「介護ヘルスケア~どこに住むか、どこで看取られるか」

・誰でもいつかは介護を受けるようになろう。その前に、自分の親や親族の介護で一定の役割を果たす必要がある。順送りの巡り合わせといえよう。介護制度が充実してきたとはいえ、自らの現場にあってその負担は重い。人生の下り坂を人に迷惑をかけずに過ごしたいと思いつつ、互いに支え合う仕組みの充実も一層求められる。

・敬老の日、田舎に住む95歳の母を訪ねた。特養(特別養護老人ホーム)に入っている。要介護3のレベルながら、至って元気である。会話をすれば、息子であるとわかってくれるが、すぐに忘れてしまう。月額の費用は本人がもらう年金でほぼ賄える。これも国のおかげである。福島県猪苗代にある特養の施設は広く充実しており、お世話を担当する人々にも恵まれている。

・9月に、ベネッセホールディングスで有料老人ホーム事業を展開するベネッセスタイルケアの滝山真也社長の話を聴いた。滝山社長は現在44歳、20年間この仕事をしている。介護制度の実態について認識を深めたが、印象に残った点をいくつか取り上げてみたい。

・介護保険は2000年にスタートした。これによって利用者はサービス内容や事業者を選べるようになった。一方で、民間営利法人も参入できるようになった。現在、介護サービスの6割以上が民間企業によって運営されている。その次が社会福祉法人で、2割強を占める。

・介護保険料は、40歳以上の人が支払っている。65歳以上は年金から天引きされ、40~64歳の人は医療保険と一括して徴収されている。介護保険を利用したい時は、要介護認定(市町村の認定調査、医師の意見書)を受け、ケアマネジャーが作成したケアプランに従う。7段階(軽いほうから要支援1~2、要介護1~5)の認定に応じてサービスを受ける。本人の自己負担は1割で済む。但し限度額があり、これを超えると全額自己負担となる。財源は、保険料が半分(現在40~64歳が29%、65歳以上が21%を負担)、税金(国、県、市町村)が半分を担う。

・問題は、この財政負担がどんどん増えることである。介護保険の税費用は2000年度3.6兆円であったが、2014年度10.0兆円となり、このペースでいくと2025年度には21兆円になりそうである。65歳以上の人が払う保険料もスタート時は月2900円であったが、現在は5500円、これが10年後は8100円に増えることになる。

・介護保険料を支払う人は、いずれ自分もお世話になるとしても、保険料がどんどん上がっていくのはたまらない。介護サービスを受ける人は少しでもよいサービスを受けたい。家族や周りの人も自己の経済的・労力的負担が減ることを望む。国は財政がもたないので、できるだけ切り詰めようとする。問題は確実に大きくなっていく。

・民間企業は介護サービスをビジネスチャンスと捉えるが、介護サービスの付加価値をどのように高めていくのか。時に不正も発生しているので、フェアな競争環境が必須である。介護サービスで働く人々の報酬は全般的に低い。ひいては働き手が不足している。しかし、他の仕事と同等の賃金を実現するには介護サービスの生産性を上げることが求められる。しかし、人へのサービスはそう簡単に効率が上がるものではない。ここに、どうイノベーションを起こすかが問われている。

・民間企業に比べて社会福祉法人は税制(非課税)、施設整備への補助(国が半分を負担)、職員への給付等で優遇を受けている。民間企業ではできない介護サービスを担っているという側面もあるが、その組織体制のガバナンスや財務状況の情報開示については、今後の改革が必要であろう。

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