トランプ政権下の日本株投資戦略、壮大な上昇相場の始まりに

【10】日本経済に重要な円安を阻害する要素はほとんどない

小祝(丸三証券 社長):それでは、日本についてお聞かせください。米国の大統領選挙以降、日本株は米国株を上回る上昇率を見せています。その理由のひとつが急速に進んだドル高円安だと思います。日本の中核を担う自動車や電機といった輸出産業のみならず、最近では消費関連企業もグローバルに事業展開しており円安メリットが大きくなっています。ドル円相場の行方が日本の株式市場のカギを握っていると思いますが、先生の見方をお聞かせください。

武者:アベノミクス以前の円高が、日本をデフレに陥れた一番大きな原因でしたから、おっしゃるとおりドル円の行方が、日本経済にとって決定的に大事なことだと思っています。そして、先ほどもお話しましたが、ドル高円安はこれから相当長期間にわたって続くと思っています。

 その一番大きな理由は、米国にドル高の条件が揃っていることです。整理すると、米国の経常赤字は縮小し世界的なドル不足が想定されること、好調な経済によって米国のインフレ圧力が強まり、金利上昇圧力も高まるので、それの鎮静剤になるドル高は米国の国益になるということです。

 一方、日本側の要因を見ると、既に日本の貿易黒字はほぼなくなっていて、円安が貿易相手国を困らせるという理屈は成り立たなくなっています。経常収支は大幅な黒字ですが、これは第1次所得収支の黒字が大きいからです。つまり、日本企業が海外に投資をして、海外で儲けたお金が入ってきているだけなので、これも円安を非難される要因にはならないでしょう。日本企業の海外展開は、現地で雇用を増やしているのですから逆に喜ばれることです。

 したがって、ドルの観点から見ても、円の観点から見ても、円高になる合理性はないのです。加えて日銀は極端な金融緩和を推し進めていますから、ドル安円高という方向に行く基礎的な条件はほとんど見当たらなくなっています。

 付け加えておきますと、トランプ新大統領が、選挙期間中に保護主義的な政策を主張していたことをもって、円安を非難し始めるのではないか、ということを言う人がいますが、先ほどから申し上げているとおり、ドル高が米国の国益に適うということを、いずれトランプ新大統領も理解するでしょうから心配はしていません。トランプ新大統領が円安を非難する可能性は極めて少ないと思っています。

小祝:先生は、長期的な視点で日本経済や為替動向を見る場合、米国にとって日本の地政学的な位置づけが重要であるとおっしゃっています。先ほどの中国のお話とも関連しますが、日本の地政学的な位置付けは変わってきているのでしょうか。

武者:まず、米中対決、米中冷戦の局面に入りつつあると考えています。それはトランプ新大統領の政策の中心に軍拡があることからも明らかです。軍事予算を増やし、陸軍の兵士を49万から54万に、海兵隊の大隊を23大隊から34大隊に、といったことですね。では、なんのために軍拡をやるかというと、レーガン政権と同じですが、彼は平和のためだと言っています。軍国主義者のようだと思われるかもしれませんが、しかし、振り返って見ればレーガン政権のやり方が正しかったのと同じようにトランプ新大統領の軍拡も正しいのではないかと思います。理屈の通らない相手は、ある程度力で抑え込むしかないのです。

 トランプ新大統領は、今の中国を冷戦時代のソビエト連邦のように見ていると思います。トランプ新大統領から国家通商会議代表に指名された、カリフォルニア大学アーバイン校のピーター・ナヴァロ教授は、「Death by China」という本を書いた人で、世界困難の根源は中国にあるといった考えの対中リアリスト(=強硬派)ですから、軍拡の目的はイスラム国でもロシアでもなくて、中国と考えるのが自然でしょう。

 そうなると、米国にとって日米関係は非常に重要になります。欧州は中国から遠いですからね。米中対決の時代には、米国にとって一番大切な同盟国は日本なのです。米国は日本の政権が親米で安定していることが好ましいですから、日本の景気が悪くなって、政権が変わってしまうのは避けたいと考えているでしょう。米国にとっても日本がデフレから脱却して、経済を成長軌道に乗せてもらわなければ困るということです。ですから、そういう意味でも米国はドル高円安を容認するし、むしろ歓迎すると思います。

 ひとつ付け加えておきたいのは、実は円高にも良いところはあって、それは、本来ならば日本は円高のときに、米国など海外の優良企業をどんどん買うことができたはずだということです。しかし、日本はそういう国民性なのか、国際的な力関係のためなのか、円高を利用した大きな買収はしませんでした。そのため、価格競争力が弱くなるという円高のマイナスだけを受けたのです。円高のメリットを全然使えないのです。日本にとって為替というのはそういう非対称的で特殊な要素があるわけです。

【11】株式対債券利回りの振り子の揺り戻しで、壮大な上昇相場へ

小祝:次に日本株式市場の展望を伺いたいのですが、先生はこれまでもずっと日本の株式は割安に放置されているとおっしゃられていました。日本の株式が割安だと思われる背景についてご説明いただけますか。さらに中長期的に見て日本株の上昇は続くとお考えでしょうか。

武者:日経平均株価で言えば、調整することなく上昇し続けるかどうかは分かりませんが、最初に申し上げたとおり2017年末で3万円程度を想定しています。さらに2020年ぐらいには史上最高値を超えて、4万円程度まで行くことも想定できると思っています。株価上昇の原動力は言うまでもなく、日本の稼ぐ力の復活です。

 過去20年以上にわたって、日本の名目GDPは約500兆円の水準で推移しており、凍結保存状態にされてきました。その間に、米国の名目GDPは2.5倍に、韓国は3.5倍に、中国は11倍に拡大していたのです。これは明らかに異常といえるでしょう。

 しかし、そのようななかでも、日本の企業収益は2015年に史上最高を更新しているのです。失われた20年と言われますが、実はこの間に日本のビジネスモデルが劇的に再構築されていたのです。GDPは横ばいですが、企業の収益力は劇的に上昇しています。そういった下地があるので、環境が整えば株価の上昇余地は大きいと考えています。

 日本の問題点として挙げられるのは資本のミス・アロケーションです。日米の個人金融資産をみると、両国とも約3割が年金保険の掛け金で、自由にならないお金ですが、日本の場合、残りの自由になるお金の8割近くを現金・預金で保有しているのです。一方、米国の場合は2割程度で、残りの大部分を株式や投資信託のリスク資産で保有しています。

 この状態で株式が長期上昇相場に入れば、米国人は所得が増えて懐が温かくなりますが、日本人は大損を被ることになりかねません。したがって、日本では猛烈な勢いでリスク資産へ、資金の大移動を起こさざるを得ないと思っています。
 
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 私は、よく振り子の図で説明しているのですが、1990年のバブル絶頂期の株式配当利回りは0.5%、株式益回りは2%だったのです。つまり、PERで50倍ということです。一方、債券利回りは8%もあって、こんな高金利でも、みんな借金をしてPERの高い株を買っていたのです。振り返って見れば異常な状態ですよ。今はと言えば、配当利回りが2%、株式益回りが6%、債券利回りは社債でも0.5%以下になっています。

 株式益回りが債券利回りの4分の1でしかなかった1990年と、株式益回りが債券利回りの12倍もある2015年は、異常の両極といえるでしょうから、いずれその間に収斂していくはずです。

 日銀は、90年のときは金融引き締めでバブル潰しをしました。今はその逆の超金融緩和を行っているのですが、これは極めてバランスのとれた政策といえるでしょう。現体制になる前の日銀は、上がり過ぎのバブルだけ潰して、下がり過ぎは放置するスタンスでしたから、とんでもない片手落ちだと思います。資産価格が一方的に下がるというのは経済、金融にとって最大のリスクなのですが、アベノミクス以前、政府も日銀もこれを放置してきたのは大きな誤りだったと思います。
 
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