【Alox分析】審査員が応募者から報酬をもらう世界 ― 監査法人と依頼者のパワーバランス ―

 

評価者が評価対象から報酬をもらう関係

 今回の「監査法人と被監査先の関係」は、「信用調査会社と調査先」「格付会社と依頼格付の対象先」の関係にも、一部当てはまる。

 依頼格付(依頼者が格付会社に報酬を支払う)の結果は、企業評価という観点では、何ら影響をもたらさない。

 時折、ニュースで、日本の格付が下がると、政府関係者が「日本を正当に評価していない」とクレームの声を上げる。

 これは、勝手格付けと呼ばれるもので、格付会社が依頼してないにも関わらず勝手に評価したもの対して、日本政府がクレームしている。

 これは、極めて健全な関係と言える。

 

欧米の制度

 欧州では、2016年6月から「10年で監査法人を交代させることを求める監査法人の強制ローテーション制度」が施行される。

 米国では、監査法人ではなく、監査パートナーを5事業年度ごとに交代することとなっている。

 日本では、今回の新日本監査法人の事象が発生しても、「新日本監査法人に対して21億円の課徴金と3ヶ月間の新規業務停止」が課されるだけであり、制度としては何も変わっていない。

 

商流の変更

 監査には、監査先を公明正大に評価を行うための“仕組みを整える必要があるのでないだろうか。

 言いたいのは、「監査法人と被監査先との関係、つまり監査法人が監査先から報酬を直接受領する関係を変更すること」が先決ではないだろうか?

 一笑に付されるかもしれないが、上場企業の監査については以下の方式を提案したい。

(1)監督官庁による報酬プール制度
 金融庁が上場企業から監査報酬を受領する。
 各監査法人は、金融庁に対して監査報酬の請求を行う。

(2)監査法人センター機構(仮)による報酬プール制度
 大手監査法人から人を派遣して設立した監査法人センター機構(仮)が、上場企業から監査報酬を受領する。
 各監査法人は、監査法人センター機構(仮)に対して監査報酬の請求を行う。

 監督官庁が行うか、業界団体が行うかの違いだけで、両方ともに一旦報酬がプールされること、監査法人が上場企業へ直接請求書を発行しない関係となることを主眼として考えたものである。

 上記の方式は構想であり、種々の無理や問題があることは承知しているが、評価者と評価対象者の関係を考えるに、評価者である監査法人が評価対象者である監査先から報酬を受領するのは、「不正の発見を妨げる動機付けになりうる」と言えるのではないだろうか。

 

総括

 監査法人及び監査人には、極めて高い“清廉性”と職業倫理が求められる。

 しかし、監査対象の企業は、大切なお客さんでもあるため、“何らかの思惑・情が入る余地”がある。

 この余地を減らす方策として、商流の変更は一考に価しないだろうか。

 かつて、「売上を100億円近く粉飾して、その決算書でマザーズへ上場し、半年足らずで粉飾が発覚して、2010年5月に破産したエフオーアイという会社」があった。

 決算書には、売上118億円(実際は2億円程度)と記載されていたが、一方で売掛金が200億円以上あった。

 つまり、「売上を計上しても、現金化できない売掛金が大量に滞留していた決算書」である。

 個別の伝票や入出金の確認、経営者や経理責任者と会話ができる監査法人がこの程度の極めて稚拙な粉飾を見抜くことができないことが不思議でならない。

 やはり、「お客さんには強く言えない関係」が、少なからず影響しているのではないだろうか。

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