利潤率と利子率の乖離が示唆する歴史的投資チャンス~量的金融緩和がなぜ必須なのか、成功できるのか~

長期金利低下の「謎」
それからあと一つ、2000年頃から米国に定着した変化として、元FRB議長であるグリーンスパン氏がかねてから主張していた「謎」がある。2000年代に入り、景気が良く金融も引き締めているのに、長期金利が上がらないということが定着し始めた。図表12の米国名目GDP成長率と長短金利推移を参照されたい。青い山グラフは米国の名目GDP成長率で、赤い折れ線グラフが10年国債利回り、緑の線が短期政策金利を表している。グリーンスパン元FRB議長が「謎」だと言ったのは、今から10年ほど前の2004~2005年頃に彼が短期政策金利を引上げ始めたにもかかわらず、そして米国の名目経済成長率が7%と極めて好調であったにもかかわらず、長期金利が長期に渡って上昇せずずっと低迷をしていた現象である。この現象はリーマンショックの一時期に解消されたが、ショックが終わると再度名目成長率が回復するのに長期金利が低迷するということが起こっている。グリーンスパンの「謎」は10数年にわたって続いているのである。

★図表12

この長期金利の低迷を当時のFRB理事であったバーナンキ氏は、グローバル・セービング・グラット(世界的な過剰貯蓄)が米国に入ってきて米国の金利を押し下げている、と言っていた。確かにそれも一つだろうが、筆者は当時からこの説明には疑問があり、米国の企業部門が著しく貯蓄余剰になったこと(図表7)が、このグローバル・セービング・グラットと同時に起こっていたのではないか、と度々レポートで主張してきた。そしてこれがリーマンショック後より顕著な形で顕在化してきているのである。つまり、グリーンスパン元FRB議長が「謎」だと言った、経済実態や政策とは無関係に低迷する金利の背景には、企業部門の著しい貯蓄余剰があるというのが、ひとつの解釈といっていいのではないか。

利潤率と利子率の乖離
同時に2000年ごろから起こった顕著な変化に、利潤率と利子率の乖離がある。冒頭の図表1は、米国企業の利潤率(簿価ベース)と利子率の推移を見たものであるが、1995から2000年ごろまでは、この利潤率と利子率はある程度連動していた。しかし2000年以降利潤率が上昇するのに対して利子率が低下し、両者の乖離が益々拡大している。特に最近は、図表2をご覧いただくとわかるように、米国の利潤率の代表であるROEが大きく上昇しているにもかかわらず、利子率の代表である国債利回りがずっと低下をし、リスクプレミアムともいえる両者のギャップが、空前の形で拡大したままとなっている。

株価形成の変化、フェアバリューが見えなくなった
もう一つ2000年に起こった大きな変化は、株価形成においてはFEDモデルが完全に機能しなくなったことである。図表13は米国株価のフェアバリューを示すFEDモデルのグラフである。FEDモデルとは、株式益回り=10年国債利回りとなる株価がフェアバリューであるとの想定に基づく単純なモデルであるが、2000年までは(1999年のITバブル形成時を除き)このFEDモデルがほとんど完全に機能していた。つまり、金利が上がって債券が下落すれば、同時に株価が下落して益回りが上昇するというように、債券市場と株式市場との間で完全な裁定関係が成立していた。債券市場と株式市場には常に資金移動、フィードバックが起こっていたのである。しかし2000年以降、米国の株価は利益と長期金利との裁定関係を完全に失ってしまった2000年以降、株式のフェアバリューの尺度がなくなるということが起きた。長期金利が低下を続けたにもかかわらず、株価は下落、益回りは上昇し続け、株式益回り>10年国債利回り、という不等式が長期にわたって続き、両者の乖離が2012年まで拡大の一途をたどった。

そうしたことの結果として、長期的な株価上昇が2000年に完全に止まってしまった。1999年に10,000ドルをつけたダウ工業株平均株価は、その後十数年、2011年ごろまで、10,000ドル前後での停滞局面に入った。その入口が2000年だったのである。株式市場の劇的な変化の最も根本的な原因も、2000年に起こった大きな経済構造の変化だったのである。

★図表13

このようなことを逐一説明すると、2000年を境にして起こった構造変化は、極めて顕著でありラディカルなものであるということがおわかりいただけるだろう。しかし、なぜこれが起こったかという解釈に関して定説は定まっていない。この2000年に起こった劇的な変化とはいったい何か、これがおそらく今のアカデミズムの最大の論点ではないだろうか。

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