農産物の輸出は伸びているか -1兆円目標前倒し論の虚実-

2、加工食品や水産物の輸出が多く、農産物は少ない(品目別)

 表2は、品目別の農林水産物の輸出額である。2015年の「農林水産物・食品」の輸出額7,451億円のうち、じつは“農産物”は2,210億円に過ぎない。水産物2,757億円、加工食品(アルコール飲料、調味料、清涼飲料等)2,221億円である。つまり、製造業(加工食品)や水産物の輸出が多いわけであり、“農産物”は3割に過ぎない。

 これは、コメや牛肉など、農業の“大型商品”が輸出できていないからである。JETROの石毛博行理事長の表現を借りれば、「マグニチュード」の大きい貢献がある輸出品目がないからである。品目別に見た農林水産物輸出は、今後の戦略目標がどこにあるかを示唆していると言えよう。
 
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(出所)農水省ホームページ「平成27年農林水産物・食品の輸出実績」27年4月。
 

3、製品差別化が貿易を創り出す

 筆者は繰り返し、コメの輸出産業化を述べてきた。例えば、拙稿「コメ輸出産業化こそ究極の農政」(時事通信発行、農業情報誌「アグリオ」第30号、2014年10月7日発行)。あるいは当WEBサイト2011年4月22日付け拙稿「コメ輸出100万㌧論(2)‐中国は高いコメを輸入する」。

 貿易は、内外の価格差によって生じることが多いが、「製品差別化」も貿易を創り出す。日本の自動車は輸出競争力があるが、内需の4%は輸入車である(20万台)。価格は日本車より100万円以上も高いにもかかわらず、ベンツやBMWなど欧州車が年間約20万台も売れている。欧州車に魅力を感じる人がいるからだ。中国も、2000万台の内、100万台は欧州からの輸入車である。消費者の約5%は“非価格選好”である。

 日本のコメも、中国で売れるはずだ。中国は土壌や水質の汚染問題が厳しく、「食の安全性」が大きな関心事になっている。日本のコメは美味しい、安全という評価があるので、製品差別化によって中国で売れよう。“現状の価格水準”でも輸出できるであろう。それなのに、なぜ中国向けコメ輸出はないのか。政治が邪魔しているからであろう。日中関係が正常化すれば、「マグニチュード」の大きい農産物輸出品が出現しよう。1兆円輸出目標の達成も難しくないであろう。

 リンゴや梨など、果物の一部は早くから輸出されてきた。しかし、桃やさくらんぼ等も輸出できるだろう。海外産と製品差別化が大きいからだ。牛肉(和牛)も然りだ。物流のコールドチェーン技術の発達の効果も大きい。価格はもちろん、日本産が高い。しかし、経済発展に伴い中間層が分厚くなっている東アジア諸国では、価格は高くても、安全で美味しい日本の農産物への選好は強い。市場開拓の努力はもちろんであるが、もう一つ、「製品差別化が貿易を創り出す」という理論で輸出戦略を立てた方が良い。

 経済発展が続き、中間層の所得の伸びが大きい東アジア諸国に向けて、日本は「食料輸出基地」になるであろう。コメ、牛肉、果実などマグニチュードの大きい農産物の輸出市場開拓はこれからだ。そうなった時、農産物の1兆円輸出目標は軽く達成されよう。既に製品差別化は十分だ。コールドチェーン技術も十分だ。あとは、地域の平和、なかんずく日中関係の正常化があれば、日本農業は“輸出産業化”で発展できる。
 

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