フィリピン新展望‐製造業発展戦略は可能か‐

2、GDPの1割を占める海外出稼ぎ労働者からの送金

 フィリピン経済の基底には3つの要因があるように思われる。海外出稼ぎ労働者、人口ボーナス、大土地所有制及び財閥支配の3つである。

 表3は、フィリピンの国際収支と在外フィリピン人就労者(Overseas Filipino Workers、OFW)からの送金額である。国際収支表によると、2014年の第2次所得収支は232億㌦の大幅黒字であるが、これはほとんどがOFWからの送金である。GDPの1割近く(8~9%)を占める。

 フィリピンは輸出が少なく、貿易収支は恒常的に赤字であるが、それをサービス収支と所得収支でオフセットし、経常収支は黒字を確保している。中でも第2次所得収支の黒字が貢献している。

★表3 フィリピンの国際収支とOFWからの送金

 フィリピンは、全人口の約1割が海外在住と言われている(ストックベース。半分は海外移住者、半分は海外就労者)。大統領府在外フィリピン人委員会によると、全人口の10.9%に相当する1049万人が国外に居住している(2012年末)。OFWが最も多い国は米国であるが、1970年代以降はオイルマネーに沸く中近東への進出が増え、80年代以降はアジア諸国での就労も増えている。

 フローベースで見ると、2013年に海外で雇用契約を結んだOFWは224万人に達する。これとは別に移民がいるが、これは8万人に過ぎず、海外に渡った人の多くは出稼ぎが目的である。OFWの行先は中東の産油国、シンガポールや香港、マレーシア等アジアの比較的所得水準の高い国である。

 なお、似ているが、フィリピンはBPO(Business Process Outsourcing)によるサービス輸出が強い。国民の英語能力が高く、大学卒業生も多く、加えて先進国に比べ人件費が安いため、コールセンターなどBPOのアウトソース先として有望視されている。このBPOがサービス収支の黒字を支える一要因になっている。海外に出稼ぎに行くのではなく、国内雇用であるが、モノの輸出ではなくして外貨を稼いでいる点、OFWの送金に似ている。

◇頭脳流出
 OFWのもう一つの傾向は、高学歴化と専門化である。医師、看護師、エンジニア、船員、秘書など専門技術を持つ高給取り職種が増えている。230億㌦のOFW送金の半分以上は専門職が多いと思われる米国やカナダからの送金である。

 このOFWからの送金は、主に食料・衣服などの生活必需品や家電・耐久財の購入や教育費、医療費などに使われている。フィリピン経済は、リーマンショック後も景気が底堅い動きを示しているが、それはOFWに支えられた個人消費が堅調だったからである。

 しかし、功罪はある。高学歴人材の海外流出は、フィリピン国内の人的資本の蓄積を妨げている。高収入を求めて海外へ出られると、国内のハイテク産業で働く専門家の不足や、医師・看護師の流出は医療サービスに支障が出るというデメリットも懸念される。

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