アジアインフラ投資銀行問題の行方と含意、米国は屈辱からどう出るか?

ミラー
地政学というのは、ちょっと勉強不足なのですが、どういったことなのでしょうか?

武者
地政学というのは地理的、政治的、軍事的条件が世界の国の存亡を左右するという複雑な概念なんですけど、端的には経済だけではなくて、政治や軍事など、いわばパワーのバランスが世界の秩序を作っていくという考え方だと言っていいと思います。そして、そのような世界のパワーという観点から、日本の近代の歴史やマーケットを振り返ると非常に面白い事実も浮かび上がってくるのです。それはどういったことかと言いますと、近代の日本には二つの繁栄期がありました。そして株価もこの二つの繁栄期に大きく上昇しました。この二つの繁栄期は一体何かと言いますと、第一の繁栄期は1902年に締結された日英同盟から続く30年弱の繁栄期です。この1902年以降、何が起こったか、1905年には日露戦争が起き、日本の力強い経済発展が始まり、そして日本はアジアにおける列強の一つとして、唯一の帝国主義国として非常に大きな力を蓄えるに至った。その起点が1902年なんですね。つまり、1902年の日英同盟というのは、日本の近代化にとって決定的に重要な鍵になったのです。当時、世界の7つの海を支配しているイギリス、これは栄光ある孤立といって、どことも同盟を結んでいなかった。アメリカともイギリスは同盟していませんでした。そのイギリスが初めて同盟相手として選んだのが日本なのです。なぜ当時のイギリスが日本を同盟相手として認めたのか?それは南下するロシアに対する対抗策です。19世紀にに起きたクリミア戦争は南下するロシアがトルコと戦争をし、このトルコを支援するためにイギリスも参戦したというように、ロシアの南下政策、これが当時のイギリスの地政学的な大きな脅威でした。それをアジアから抑止するために日英同盟が必要であったのです。この日英同盟があったからこそ、日本は日露戦争に勝てた、そしてそれ以降の日本の飛躍が始まったと言っていいと思います。この日英同盟により、アジアの島国である日本が世界のプラチナ・ステータスの国に一気に飛躍しました。

二つ目の日本の飛躍はいつ起こったかと言いますと、1951年のサンフランシスコ講和条約。日米安保体制の出発から起こったと言っていいと思います。終戦後数年間、方向感が全く見えなかった日本がアメリカとの同盟関係によって国の骨格と経済を建設していくのだという方向が定まったからです。何故それが重要かと言いますと、まさしく1950年が冷戦の勃発だからです。第二次世界大戦が終わって暫くはアメリカと当時のソ連の蜜月時代が続いたのです。しかし、朝鮮戦争が起き、いよいよ東西冷戦が勃発するに至って、日本はアジアにおける自由主義の砦として、アメリカの非常に重要な足場となった訳です。アメリカの足場である日本を強化するために、アメリカは陰に陽に日本を経済的にも支援しました。そこから日本の戦後の発展が始まり、それがピークを打ったのは1990年です。1990年は一体どういう年かというと、その前の1989年はベルリンの壁が落ち、そしてその翌年の1991年にはソビエト連邦が崩壊するのです。つまり、アメリカと日本の共通の敵が消えたのが1990年前後である。アメリカはもはや地政学的観点から日本を支える必要がないということが起こったのも1990年です。その1990年に日本はバブルが崩壊し、経済の長期繁栄も終わった。このように日本の経済繁栄は、地政学的裏付け、バックグラウンドということと、極めて密接な関係があるということが、近代の日本の歴史を振り返ると明らかです。

さて、今起ころうとしている日米安保体制の強化、これは恐らく第三段目の日本の繁栄のバックグラウンドになる可能性が強いのではないかと思います。アメリカが今一番大きく反省している、調整しなければならないと思っているのは、中国の意外なスピードでの台頭。そして、日本の意外なスピードでの地盤沈下であると思います。この日本の地盤沈下と中国の台頭――これはやはり、アメリカの地政学的な配慮の結果もたらされた要素も強いのです。1990年、冷戦が終わって異常な経済の強さを誇った日本が、むしろアメリカの脅威の対象となって超円高やジャパン・バッシングで日本を叩いた。そして、今度は日本を叩く代わりに、韓国や日本の周辺諸国の経済基盤の向上を支えたことが、アジアにおけるパワーバランスを劇的に変えてしまったのは明らかです。このような反省に立って、再びアメリカは相対的に日本の経済的なプレゼンスを押し上げる地政学的な必要性を感じ始めていると言えます。ゆえに、アベノミクスが登場して以降、わずか2年間で日本の円は4割も下落をした訳です。かつてであれば、著しい円安をアメリカが容認するということは考えにくかったはずなのですが、今アメリカは全くそれに異を唱えていない。それはまさしく、アメリカの地政学的国益がシフトしたからと思われます。このように考えますと、アメリカの地政学的国益、それが日本の経済や市場の大きな土台に関わっているのが明らかです。このような観点からみると、アジアインフラ投資銀行が引き起こした地政学的な大きな波紋は、日本の経済と市場にも間接的に大きな影響を与えると言っていいのではないかと思います。

今、日本の株式市場はアベノミクスが始まって2倍以上に上昇し、この先、更に上昇するのだろうか。あるいはここで終わりなのだろうかという議論が高まっています。多くの人々は、ここまで上がったのだから、もう調整だろうと考えています。しかし、私はそうは思いません。むしろ、今申し上げましたような地政学的なバックグラウンドの下で、今の上昇相場は更に大きな歴史的相場へと繋がっていく可能性が強いと思います。日本の歴史を振り返りますと、特に大相場と言えるような相場というのは、値上がり幅に規則性があります。高度成長の前半、大相場が3回ありましたが、3つとも値上がり幅は5倍なのです。そして、高度成長の後半の大相場は、何と10倍です。このような歴史的大相場が今始まったとするならば、アベノミクスが始まってまだ2倍しか上昇していない今の日本の株価は、まだまだ上昇途上にあると言っていいと思います。このような株価のレベルは、かねてからご説明している通り、経済のファンダメンタルズ、株式のバリュエーション、そして適切な経済金融政策からも正当化されるのですが、今日は地政学的な観点から日本の株価を上昇させる基盤、条件が整っているのだということを申し上げました。

ミラー
本当に大きな視点からの意見だと思います。私も初めて聞きまして、びっくりしました。今後の方向、日本とアメリカの同盟の強化というところをよく見据えて、株価が上昇していくという期待を持ってマーケットを見ていきたいなと思います。

武者
そうですね。

ミラー/武者
ありがとうございました。

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