アジアインフラ投資銀行問題の行方と含意、米国は屈辱からどう出るか?

(5) 中国はAIIB設立の目的を達成できるか

ミラー
今、アメリカは一層ヘッジを強めていくということをおっしゃったのですけれど、そういった中で中国の意図、アジアインフラ投資銀行設立の狙いは成功するのでしょうか?

武者
私は残念ながら、中国の意図は成功しないと思います。中国はイニシアティブによって、世界の共有財産である基金を作ることはできるでしょう。しかし、それが中国の狙いである、中国の国内経済の矛盾の解消、あるいは中国のグローバルな地政学的プレゼンスの上昇ということに結び付くかというと、そうならない可能性が極めて大きいと思います。それはどういうことかというと、第一に、中国のやや国益重視のグローバルな展開というのは、色々なところでほころびが出ているんですね。一番いい例は、ミャンマーですよね。中国は雲南省からミャンマーまでの大きなパイプラインや、鉄道、高速道路を造ることで、あの地域一帯を開発し、その盟主に座ろうとしていた訳です。しかし、ミャンマーの民主化によって、このような中国主導のミャンマーのパイプラインや鉄道の建設は完全にストップしたままです。そして、今やミャンマーに対しては、日本やアメリカという民主主義国の援助によって国の建設が進められようになっている。中国のミャンマーに対する取り込み戦略は失敗したと言っていいですよね。同じような例は、スリランカでも起こっています。中国との関係を強化し、経済発展の戦略をとっていたスリランカの前の政権が挫折、選挙で負けて、中国に対して距離を置く新たな政権ができ、その政権はむしろアメリカやインド、日本、ヨーロッパなどの民主主義国に近寄っていくというバランスのとれた政策に変わろうとしている。これも中国のスリランカに対するアプローチが、汚職だとか、あるいは国内の環境問題などによって、スリランカの国民の反発を招いた結果です。つまり、中国の国益だけをベースとした中国の進出というのは、現地において恩恵をもたらすどころか、反発を招いているということが様々な事柄から浮かび上がっています。そうなると、中国の過剰な供給力の掃き出し口として、自分の周りの国を使うという自己都合の海外展開は、軌道修正せざるを得ないということにいずれなってくると思います。

第二の問題は、中国の今の国内経済の問題は、グローバル展開することで解決できる問題かどうかということです。何故かというと、今の中国の問題の最大の鍵は、投資と消費のアンバランスということにあるのです。つまり、経済発展の結果生まれた余剰を投資に振り向け、投資によって更に供給力を強める。そして、投資に関わっている政府部門や役人、あるいは大企業、国有企業が恩恵に預かるというフレームワークによって、益々供給力が増え、他方で需要はあまり増えないので資金余剰が高まるということが起こる訳です。この問題を解決するには、投資主導から消費主導の経済に変え、国内の人々の生活水準を押し上げることで需要を作っていくというような政策の軸の大転換が必要なのです。

端的に言うと、労働分配率を引き上げることで国内の需要を増やす、消費を増やすということが必要なのです。しかし、今の中国のやり方というのは、国内の需要構造を変えるということではなくて、供給力の余剰を海外に吐き出すという政策ですから、成功しうる政策とは言えないと思います。中国の国内の経済困難はより深刻化していく可能性が強いのです。ミラーさんのさきほどのご質問でアジアインフラ投資銀行の設立が、結局はアメリカの覇権の衰退と中国の台頭をもたらすのではないかと仰っていました。しかし現実は全く逆で、今の世界経済の中でアメリカ経済が極めて好調でひとり勝ちの様相を強め、他方で中国は様々な問題から成長率がどんどん落ち込んで経済困難に陥っているという現実もある訳です。今の中国は、鉄道貨物輸送量、粗鋼生産量、電力の発電量あるいは貿易の輸入額などを見るといずれもマイナスのテリトリーです。中国経済はもはや成長できないというような困難な状況に差し掛かりつつある訳ですね。このような国内的困難を抱えて、グローバルに風呂敷を広げる現在の中国の対応が成功しうるとは到底思えないのです。

このように考えますと、アジアインフラ投資銀行の展開というのは、極めて複雑な要素を絡め合わせて持っているので、一面的にこの問題を捉え、アメリカの時代が終わるとか、アジアインフラ投資銀行にすぐにでも参加しなければいけないとか、短兵急に結論を急ぐ必要はないと思います。

★図表6-7

★図表8-9

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