歴史的金利低下の下での米株史上最高値の謎を解く

(2)弊社の解釈→空前の超過利潤が資本余剰を生んでいる、余剰資本を活用できるかが鍵

利潤率と利子率の二極分化の原因
 この企業の高利潤と空前の金利低下という普通ではない現実は、企業が新産業革命による生産性向上により、著しい超過利潤を獲得していることに根本の原因があると考えられる。つまり、企業は大儲けしている。しかし儲かったお金を再投資できなくて遊ばせ、金利が下がっている。先進国で顕著になっている金利低下は資本の「slack(余剰)」が存在していることを示唆している。また雇用の停滞、(失業率高止まり、低労働参加率、弱賃金上昇力)は、労働余剰「slack」の存在を示している。なぜ「slack(余剰)」が問題になるほど増加してきたのか。その原因は企業における労働と資本の生産性の顕著な上昇にあると考えられる。IT、スマートフォン、クラウドコンピューティングなどの新産業革命は、クーローバリゼーションを巻き込み、空前の生産性向上をもたらし、労働投入、資本投入の必要量を著しく低下させている。それは直ちに企業収益の顕著な増加をもたらすと同時に「slack(余剰)」を生んでいるのである。米国も日本・欧州においても企業は減価償却額をすべて再投資する必要がなくなって久しい。アップル、グーグルなどのリーディング企業は巨額の資本余剰を抱えることが常態化している。

政策による余剰資本の活用が鍵に
 企業の超過利潤が退蔵され長期金利を押し下げ続けているとしたら、この現実は放置できるものでは無い。第一に格差拡大をもたらし、社会不安を高める。労働所得の相対的低下と資本配分率上昇により資本家を有利にする、また 技能・知能格差による所得格差、国際分業による格差拡大を引き起こす。第二により本質的な問題は、資本の退蔵・死蔵は資本主義の死を意味する、ということである。つまり状況変更に対する政策のコミットメントがなければ資本主義は崩壊してしまうかもしれないのである。
 
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破局のシナリオ、無策、金融財政引き締め
 今後の展望は二つに分かれる。第一の可能性は、無策または資本の死蔵を促進するような引き締め的金融・財政政策が打ち出された場合、経済は崩壊、株は大暴落する。企業の高利潤が実物経済に還流・再投資されないと言うこの現実は、あたかも「悪徳商人が儲けた小判を地中に埋蔵し、そのおかげで世間に出回る小判が減り、経済活動が悪化していくと言う江戸時代にも批判された商業モラルの頽廃」そのものである。資本主義の本質は資本の形態転換による価値増殖の無限の連鎖と言うのはマルクスの定理であるが、それにも抵触する。つまりG(貨幣:資本の初期形態)→W(資本の商品:材料、労働力、機械などへの形態転換)→⊿G(増殖した貨幣)という本来の流れに対して、今G(貨幣:初期の資本形態)→G→Gという形態転換がなく価値が増殖しない資本運用(現金退蔵、CASH IS KING)が圧倒的多数となっている。いかに企業が高収益とはいえ資本主義の機能不全とも言えるこの状況が放置され続ければ、各国経済は長期停滞の末に破局に導かれるという重大な困難である。

希望のシナリオ、政策による需要創造の3つのイニシャティブ
 第二の可能性は、政策により利潤率と利子率の収れんが図られる場合。余剰資本を政策の力で実体経済に還流させ成長加速により利子率が上昇するというシナリオである。これができれば明るい将来展望が描かれる。資本を還流させる政策オプションとしては、①金融政策、②財政政策、③所得・社会政策、の3つが考えられる。

① 金融政策⇒株高による時価ベースの利潤率(益回り)の引き下げ、自社株買いはその橋渡
② 財政政策⇒ケインズ政策/民間投資を喚起する制度変更(例えばPFIやレベニュー債発行)
③ 所得政策(社会政策) ⇒賃上げ、労働分配率低下と消費増、ベーシックインカムなどの社会的所得配分も。

 これらの政策イニシャティブにより、技術産業革命の成果が成長と人々の生活の向上に結び付き経済成長率が高められる。米国の好みは、①、②、③の順、自己責任・個人主義が徹底している米国は社会・所得政策と言う非市場的資源配分を好まない。欧州の好みは③かもしれない。日本はその中間に位置する。米国株式市場最高値更新は、第二の楽観シナリオが見えてきたことによるのかもしれない。

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