超過利潤時代の中央銀行の挑戦、マイナス金利の導入

高利潤と資金余剰の併存⇒マネーの流通速度急低下
 この高利潤と資金余剰の併存は、図表4、5の日本、米国長期金利とROEのかい離に顕著に表れている。米国長期金利の低下を利潤率(企業の稼ぐ力の低下)と解釈する見方があるが、現実は高利潤故に資金余剰が高まり、長期金利を低下せしめていると言える。この利潤率と利子率のかい離、つまり稼ぐ力が強いのに資金が余り金利を低下させる現象は、2000年代に入り顕著になっていることが、図表6米国企業の利潤率と利子率推移、図表7の米国名目GDPと長短金利から明らかである。2005年グリーンスパン元FRB議長は、好景気かつ金融引き締めの下でも長期金利が低迷していた事態を「謎(conundrum)」と評したが、それがリーマンショック以降も続いているのである。バーナンキ前FRB議長は2005年にその原因を世界的貯蓄過剰(global saving glut)と述べたが、今になって考えるとそれは一般的な貯蓄余剰ではなく、企業部門の余剰であったことがほぼ明らかなのではないか。
 
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 長期金利低下の原因を「企業の稼ぐ力の低下、資本主義の頽廃」と見るか「資本生産性向上、企業利潤の上昇」と見るかは、量的金融緩和とマイナスの金利に対して正反対の評価をもたらす。前者の立場に立つ論者にとっては、量的金融緩和は、頽廃している経済実態に対して紙幣を供給しバブルを助長する謬策となる。しかし後者の立場に立てば、量的金融緩和は「市場に存在する資本の余剰(slack)を稼働させるという」健全・適切な政策ということになる。そこに余剰の未稼働資本が存在しているなら、更なる資金コストの引き下げによりそれを稼働させれば経済的厚生は高まる。バーナンキ前議長によって定着した金融政策=量的金融緩和が創造的であるのは、経済の「slack(余剰)」の解消に照準を定めたことにあるが、マイナス金利はそれを一歩進める政策と言える。本質的に労働の余剰と資本の余剰はメダルの裏表であり、連動している。実は、労働に余剰がある状態とは資本に余剰がある状態とも言えるのである。

財政政策の出番も、新ケインズ時代到来も視野に
 このように需要創造により「slack(余剰)」を解消する政策が必要であるのに、逆に資本余剰=長期金利低迷の局面で、FF金利を引き上げビジネスの資本コストを引き上げると、資本余剰は一段と高まりリセッション、金利低下と株価急落がもたらされる。2000年、2005~2006年のグリーンスパン時代の逆イールド化(長短金利逆転化)をもたらした利上げが、ITバブル崩壊、住宅バブル崩壊という金融危機をもたらしたのは当然の帰結であったと言えるが、それが正しかったかどうかは疑問が残る。当時必要だったのは金融引き締めによるバブルつぶしではなく、余剰資本をバブル形成ではなく、より持続性のある需要分野へと誘導する政策であった。望まれたのは緩和的金融政策を維持しつつ、制度変更や財政、税制などを総動員する総合的マクロ政策だったのではないか。この余剰資金が有効に稼働する政策がとられるのか、それを阻害する政策がとられるのか、前者なら株高、後者なら株価下落、株式市場は政策に大きく依存する時代に入っていると言える。量的金融緩和もマイナス金利も余剰資本を有効需要につなげるという、目的合理的な政策といえる。

 なおローレンス・サマーズ氏やポール・クルーグマン氏など米国のオピニオンリーダーにより、金融緩和を維持しつつも、更なる財政政策や税制改正、所得分配是正などが需要創造、成長力の引き上げが必要だとする議論が提示されている。余剰貯蓄を実物経済に再循環させる手段として、金融政策の負荷が過重となっている。ケインズ政策つまり余剰資本、低金利を政府部門が吸収することで需要を創造する政策の寄与も必要になっているかもしれない。

 図表10は米国実質株価と経済レジームの推移であるが、ここ100年ほど米国の実質株価には長期的上昇と下降の波があり、それぞれが経済レジームの成功と挫折によって説明できることがわかる。1929年までの上昇⇒古典的自由主義の繁栄、1930年から1940年代前半⇒古典的自由主義の挫折、1950年から1960年代まで⇒ケインズ主義の繁栄、1970年から1980年⇒ケインズ主義の挫折、1980年から2000年⇒新自由主義の繁栄、2000年から2009年⇒新自由主義の挫折、と推移してきた。今後新しいケインズ主義が経済を牽引する時代に入るもしれない。
 
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