新潟農業とイノベーション・ジレンマ(その2)‐産地間競争の優位は揺らぐか?‐

2、新潟コシに挑戦する北海道産米

◇きらら397は魚沼コシの半値、ゆめぴりかは2割差に追い上げる
 従来、北海道産米は美味しい米ではなかった。生産量は全国1、2位を争うが、食味が悪く、価格は安かった。例えば、まだ「きらら397」が北海道の最良品種であった2006年産米(平18)では、「きらら」1万2823円、宮城ササニシキ1万5183円、新潟コシヒカリ(一般)1万8272円、魚沼コシヒカリ2万6399円である。北海道産米の価格は魚沼コシの半分であった。
 
 それが先述のように、わずか10年も経たずして、「ゆめぴりか」の評価は新潟コシヒカリ(一般)を超え、魚沼コシを2割差まで追い上げている。北海道の人々は、米生産量全国一であるにもかかわらず、以前は全国の米を食べていたが、今は新品種の普及で道内の米を食べている(注、2000年当時、道民のコメ消費に占める道産米の比率は約4割、今は9割)。

 北海道は1980年代から、美味しい米を目指して品種開発を本格化した。北海道産米の生産高が新潟県を超えて日本一になったのは1961年(昭36年)である。しかし、その後、技術進歩によりコメは全国で過剰供給になり、1969年(昭44年)から「減反政策」が始まった。そこで、北海道の稲作は生き残りをかけ、1980年(昭55年)から食味の改良を目指す「優良米早期開発事業」をスタートさせた。道立上川農業試験場で、粘りが強く味の良い低アミロース品種の育種を目的とした。
 
 その成果で、1988年に「きらら397」が誕生した。きらら397はまずい北海道産米のイメージを一新する品種となった。きらら397を皮切りに、「ほしのゆめ」(1996年)、「ななつぼし」(2001年)、「ふっくりんこ」(2003年)、「おぼろつき」(2005年)などの優れた品種が続々と登場、その代表格が2008年誕生、2009年に本格生産が始まった極良食味米「ゆめぴりか」である。「ななつぼし」は2010年、「ゆめぴりか」は2011年に「特A」ランクを獲得した。
 
 「ゆめぴりか」は、味の良さは「こしひかり」、耐冷性は北海道生まれの「キタアケ」のDNAを受け継いでいる。育種にかかった時間は12年である。コメは研究開発の成果が出やすい作物である。技術は日々進歩している。

◇大規模経営の北海道産米の価格競争力
 
 北海道産米の強みは「規模の利益」による“低生産費”である。新潟コシヒカリを栽培する農家の経営規模は2~3haが多い。これに対し、北海道の米どころ上川・空知地区の水田農家のサイズは15haの大規模経営である。
 
 稲作は土地利用型の性格上、規模の利益が大きい。新潟を含む北陸地方の10a当たり生産費は13万6950円であるが、経営サイズの大きい北海道は11万3405円である(平成25年産米)。玄米60kg当たりは、北陸1万5440円に対し、北海道は1万2085円である。約2割、低コストである。規模のメリットは大きい。
 
 北海道産米は、今後一層のコストダウンが進むであろう。上川・空知地区の「ゆめぴりか」農家の単収は10a当たり8~9俵である。しかし、その周辺で単収13俵(ゆめぴりか)を実現している農家もある(筆者ヒヤリング)。普及所はその技術移転を模索している。多収技術が普及し技術の高位平準化が進めば、さらに2割近いコストダウンも可能である。つまり、新潟コシヒカリに比べ、北海道産米の生産費は35%も低コストになる。
 
 北海道産米の食味は新潟コシヒカリに近づいてきた。加えて、規模の利益から、圧倒的なコスト競争力を持っている。北海道の研究開発努力が、新潟コシヒカリの独占を脅かしていると言えよう。

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