2017年情勢の基軸、強い米国経済、強い大統領、強いドル

【2】強いドルが米国の国益に

かつてないドル高環境

 今ほど、米国にとって強いドルが国益となる時代は、変動相場制に移行して以来、なかったのではないか。理由は、(1)国際分業において相互補完分業が確立し、独占的支配力を持つ米国企業が世界市場を傘下に収めており、ドル高は安く買って高く売る(=交易条件改善)ことを推し進める、(2)トランプノミクスはインフレ圧力を高める(レーガノミクス時と類似)、(3)強いドルは世界を買い占めるのに有利(米国多国籍企業のグローバルM&A等)、(4)強いドルが米国のプレゼンスを一気に押し上げる(防衛支出有利に、米国の世界地位・世界GDP比シェアなどが高まる)、以上4要因による。

 米国の国際分業上の位置が大きく強化され、もはやドル安は必要なくなっている。米国企業の競争力優位は歴然としている。インターネット、スマートフォン、クラウドコンピューティング、などの情報ネットインフラにおいては世界中の人々が(知的所有権を恣意的に扱う中国を除いて)、米国企業の提供するプラットフォームの上で、ビジネスと生活をしている。金融においても米国の突出した強みは歴然である。図表1はWSJ紙による米国の大手企業の海外留保利益であるが、総計2.5兆ドルに達する米多国籍企業の海外留保利益の膨大な規模は、財の貿易ではなく直接投資とサービス輸出で稼ぐ今日的米国企業の収益構造を端的に示している。
 
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大きく改善した米国の国際収支構造

 この強みが米国の国際収支を大きく改善させている。過去10年間(2005年から2015年)に、米国経常収支は-8067億ドル(対GDP比-5.7%)から-4630億ドル(対GDP比-2.6%)へと大きく改善したが、改善をリードしたのは金融・知的所有権料・ビジネスサービスなどのサービス収支(686億ドルから2622億ドルへ3.8倍)と、直接投資、証券投資などの第一次所得収支(676億ドルから1823億ドルへと2.7倍)の2部門である。他方、この10年間に米国貿易収支は2005年の-7828億ドルから2015年-7626億ドルへと、ほぼ横ばいであった。今後サービス収支と第一次所得収支の合計額が過去10年間の年率12.5%のペース(1362億ドルから4445億ドルへと3.2倍)で増加し、貿易収支が今のまま横ばいで続けば、米国はあと6年で経常収支黒字国に転換することになる。基軸通貨国米国の経常収支均衡が視野に入り始めるとすれば、それは衝撃的である。米国からのドル供給に急ブレーキがかかるのであるから。(図表2参照)

米国企業の市場独占・価格支配力の強さがドル高を有利にする

 この状態でさらなるドル高が進行すれば、米国の経常収支改善ペースはもっと早まるかもしれない。米国企業のみがネットインフラのプラットフォームを提供しているので、ドル高になればドル建てでの収入維持を狙う米国企業は海外のサービス価格を現地通貨建てで引き上げる。需要家は代替手段がないので値上げに応じざるを得ない。他方、米国が輸入している労働集約製品の大半は、ドル高になればドル建て輸入価格が低下する。それが現地通貨建てであれば自動的にそうなるし、ドル建てであっても、互いに競争する生産国はシェアを維持するためにはドル高によって発生した(現地通貨ベースで見た)輸出価格の増加分を値下げに振り向けざるを得ないからである。単純化すれば、米国の輸出品(または海外で提供するサービス)が独占的で価格支配力が強く、輸入品は多くの対米輸出国が競合しているので生産者の価格支配力が弱いという非対称性の結果、ドル高で米国の交易条件は大きく改善していると考えられる。これは完全競争市場を前提とする経済学の常識が通用しない世界である。
 
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