9年ぶりの米利上げに見る二つの風景

IT革命下のライフスタイルの向上、個人サービス需要の急拡大

さて、労働分配率の低下を引き起したものこそIT革命であったと考えられるが、そのIT革命が依然進行する中に労働分配率の低下が止まったとすれば、その理由は何なのか。それは労働需給が改善し、賃金上昇に弾みがつき始めたからに外なるまい。

米国の雇用がどこで増加したのかを図表8で見ると、教育医療、専門サービス、娯楽観光など、ひとえに個人向けサービス分野であることが鮮明である。IT革命の下でのイノベーションと個人のライフスタイルの向上が進行し、個人向けサービス需要が急増しているのである。情報化時代の新ビジネスモデルと新ライフスタイルが垣間見える。在宅勤務、ビジネスマンの兼業の一般化、アウトソーシングの一般化、新ネットワークビジネスの誕生、ネットによる物流が主チャンネルになりつつあることなどにより、個人生活の一層のフレキシブル化が進行している。実際、米国の個人消費をけん引しているのがサービス分野であることは、図表9のISM非製造業指数の上昇を見ても明らかである。

 
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このように米国では、リーマン・ショック後の辛抱強い量的金融緩和により個人のライフスタイル変化を伴った新規需要がサービス分野において勃興し、それが労働と資本の余剰を大きく吸収し始めたと言える。企業収益段階にとどまっていたIT革命の成果がようやく個人のライフスタイルを変え、生活水準の一段の向上に結び付きつつあり、それは米国において歴史を画する情報ネット新時代の萌芽が見られ始めていると評価できる。米国流の新ライフスタイルの向上と個人生活水準向上は、今後ユーロ圏や日本などに伝播していくものと見られる。

いち早くデフレ危機から脱出へ

米国においてはデフレに陥る危機は去ったと考えられる。米国の長期金利が日欧のそれを1%以上、上回って推移しているのはそれを如実に示している。それは米国株式の高バリュエーションにも表れている。12月16日の米国利上げを可能にしたものは、そうした労働余剰と資本余剰の顕著な減少であった。

 
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