「統合報告の実践と活用に向けて~アサヒ、伊藤忠、オムロン、MS&AD」

・企業価値は、経済的価値と社会的価値の双方で評価される。企業価値とは必ずしも認識できない社会的価値もあるので、企業の自助努力で達成可能なものが、1つの領域であろう。投資家は、企業価値を将来キャッシュフローの現在価値で捉えようとするが、それだけでは必ずしも十分でない。もっと幅広く捉えて、KPI(重要経営指標)を設定する必要がある。

・企業はIIRCのいう6つの資本(知的資本、製造資本、社会関係資本、自然資本、財務資本)を活用して、ビジネスモデルを構築し価値創造を行っている。それを自社の個性と強みを活かしながら、統合報告として表現していくのだが、実際に読んでみるとかなりの格差を感じる。投資家である読み手の好みもあるので、一概に善し悪しは判断できないが、レベルの違いは出ているようである。

・それは何に起因するのか。3つの要因が考えられよう。1つは、企業における価値創造のプロセスが弱いケースである。ビジネスモデルが常に盤石であるとは限らない。むしろ何らかの弱点を抱えながら走っているというのが普通であろう。それをどう強化していくのか。この深掘りが表現されていないと、投資家には価値創造の良さが伝わらない。

・2つ目は、価値増造のプロセスが十分表現されていないケースである。ここにも二面性がある。1つは、価値創造の実態を詳らかにすることを嫌う社内カルチャーにある。真の強さの源泉は秘密にしておきたいという気持ちがあるのだろう。しかし、適切に開示するならば、競争上不利になるというよりは、むしろ評価が高まるというケースの方が多いように思える。

・もう1つは、実態以上によく見せようと、デコレーションしてしまう場合である。これは、一見きれいにみえても、企業の個性が伝わってこないので、美辞麗句として透けてしまうことが多い。わが社固有の言葉がない表現は、得てしてこうしたケースに陥りやすい。言葉で逃げているので、注意を要する。

・3つ目は、改善の努力を継続することである。統合報告は1回で終わりでない。継続性が問われるが、学びが活かされていないケースも目立つ。統合報告は、まずは作ってみるに限る。しかし、とりあえず作るといっても、既存の材料の寄せ集めでは全く不十分である。

・1回目であっても、価値創造のストーリーを書き下ろしてほしい。わが社の実力を突き詰めて、できるだけ実態を表現してみる。そうすると、実力が十分でないところがはっきりしてくる。そこに手を打ちながら、強みを表現すればよい。

・外部のコンサルやIR会社に丸投げするのはよくない。全社活動としてIR統括部署がリードして仕上げていく。その上で、ステークホールダーから指摘された点を取捨選択しながら、次回に活かしていく。

・その時、単にレポート作りに活かすのではなく、業務改革に取り組んで、経営そのものを変革していくことである。ここに本質がある。企業価値創造のプロセスに、統合報告のフィードバックが活かされれば最高である。

・このPDCAが回り始めると、統合報告におけるマテリアリティ(重要性)やコネクテビティ(連結性)が組織能力として定着し、実態が伴ってくれば表現がしやすくなる。読み手の投資家も実感できるようになり、価値創造のプロセスをますます共有できるようになろう。

・統合報告をテコに、企業の価値向上を一段と図り、持続的成長に向けて稼ぐ力を高めてほしい。まずは全上場企業の統合報告作りに期待したい。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

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