産価格はバブルか、錬金術なのか。現在のところ米国の資産価格上昇には十分な根拠がある、と言ってよい。第一に企業収益の裏付け、つまり価値創造の実態がある。第二に効率的企業財務が自社株買いやM&Aを通して株式価値(ROE)を押し上げている。第三に資産価格上昇が経済拡大の好循環を引き起こし更なる企業業績向上をもたらすという好連鎖が起きている。家計純資産の大幅増加が消費拡大の推進力になっているし、企業のリスクテイク能力の増大は財務的・実物的投資増加をもたらし、余剰労働力の吸収が進展している。

 このように考えればFED viewに基づく米国の金融政策は見事に功を奏したと言える。対してBIS viewによるバブル事前抑制論が危険性の高い政策であり、その影響が強かった日本で長期デフレが定着したことが想起される。

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