外貨逼迫する中国、脆弱な対外金融力、再元安不可避に

(5) 元高信仰の消滅が引き起こすもの

二律背反に追い込まれた中国の為替政策
以上のような外貨ひっ迫状況の下で実施された人民元切り下げは、元が上昇し続けると言う元高神話を砕いてしまった。それにより中国企業の国際資金調達は今後著しく困難化し、中国からの資本逃避にもはずみがかかることも予想させる。

前回レポートしたように、8月11日から13日までの元安誘導は、景気悪化に直面している中国経済に対しては整合的なものであった。中国の輸出は1~7月累計で前年比-0.3%、7月単月では前年比-8.3%と落ち込み、これまでとは打って変わって輸出が成長の足かせとなっている。今では中国主要都市の賃金はアジア新興国で最高となり、価格競争力の減衰が顕著になってきた。元高が競争力を弱めているのである。また、今進行中の金融緩和を実効性のあるものにするためには、人民元安を容認せざるを得ないと言う事情がある。金融緩和により下落圧力を受ける人民元の価値を維持するためには元買いドル売り介入が必要だが、それは金融緩和を尻抜けにさせてしまう。やはり弱い経済実態には通貨安は必然なのである。

しかし元高神話が砕かれたことで、それは巨額の対外資本流入を所与としてきた中国金融をさらにひっ迫させ一段の元安期待を醸成せずにはおくまい。景気対策のためには元安が必要、しかしそれは中国経済の命綱である資金流出を招くと言う二律背反に中国当局が追い込まれていることも示唆している。

(6) 追加的不安、権力闘争と地政学

不安を高めているのが、国内の権力闘争と海外の厳しい習近平政権批判
国内ではハエも虎も叩く整風運動が経済活力を奪いリスク回避心理を強めざるを得ない。また習近平政権の相次ぐライバルの訴追により、本来集団指導であるはずの共産党統治が個人独裁化している。それは中国政府の統治能力、経済危機管理能力を大きく削いでいく可能性がある。

地政学的リスクも無視できない
米国と世界のリベラル・デモクラシー世論の対中硬化が顕著である。エコノミスト誌は、”Xi’s history lessons”という過激なカバーストーリ―を掲載した。表紙には、習近平国家主席が鉄砲を持っていて、鉄砲の先にペンが描かれている。エコノミスト誌の主張は ”How China rewrites the past to control the future”、中国は、過去の歴史を書き換えることによって、軍事的台頭と言う将来の野望を正当化しようとしている、というものである。エコノミストは中国習政権による過去の歴史の書き換えとして、①日本の侵略に対して戦ったのは蒋介石率いる国民党政府であるのに、その成果をあたかも毛沢東率いる共産党の手柄にしていること、②過去70年間一発の発砲もしなかった平和主義の日本を侵略性を持つ国と悪魔化している、の2点を挙げ、それが中国習政権の軍事的野望を正当化するものとなっている、としている。このエコノミスト誌の主張は、「侵略の過去を軽んじ、中国の脅威を誇張する」として、日本の保守主義者や安倍首相に批判を浴びせてきた、その見解そのものであり、エコノミスト誌が急速に軸を変えていることを示している。それは国際的リベラル・デモクラシーの陣営が大きく対中警戒にシフトしていることを示唆する。

米国は中国の南沙岩礁埋め立てによる滑走路、軍事基地建設を絶対に容認しないだろう。すでにレッドラインを超えた中国は、どう対応するのだろうか。9月の習近平訪米は、この問題を巡って正面衝突を引き起す公算が強い。この中国の意図をくじくにはどうするか、直接軍事的に退治できないとすれば、中国経済の衰弱しかないではないか、米国政権の優先順位は経済から地政学へとシフトし、それが世界株式の当面の制約要因になる、という要素を考えておくべきかもしれない。

(7) 当面の市場をどう見るか

以上は中国問題の潜在的リスクがいかに大きいかを物語るが、それが直ちに顕在化するとは限らない。また中国リスクは対中債権の大半を保有する、華僑資本が影響力を持つ国に集中しており、米日欧先進国への波及は限定的とみられる。

言うまでもなく米・日・欧先進国は経済拡大の途上にあり、世界リセッションの可能性は低い。加えて中国リスクの高まり、世界的株価下落に対しては各国では追加的政策、量的金融の増額、財政拡大が打ち出され、それも株価をさえるだろう。他方中国でも超弩級の景気対策、資本取引規制や為替統制、市場価格操作などが打ち出され、一定の成長復元、市場の鎮静化がなされる公算もある。当面リーマンショックのようなスパイラル的悪循環の可能性は考えにくく、一方方向の株価下落にもならないだろう。当面振幅の大きなアップダウンが繰り返されるのではないだろうか。

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