アジアインフラ投資銀行問題の行方と含意、米国は屈辱からどう出るか?

(4) 米国の今後の対応、対中政策が大きく変わる可能性

ミラー
こういった場合ですね、米国は参加していない訳ですけど、どう対応して行くことになるのでしょうか?

武者
ここまで来ますと、アメリカもインフラ投資銀行を認めないと否定することはできないと思います。中国が提唱したアジアインフラ投資銀行を国際的な金融の枠組みの中に招き入れながら、これを適切にマネージするということにならざるを得ないと思います。恐らく日本もアメリカと共に今のところ参加していなけれども、最終的には参加していくことになり、投資銀行は中国主導の下で透明性を獲得するという形で、世界の機関として脱皮していくということになっていかざるを得ないのではないかと思います。しかし、そのような動きは、中国からしてみると痛し痒しという側面もあります。何故なら、中国は自分のところで余っている資本を使うことで、中国の国際社会におけるプレゼンスを高め、地政学的には中国の覇権的な立場を強化しようという狙いもある訳です。やや強く言ってしまえば、帝国主義的な野望というものを持っている訳です。このような中国の狙いが、ヨーロッパ諸国や日本、場合によってはアメリカが加わるとなると、これは色々な形でチェックが入って中国の思い通りには動かせなくなる。そうなると、中国はお金は出すけれども、思い通りに事が運ばないという意味での制約を受けるということはあり得る訳です。従って、アメリカとしては、もう既に流れができてしまった以上、それを拒否するということはできなく、それをむしろアメリカの望ましい方向に変えていこうという努力に転換せざるを得ないと思います。

しかし同時にアメリカは、このような事態をもたらしたアメリカの怠慢、つまり、IMFや世銀の改革ということに後ろ向きだったことを痛く反省して、それの再強化をしていくことになっていくと思います。これは、世界的に見て非常に望ましい動きです。

三つ目に想定されるアメリカの対応は、より一層ヘッジングを強めるということだと思います。ちょっと高を括って怠慢している間に、中国のプレゼンスが著しく高まったことによって、アメリカが感じる衝撃は非常に大きいと思います。このまま中国の台頭を容認していけば、やがてはアメリカが望ましくないと思う形での中国のプレゼンスの増大ということも起こり得る訳です。つまり、中国が民主化することで世界の市民権を得ていくことは望ましいことですけど、共産党一党独裁であり、尚且つ、中国国内においては、最近思想統制が大きく強化されています。今では中国の大学は、マルクス主義という中国の思想工作を行う前衛であるということまで言われ、学問を中国の国家の理念であるマルクス主義に従属するというような主張も見られ始めている。そのような中国が、国際社会の中で、プレゼンスを高めるということは、世界の民主主義にとって非常に大きな脅威になるという可能性もあります。アメリカとしては、中国の野放図な台頭を抑止するということに大きな意を払う必要が出てくると思います。しかも、中国は経済的には世界の中で、協調を強めているとしても、軍事的には南沙諸島では様々な係争中の島を占有して、軍事基地などを建設するというように、想像できないほどのアグレッシブな対応をしている訳です。アメリカはこのまま中国の膨張を容認していけば、やがては台湾、これは中国の核心的な利益であるから、アメリカは台湾から手を引くべきだということになるでしょうし、その延長線上で、アジア全域は中国の影響下に入ることになります。アメリカはハワイまでそれ以西は中国というような、まさしく習近平主席がかつて太平洋をアメリカと中国で二分しようというようなことを言った、そのことが現実のものとなる訳ですね。これをアメリカは容認することは到底できない。ということは、一方でアジアインフラ投資銀行の現実を容認しつつも、より強力に中国を封じ込めにかかるということが起こり得る展開だと思うのです。

何と言っても今の中国の経済発展はかなりの程度、アメリカからの親切なサポートによって支えられているという要素がありますよね。様々な技術の導入、アメリカを始めとした世界の市場に対するアクセス、これらはアメリカやヨーロッパが中国は民主主義である、市場経済の国であるということを、一応、期待して受け入れた新しいフレームワーク、土台です。よって、中国が自ら変わらないままに、その恩恵だけを享受する、場合によっては知的財産権や法治制度、民主主義、人権問題などを全く改善しないままに、世界の中でプレゼンスを上げていくということに対しては、当然のこととして大きな抵抗が出てくる訳です。恐らくアメリカは、そのような中国の一方的な増長、求めることだけは求めるが自らは変わらない、という増長の仕方に歯止めをかけるために、色々な手立てを打ってくる可能性が強いと思います。まず、軍事的に中国のこれ以上の膨張を認めないという強い態度に出る可能性があります。それから、知的財産権、法治制度、あるいは中国が起こしているとみられるサイバー攻撃、サイバー空間を通じたスパイ活動、これらに対して非常に強いチェックを入れてくることは避けられないと思います。そうなると、一見中国の成功とみられるアジアインフラ投資銀行の設立というのは、アメリカの対中戦略を大きく変えてしまうこともあり得るということを視野に置いておく必要があるのではないかと思います。

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