フィリピン製造業発展戦略 ―オランダ病を超えて―

Ⅱ.社会改革と製造業発展戦略

1、新段階の内需志向型工業化シナリオ

(1)人口の変化 1960年2600万人⇒2015年1億人
 フィリピンは、人口が1億人を突破した。これは豊富な労働力の存在を意味するだけではなく、消費市場の巨大さを物語っている。輸入代替、国産化による工業化戦略の誘惑が出てくる。しかし、ASEANは市場統合に向かっている(2015年末、アセアン経済共同体AEC発足)。共通市場になれば、ペソ高の下、消費財は近隣諸国から流れ込んでくる。ASEAN の市場統合とペソ高は、フィリピンの製造業にとって前門の虎、後門の狼であり、内需志向型工業化も、輸出志向型工業化も、壁がある。1960年代の輸入代替工業化戦略の失敗の二の舞は避けたい。

 しかし、60年代との違いがある。国内市場の大きさが決定的に違う。人口規模は1960年2627万人、65年3091万人である。現在は1億人である(2015年)。人口3000万程度では量産型の近代産業は成立困難であるが、1億人になれば技術的には容易になる。

 一方、1人当たり実質国民所得も1960年に比べ、約2倍に上昇している。つまり、1960年に比べ、人口3倍、所得水準2倍であるから、消費市場は6倍に拡大し、しかも巨大である。60年代の工業化模索の時代とは大きな違いがある。もちろん、ASEAN市場統合という国産化マイナス要因はあるが、これだけ大きなマーケットが存在すると、「消費地立地」志向型の直接投資が出てくる可能性は大きい。

 「人口1億人」という新時代が、企業家のビジョンを刺激する。筆者は内需志向型起業の可能性を予測したい。1億人の巨大市場をすべて外から供給することは「現地生産、現地消費」の潮流に合わない。市場規模が小さい時、ASEANの一角で生産しフィリピンに輸出していた企業の中から、「人口1億人市場」に着目して、フィリピン国内生産を目指す企業が出てくるであろう。

(2)外資の消費地立地への転換可能性
 フィリピンは外資の進出が少ない。表12に示すように、対内直接投資が著しく少ない。ストックで見ると、工業化で先行するタイ、マレーシアはGDP100㌦当たり40~50㌦の直接投資があるが、フィリピンは20ドルに過ぎない。人口1人当たりで見ても、わずか576㌦に過ぎず、極めて低い。ベトナムより少ない。多くの先発ASEAN諸国が外資を呼び込んで経済発展を遂げたのであるが、フィリピンはその点、遅れている。特に製造業への直接投資が少ない。
 
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 直接投資は経済成長の一番の源泉である。したがって、各国が直接投資の受け入れを競っているのであるが、フィリピンはその競争に敗れてきたのだ。政治の不安定、汚職や治安の悪さから、投資先としての評価が低かったからだ(フィリピン自身が財閥の反対等で資本自由化を十分に進めていないこともある)。また、先述のように、OFW送金が割高な為替レートをもたらしているため、製造業部門への直接投資が増えない。この点が他のASEAN諸国と大きく異なる。しかし、この数年、フィリピンの政治に対する評価が好転しており、直接投資を妨げる要因の一つが後退している。実際、フローベースで見ると直接投資が増加傾向にある。

 このまま政治の安定が続き、一方、人口1億人の巨大市場に外資が着目するとき、“消費地立地型”の直接投資が増える可能性がある。内需志向型の製造業であれば、OFW送金は消費を増やす購買力の向上を通して、製造業発展にとってプラスの一面が出てくる。もちろん、直接投資受入の大前提は外資に対する規制緩和が必要だ。

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