第七大陸ですすむ経済繁栄の可能性、米国覇権再強化へ

(3) 基本矛盾のもつれが中国衰弱に拍車をかける、欧州はマドルスルー

●中国国家体制の基本矛盾

 習近平体制が、鄧小平の「韜光養晦(とうこうようかい)」(実力を隠し、爪を隠し、力を蓄えて時期を待つ)の戦略を投げ捨て、アジアの覇権国として台頭する意図を隠さなくなったことにより、中国は同時には全く成り立たない(鼎立しない)3つの根本原理を国の存立の基礎に据えることとなった。(1)共産主義・共産党独裁体制(マルクスレーニン主義と毛沢東思想)、(2)資本主義・市場経済、(3)中華思想(華夷秩序)である。(1)と(2)は鄧小平によって社会主義市場経済として定式化され、それは新興国の離陸当初の開発独裁体制としては、珍しいものではなかった。しかし国際ルールに、太古からの華夷秩序を持ち出し、南シナ海領有権にみられるように中国が過去から継承した領土権を主張するに至り、国際協調は著しく困難化している。また本来経済発展の結果、民主化し希薄化すると期待された共産党独裁体制は、検閲、思想統制の強化により、逆に権力集中を強めている。すなわち中国が謳歌してきた開放的市場経済は、(1)と(3)の挟み撃ちにより、急激に衰弱化する場面に入りつつある。中国国内では、第一に優先されるべきものが(3)の華夷秩序(核心利益)、次に(1)共産党体制であり、経済繁栄の基盤である(2)の市場経済の優先順位が最も低いとすれば、経済の悪化はとどまるところを知らぬこととなろう。(1)と(3)が海外に与える不利益に対して覇権国である米国の、トランプ次期政権は、強く是正を要求することになる。この本質的矛盾が経済の悪化を通してどう顕在化していくか、2017年の最大リスクである。

●危機はいったん終息した

 2015年夏場から2016年までの、中国の危機進化過程はいったん収束している。危機をもたらした二つの要因が手当てされたからである。第一の経済の失速(鉄道貨物輸送量、電力消費、粗鋼生産、輸出入が軒並みマイナスに陥った)は、大幅な財政出動・インフラ投資と大幅な金融緩和によって小康状態となっている。第二の資本自由化による資金流出は、外貨規制が強化されたことでやはり小康状態である。

●二律背反が山積

 以上の国家基本矛盾と相次ぐ弥縫策により、至る局面で二律背反現象が起きている。

1. 成長けん引面での二律背反→消費主導が必要だが、即効性のための過剰投資を続けざるを得ない
2. 民間企業育成面での二律背反→民間育成が筋だが、権力基盤維持のため国有企業重視
3. 通貨面での二律背反→元高 (=競争力が落ちる) でも、元安 (=資本流出、元暴落の圧力強まる) でも困る、緩慢な下落路線しか手がない、
4. 金融面での二律背反→利上げ(=通貨防衛に必須だが景気とバブル崩壊をもたらす)でも、利下げ(=通貨下落圧力強める)でも困る 中途半端な緩和継続か、
5. 通商面での二律背反→市場開放でも閉鎖でも困る、モザイクの通商産業政策か
6. 地政学の二律背反→膨張路線は米国の壁、後退路線は国民の反発、面子を維持しつつ協調の瀬踏みか、強行突破か

 唯一当面財政のみジレンマから自由、よって財政片肺の経済失速回避作戦が続くが、財政赤字拡大は必至になるだろう。ただ2015年に懸念された危機の爆発はしばらく抑え込まれる可能性が強い。

 不安はトランプ新政権の対中政策である。対中現実主義者(=タカ派)、ピーター・ナバロ氏が政権中枢に入ったことにより、通商と地政学の両面で米国の対応はオバマ政権時とは大きく異なるだろう。しかしLeveling playing field は正当な要求である。

●欧州、選択肢は多くはない

 フランス大統領選挙・議会選挙、ドイツ議会選挙など選挙予定が目白押しの欧州では、右翼ポピュリストの台頭が懸念されている。楽観はできないが過度の不安も適切ではあるまい。Brexitの再現が心配されているが、英国以外はEUから離れる自由を持ち合わせていないのではないか。よって選挙結果で市場を不安にさせることがあっても、結果はEU残留となる外はないのではないか。最も深刻な難民問題は、世界新秩序の構築、中東情勢の立て直しによる外はない。

 英国はGDP比5%強の経常赤字を計上しているが、そのうちほぼ8割は対EU諸国に対する貿易赤字である。つまり英国はEU諸国の最大顧客であり、EU離脱により市場を失うどころか、EU離脱による通貨下落で国内生産代替というメリットがあった。また通貨ポンドはすでにEUから切り離されていた。それに対してユーロ圏欧州諸国は、欧州中銀システムTarget2を通して相互に債権債務を積み上げており、ユーロ崩壊による債権債務のキャンセルは相互にとって自殺行為である。南欧諸国にとっては、ギリシャ危機以降民間経由金融が途絶えた今、唯一の資金チャンネルがECBシステムであるし、ドイツ北欧諸国はユーロの崩壊は巨額の債権の不良化をもたらすので選択肢とはならない。ギリシャのポピュリスト、チプラス政権が熱心なEU残留派に変わらざるを得なかったことを見ても、南北欧州諸国にとってユーロやEUの解体という建前論はもはや受け入れがたくなっているのではないだろうか。

 以上のように見てくると、2017年の投資環境は順調な米経済とドル高を基軸に、旺盛なリスクテイク環境になると予想され、かねて当社が主張しているように、日本がその最大の受益者になる、と想定できる。日本株式はアベノミクス相場第二弾の壮大な上昇の波に入った可能性が濃厚である。
 
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※注1:トフラー著「第三の波」が出版されたのは1980年、知恵が価値を生む時代の到来を日本で最も早く指摘した堺屋太一氏の著書「知価革命」は1985年。すでに30年以上前である。今いよいよその転換点が訪れている。

(2017年1月4日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン174号」を転載)
 

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