「ピンチはチャンス~獺祭のグローバルニッチ戦略」

・4つ目は、杜氏に頼らない生産プロセスの確立である。桜井社長が会社を引き継いで13年、ようやく年商が当初の1億円から2億円へ上がってきた。しかし、会社が長期的に維持できるかどうかは分からない。杜氏の方々は60歳半ばであった。高齢化が進み、若い後継者はいない。自社で養成するしかない、と桜井社長は考えた。

・杜氏という職業は、冬場の出稼ぎである。100日働いて現金収入を得る。春には自分達の農作業のために帰る。しかし、若い人を雇うと夏場の仕事がない。そこで地ビール作りに参入した。丁度、規制緩和が進もうとしていた。ところが役所の許可が下りない。売れそうもない酒蔵に許可は出せないということらしい。そこで、地ビールレストランなら自家消費にもなるということで許可をもらい、レストラン業に参入した。これが大失敗であった。レストランは3カ月で閉鎖に追い込まれた。会社も銀行からも厳しい目で見られた。

・この経営不振の中で、杜氏がFA宣言し、出て行ってしまった。この時に次の決断をした。残った若手の3人を含めて、たった5人で酒の本格的な製造に自らが入っていった。自分達の作りたい酒を、自分達だけでやると決めた。それが、その後の成長に結び付いた。年商2億円が前期は46億円へ、今期は60億円に伸びるという。

・30年の歴史のうち、前半の10年は売れない商品を、売れない取引先に、そして買ってくれない客へ、一生懸命努力した。しかし、宅急便が普及し、ワープロで自前の情報発信ができるようになり、その後インターネットも加わり、大量販売から個別販売へ世の中は変化していった。そこで、お客様の幸せ志向商品に特化した。「獺祭」と「みがき2割3分」というブランドで、山田錦を原料に純米大吟醸しか作らないと決めた。美味しさだけで勝負することにした。

・工場の空調をきちんと管理すれば、1年中酒を作ることができる。ローテクでいい酒を作るには、米をきちんと磨けばよい。タンクは小さくすればよい。人手をいかしたローテクで自前のプロセスを作っていった。

・5つ目は顧客の絞り込みである。売れる酒屋とだけ付き合う。メーカー主導の製販同盟を作り、直販体制の中で販売マージンは5%高く、酒蔵マージンも5%高いというようにした。マーケットの中心を攻めることにして、東京の後はニューヨーク、パリへと展開している。美味しさが分かる人にだけに売る。分かる人には高額所得者が多い。そこで、上位5%の所得層で獺祭の繊細な味が分かる人をターゲットにしていった。

・6つ目は、日本の農業への貢献である。現在新しい工場(酒蔵)を作っている。高さ60m、12階建てのビルである。4月にこれが完成すると、いずれ山田錦が20万俵必要になる。昨年の生産量が日本全体で38万俵であるから、全く足らない。日本の生産量を60万俵に上げていく必要がある。安倍首相にも掛け合って、山田錦の枠を上げてもらうように交渉した。日本の米の生産量は年間750万tである。将来山田錦は100万俵になれば、6万tに相当する。日本の米の1%が世界に通用する日本酒の原料になるのも夢ではない、と桜井社長は強調する。これは全く自由な農業の分野である。

・まさにピンチをチャンスに変えてきた。年商1億円を2億円にするのに10年、その後倒産の危機。それを乗り切り、年商60億円へ拡大しつつある。世界の上位5%の顧客を狙う。鍵は繊細な味が分かってくれる人だけにフォーカスしていくことにある。旭酒造のグローバルニッチ戦略に乾杯したい。

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