2015年12月1日時点での主要市場見通し

米国は、2015年4月および10月に公表された、財務省半期為替報告書でも、日本やユーロ圏が過度に金融緩和に依存している(金融緩和による円安、ユーロ安に依存している)と指摘し、さらなる米ドル高に対して懸念を表明している。

まだ景気や金利等の日米格差が大きいため、現水準より米ドル高・円安が進む余地はあると見込むが、米国の米ドル高牽制姿勢が強まりそうななか、米ドル円相場が130円を超えることは難しく、2016年後半は、125円を中心としたボックス圏内での推移になると予想する。

ユーロと豪ドルについては、それぞれの通貨の下落材料(ユーロについては、景気のもたつきやECBの追加緩和、ギリシャ問題、パリでのテロ事件、フォルクスワーゲン社のスキャンダルなど、豪ドルについては、豪州から中国向け輸出の減少懸念など)は、十分市場の織り込まれていると想定される。このため、先行きの対円での通貨上昇率は、米ドルより両通貨がやや勝る(ユーロや豪ドルの対米ドル相場はやや上昇する)と見込んでいる。

日本株については、2016年は一直線の上昇基調は考えていない。企業業績は、全産業の連結経常利益について、2015年度(2016年3月期)はほぼ10%程度の増益、2016年度(2017年3月期)は10%に近い一桁の増益が、期待できるだろう。このため、日経平均株価は、22000~23000円の水準に、年央辺りには達することができると予想している。

この上昇相場の背景については、2016年7月の参議院選挙(場合によっては衆参ダブル選挙)に向けて、与党が経済政策に力を入れる(それが実際に景気にどの程度の効果を及ぼすかは別として)という点も挙げられる。

しかし参議院選挙を過ぎると、安倍政権の政策の比重が再度安全保障に向かう(経済政策が手抜きになる)可能性が懸念されるうえ、株式市場は、2017年4月の可能性が高い消費税率の引き上げ後の経済状況を、気にするようになってこよう。このため、2016年末の日経平均株価は2万円程度まで下押しする可能性が強いと見込んでいる。

こうした概況以外の注目点としては、世界の株式市況の大きな流れでは、これまで先進諸国の株価が比較的落ち着いた推移をみせるなか、中国株は一時のバブル的な無理な上昇のツケを払いつつあり、ロシアやブラジルの株価は低迷している(図表5)(※3)。こうした新興主要国の株価の不振は、それぞれの諸国の経済状況の不振を正しく表しているわけだが、悪材料はかなり織り込んだ、とも言える。

※3 図表5は、日本円に換算した値で描かれているので、それぞれの国の株価指数と通貨相場(対円)の両方を合わせてみていると考えられる。

(図表5)
zu05

今後、新興諸国の経済状況が、著しい改善をみせなくとも悪化に歯止めがかかったとの見解が広がるようなことがあれば、投資資金がどこかの時点で先進国から新興国に移動する局面が生じると予想される。そこが世界的な投資資金の流れの大きな分岐点になる可能性があるが、それはすぐではないだろうし、もしかすると2017年以降のことになるかもしれない。

なお、これまで述べてきたシナリオに対するリスク(悪い方向のリスク)を4点挙げると、

1)先進諸国内におけるイスラム過激派の大規模テロや、
  シリアを巡る国際情勢の混迷、
2)中国の景気悪化の大幅な加速、
3)商品市況の低迷持続による、
  資源国の財政悪化や商品先物で運用しているファンドの破たん、
4)米国長期金利の急速な跳ね上がりやジャンク債市場の崩壊、

であろう。

以上、シナリオの背景。
このあと、前月号(2015年11月号)見通しのレビュー。

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