利潤率と利子率の乖離が示唆する歴史的投資チャンス~量的金融緩和がなぜ必須なのか、成功できるのか~

(4) 政策対応が運命を分った歴史的経験

反成長主義のジョークのような誤り
実際、今米国で起こっている様々な問題‐雇用がなかなか増えないこと、そして資本が余って長期金利が史上最低まで低下している現在の経済情勢は、このようなことの結果と考える外はない。ではこの先いったい何が待っているのか、それを決めるのは政策に尽きると言っていいのではないか。無策であれば人の余剰や資本の余剰が放置されて、経済は崩壊するという悲観論が現実化する可能性もある。当然、今までと同じ仕事はコンピューターがやってくれるわけだから、経済の規模が今までと同じであれば、人間とお金の余剰は際限なく高まり経済は崩壊すると考えられる。

2012年に民主党の経済産業大臣(現幹事長)の枝野幸男氏(私は潔い政治家だと思っている)が、東洋経済新報社から『叩かれても言わねばならないこと』という本を出版した。覚悟のある潔い政治家は、有権者がいやだと言っても耳に痛いことを言わなければいけない、という内容なのだが、その本で主張している中身は、『一生懸命働いて給料が上がり生活がよくなるなどという幻想を捨てなさい、成長に期待を持てない時代である』、ということだ。なんとなく日本人受けする議論だが、多くの基本的な点で大変な考え違いを犯している。どういうことかと言うと、枝野氏がどのように考えるかにかかわりなく、技術革新は進み生産性は自動的に高まるので、今のままの経済規模であれば人間と金の余剰はどんどん拡大し、最終的に我々の仕事はロボットに置き換えられて全員が失業するのだ。つまり、経済が成長する必要がないという議論は、際限なく失業と資本の余剰が高まることを放置すべきという議論であり、究極の謬論、暴論であると考えられる。しかし多くの人々は、この枝野氏のような反成長あるいは成長否定の議論を、非常に耳に心地よく聞かされているのではないだろうか。

大恐慌の失敗から学ぶもの
反成長政策、経済無策を容認する心理は大きな悲劇をもたらす。そのような議論が今から80年前に米国で風靡し経済破局をもたらしたことを、我々は知っている。大恐慌である。1929年10月から始まった米国の株価下落は3年半で89%の大暴落となり、信じがたい富の破壊に帰結した。そしてその後長期における破局的な経済困難が続いた。この大恐慌がなぜ起きたのか。枝野氏と同じようなメンタリティーの持ち主であった当時の米国フーバー大統領が、1929年に株価暴落が始まり労働と資本の余剰が著しく高まる中で4年間に渡って、金融引き締め政策を続けたからである。大したことにはならなくてもよかったはずの経済困難が、大恐慌になってしまった。米国で1929年に暴落が始まってから、金融緩和が始まったのは4年後の1933年ルーズベルト次期大統領の就任後であった。人と金が余っている時に、フーバー大統領による清算主義に基づく反成長政策がとられ、破局的な経済悪化がもたらされたのが大恐慌であった。2年前までの日本の民主党政権と白川総裁の下での日銀政策は、それと類似した政策を遂行していたと言える。

今回のリーマンショック時にも1930年代の大恐慌と類似の経済困難が起こった。技術革新による生産性の上昇、その結果としての労働と資本の余剰の増加という点で、大恐慌が吹き荒れた1920年代後半とリーマンショック以降の経済情勢はよく似ている。大恐慌当時もエネルギー源としての石油の台頭、電気の普及、鉄道網敷設による全米市場の統合など技術革新が起き、著しい生産性の高まりが進行していたのである。しかし、政策は当時と今回とでは180度異なっていた。バーナンキ前FRB議長は、2008年に株価の暴落が始まると直ちに量的金融緩和を行った。大恐慌の時のように4年間の政策無策がなかったことによって、この人と金が余る経済困難を、今回は見事に比較的軽いリセッションにとどめることができたのである。このよう考えると生産性の上昇の結果もたらされた労働と資本の余剰をどのように処理するかが経済と市場にとって決定的に大事な鍵なのだということが分るのではないか。2012年の11月以降の日本の株価急騰は、まさしく日本に於いてもそうした需要創造政策、アベノミクスと黒田日銀による量的金融緩和が打ち出されたおかげであった。このように見てくると、生産性の上昇によって人と金が余る時に、いったいどのような政策が必要なのかがよくわかると思うが、その失敗例が大恐慌なのである。

生産性上昇が人類の繁栄を引き起した成功例
では、成功例は何かというと、日本に於いても米国に於いても人類の農業の歴史を振り返れば自明である。図表15、は米国の農業の生産性推移であるが、生産性が高まって人と金が余ることを、人類はもう200年前に経験していることを説明したい。図表14は米国における農業就業者の総就業者に占める割合であり、1800年には74%であつたが、1900年には40%となり、現在は2%まで低下した。劇的に農業就業者比率が低下したわけだが、なぜこんなことが起こったのかといえば、言うまでもなく農業生産性が劇的に上昇したからである。今から200年前には、74人が働くことによってようやく100人の飢えを満たすことができたが、今はたった2人が働けば100人が満腹になるのである(図表15)。ここから明らかなことは、現在100人のうち98人が農業から失業しているということである。では農業から失業して、人々は路頭に迷っているのかというと、そうではない。人々は農業以外の産業に従事し依然雇用についているのだ。

★図表14-15

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