米市場2016年の10の懸念

1つずつ補足してみよう。

1、ドイツや中国の輸出減少がしばしば取沙汰されているが、両国ともに輸入も減少している。むしろ輸入の減少の方が大きく、貿易黒字は拡大している。

為替の影響を除けば、短期間で競争力が目に見えて低下することは少ないので、その国にとっては、輸出の減少よりも、実のところは輸入の減少の方が問題だ。輸出減は世界的な景気後退を暗示するが、輸入減はその国の景気後退を暗示するからだ。

とはいえ、貿易額の減少は世界的な傾向で、バルティック・ドライ指数はそのことを反映している。貿易額の減少は価格の低下の影響もあるが、海運価格と世界の商品需要の指標の低下は、積み荷そのものの減少を暗示する。

貿易障壁が低くなる中での世界貿易の減少は、世界の経済が停滞していることを暗示している。もっとも、大型原油タンカーのスポット(随時契約)運賃水準を示すワールドスケール(WS、基準運賃=100)は9日現在、代表的航路である中東―東アジア間で95となり、この1週間で5割上がった。これが底入れの兆候となって貰いたいものだ。

2、商品価格の下落は供給過多によるところが多い。これは需要を先食いしたともいえ、将来の景気後退を暗示する。

原油については、下記を参照して頂きたい。

参照:原油の長期需給バランスは低価格でしか安定しない。目先は反発も。

先物市場は本来、商品の生産者がヘッジ目的のために利用するものだ。例えば、原油価格が1バレル50ドルを超えれば、採算が合う生産者がいるとする。現状では、採算割れなので何もできない。しかし、原油先物が50ドルを超えてくれば、先物を売却することで、利益を確定することができる。

コスト45ドルの生産者が、先物価格50ドルの時、先物100万バレル相当を売ったとすれば、その後価格が60ドル、70ドルに上昇しても、40ドル以下に下落しても、500万ドルの利益が確保できる。先々の生産分までも売ることができれば、それ以下のコストのものを新規に採掘することもできる。生産者の数と事情、埋蔵量の大きさとを鑑みれば、原油価格の上値は重い。

代替商品を含めれば、大半の商品は似た状況にあると思われるので、商品価格の上値は重いかもしれない。

3、米連銀の現状の金融政策は、ゼロ金利と未曽有の資金供給量を維持したままという、非常事態のままのものだ。このことは、仮に米国が景気後退入りをすれば、量的緩和再開以外の手がないことを意味する。

貿易量が減り、モノ自体が動かない中で、マネーだけを刷り続けるという異常事態に陥ることになる。

4、モノ自体が動かなくなってきている。

5、米国にも日本化現象が起き始めている。超低金利政策の継続、量的緩和による長期国債の買い上げでは、起きるべきして起きる現象だ。

6、モノが動かず、カネが余ると、自社株買いやM&Aは自然な選択肢だ。モノが動かないと増収増益は難しくなる。

7、各国通貨の価値はゼロサムだ。多国籍企業の利益もゼロサムに近くなるが、本国送金に関すれば、通貨安での利益を通貨高に送れば減少する。大きな懸念ではない。

8、モノ自体が動かなくなっているので、これは世界的な兆候だ。

9、信用リスク・プレミアムは本来あってしかるべきものだ。これがカネ余り、信用バブルで異常なレベルまで縮小していた。つまり、ジャンク債を高値で買った人が多いということだ。この広がりは2016年の最大懸念の1つかもしれない。

10、米連銀の現状の金融政策は、ゼロ金利と未曽有の資金供給量を維持したままだ。不況の株高を表す金融相場が継続中だといえる。金融相場でPERを当てにすることは、基本的に間違いだ。

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