ピケティ氏よりトランプ氏、世界過剰貯蓄に対する最適処方箋

【4】過剰貯蓄を成長に転換するトランプノミクス

トランプノミクスの論理的正当性

 トランプ氏のプロビジネス、プロ成長の政策が適切で、それゆえに株価上昇に結び付くと考えられるのは、それが世界的貯蓄余剰に対して最も有効な処方箋と考えられるからである。かねてから当社は、現在の米国経済・世界経済の根本問題は、企業の空前の超過利潤が有効に実体経済に還流せず、資本余剰として滞留していることにある、と主張してきた。この余剰資本を活用する手段として、トランプ氏の財政による需要創造策、規制緩和による投資喚起策は的を射ていると考えられる。

 ここ数年間世界的な高利潤率の一方、利子率が歴史的水準まで低下して、本来同じはずの資本のリターンが利潤率と利子率に分かれて二極分化していることが、問題とされてきた。この企業の高利潤と空前の金利低下という普通ではない現実は、企業が新産業革命による生産性向上により、著しい超過利潤を獲得していることに根本の原因があると考えられる。つまり、企業は大儲けしている。しかし儲かったお金を再投資できなくて遊ばせ、金利が下がっている。先進国で顕著になっている金利低下は資本の「slack(余剰)」が存在していることを示唆している。また雇用の停滞、(失業率高止まり、低労働参加率、弱賃金上昇力)は、労働余剰「slack」の存在を示している。なぜ「slack(余剰)」が問題になるほど増加してきたのか。その原因は企業における労働と資本の生産性の顕著な上昇にあると考えられる。IT、スマートフォン、クラウドコンピューティングなどの新産業革命は、グローバリゼーションを巻き込み、空前の生産性向上をもたらし、労働投入、資本投入の必要量を著しく低下させているのである。この資本余剰を放置すれば格差拡大をもたらし、社会不安を高める。さらには資本の退蔵・死蔵は資本主義の死を意味する。つまり状況変更に対する政策のコミットメントがなければ資本主義は崩壊してしまうかもしれないのである。
 
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 そこで余剰資本を政策の力で実体経済に還流させ成長加速により利子率が上昇するというシナリオが必要とされるのである。これができれば明るい将来展望が描かれる。資本を還流させる政策オプションとしては、

1) 財政政策⇒ケインズ政策/民間投資を喚起する制度変更
2) 金融政策⇒株高による時価ベースの利潤率(益回り)の引き下げ、
  自社株買いはその橋渡し
3) 所得政策(社会政策) ⇒賃上げ、労働分配率低下と消費増、
  ベーシックインカムなどの社会的所得配分も

の3つが考えられる。これらの政策イニシャティブにより、新産業革命の成果が成長と人々の生活の向上に結び付き経済成長率が高められる。この中でトランプ氏の選択は1) であった。2) は米国では十分に活用され既にその役割を終えつつある。これに対して3) の選択肢からのトランプ批判があげられている。その典型例は「21世紀の資本」のベストセラー経済学者トマ・ピケティ氏であろう。

 トマ・ピケティ氏は、トランプ政策を所得減税により富裕層が優遇され、企業減税による財政ダンピングや環境基準の緩和(環境ダンピング)により自国本位化が進み、規制緩和による企業を優遇するものだ、等と全面的批判を展開している。ピケティ氏は米国の経済格差・地域格差を是正する規制強化と所得再配分(富裕者増税と社会政策支出)が必要だとするサンダース氏に同調している。(11月23日朝日新聞・11月13・14日ルモンド紙掲載の抄訳)。確かに企業課税強化、富裕者課税強化により余剰貯蓄を政府が吸収し、弱者などに再配分するという政策も余剰資本の活用という点でポジティブであるには違いないが、それでアニマルスピリットが喚起され投資が活発化し、成長が高まり、金利上昇と株高に結び付くかというと疑問である。

そもそもピケティ氏の議論は

r(資本のリターン)>g(経済成長率)

という一つの不等式のみにフォーカスし、それは所得配分、税制によって是正されるべきだという立場にこだわってきた。そして成長率への働きかけに関してはほとんど関心を示してこなかった。

 しかし、当社は、現実は二つの不等式が共存している状態

r1 (利潤率)>g(成長率) >r2 (利子率)

であり、利子率の低さ=余剰貯蓄の存在とは、現在需要の先送りが起きているわけだから、余剰資本を活用すれば成長率が高まり、それが格差や貧困対策にも結び付くと考えてきた。トランプ当選後の株式市場の好反応を見ると、財政による需要創造により大きなメリットがあることがうかがえる。

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