・企業にとって最も大事なことは、新しい企業価値を生み出す組織能力を常に高めて、人材を活かし、雇用を拡大していくことである。ROEの極大化が目的ではない。しかし、資本コストからみた一定のROE(例えば8%)が長く未達であるとすると、それは価値破壊企業となって、社会的な存在価値すら問われてしまう。
・ROE 8%を超えた企業は、欧・亜並みの12%を目指してほしい。その次は米国並みの15%が目標となろう。業種によっても目標とすべき水準は異なるので、企業が自ら設定すればよい。何よりも大事なことは、ROEという経済的価値のKPIをクリアにした上で、一段と社会的価値の創造に邁進してほしい。企業価値は経済的価値と社会的価値が統合したものなので、ROEでは測れないより質的な価値を含んでいる。
・取締役は本来、経営執行の代表である社長を取り締まる。すなわち、監督する。社内取締役は、通常社長の部下で業務執行を分担している。取締役会の時だけ、社長を取り締まれ、互いに他の取締役を監督せよといっても、いざという時には無理がある。そこで、社外取締役が複数いて、執行サイドを監督することには大いに意味がある。
・社長の中には、社内のことがよく分かっていない外部の人にいちいち説明するのは面倒である、決められた仕組みであるから最低限のことだけ対応すれば十分である、という人もいよう。しかし、それでは、投資家からの信頼は得られない。たとえ当面の業績が上がっていても、その持続性を支える仕組みに信頼がおけないからである。
・社外取締役の重要な役割の1つは、少数株主の利益代表にある。オーナー型の中堅企業でも、社内役員が順番に社長になる大企業でも、経営判断が少数株主の利益を阻害してはいないか、という視点は決定的に大事である。筆者は2社の社外取締役を担っているが、いつもこの視点を重視して取締役会に臨んでいる。