黒田イニシャティブ世界を救うか~相場転換のきっかけになり得る 1/29金融緩和 ~

(2) 「コロンブスの卵」になるか、
QEと負の金利との併用

評価が低いマイナス金利
今回の日銀の金融緩和政策は、2015年後半から始まった投機筋の市場売り崩しに対しての、先進国の中央銀行としての初めての対応である。今後日銀に続きECB、FRBが協調的金融緩和姿勢を鮮明化するだろう。ドラギECB総裁の3月追加緩和を示唆しているが、FRBも従来の利上げ路線を後退させるものと思われる。

マイナス金利導入に対する批判は多い。各社の社説は「マイナス金利、苦しまぎれの冒険に」(毎日新聞)、「マイナス金利導入、日銀頼みの限界忘れるな」(産経新聞)、「マイナス金利、効果ある政策なのか」(朝日新聞)、「日銀頼みにせず市場安定へ協議を」(日経新聞)と批判的であり、唯一肯定的なのは読売新聞「日銀追加緩和、脱デフレの決意示す負の金利」だけであった。実際、最近まで黒田総裁自身がマイナス金利には否定的であった。そして黒田氏の会見においてもマイナス金利の波及経路を述べるよりは、「金融政策の詳細を国民が理解しないと効果がないということではない。重要なことは物価目標に向け、必要なことは何でもやると示すことで人々のデフレ心理の転換を進めることだ」、と心理に働きかける説明に重点が置かれていた。いみじくもフィナンシャル・タイムズ紙は「Kuroda reasserts

deflation-fighting stance 」とその戦闘姿勢を評価している。金融政策(量的金融緩和)では経済は回復できない、デフレ脱却できないという、諸々の批判を断固として認めるわけにはいかないとの、原点に戻ったのである。

マイナス金利が意外に有効である可能性
とは言え、コロンブスの卵かもしれないが、マイナス金利は意外に大きな効果があるかもしれない。第一は、究極の安全資産としての日銀当座資産からの資金の押し出し効果である。

これまでの量的金融緩和批判論の論理の核は、借り手が(経済の先行きに自信が持てず)借りる気がないのに、マネーの供給量を増やしても無理、という論理である。確かに量的金融緩和が当初の狙い通りに進展しているとは言えない面がある。当初の期待は、投資家や金融機関が保有する国債を日銀が買い、投資家や金融機関は国債保有を減らした分、他のもっとリターンの高い資産保有や貸付を増やせば、リスク資産に資金が回り投資増・資産価格上昇・インフレ期待上昇という好循環が生まれるというもの(ポートフォリオリバランス)であった。しかし、消費税増税による成長のとん挫、中国危機の発現、世界的株安と円高観測の台頭などの環境変化があったと言いえ、投資家ポートフォリオのリスク資産への押し出しは行き詰まりをみせている。国債売却代金がそのまま日銀への当座預金として滞留しているのである。当座預金に対するマイナス金利の導入は、この滞留資金をリスク資産や貸し出しへと押し出す効果があると期待される。

第二に、金融緩和拡大の手段が格段に広がったことが指摘できる。量的金融緩和は、流通国債の3割以上を日銀が保有することになり、買い増しの余地がなくなりつつあるとの観測があった。ETFやREITなど国債以外に日銀が買っていた資産は池の中の鯨に例えられるごとく、流通市場の規模に比し日銀保有が著しく大きくなっている。それに対してマイナスの金利は当初は0.1%からスタートするが、いくらでも上げることは可能である。中央銀行が無限の弾丸を保有していることによる威圧感は大きく高まる。

第三に、マイナス金利は自動的に金利構造を変化させ、投資家の採算変化に影響を及ぼすので、量的金融緩和の実効性は大きく高まるかもしれない。第四に、黒田日銀総裁の失敗や副作用を恐れない大胆な姿勢は、市場心理を大きくリスクテイクに誘導するだろう。無限の弾丸を持つ日銀の覚悟が鮮明である以上、リスクアバーターはポジションを落とさざるを得なくなる。

マイナス金利により当座預金からの資金の流出が起これば、マネタリーベースの縮小をもたらし、インフレ期待が弱まる懸念もある。その場合、国債買い入れ額の増加が必要になる。あくまでもマイナス金利は量的金融緩和との併用により効果を高めていくのではないか。

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