5年後、日本のGDPは中国の5分の1 ‐アジア地域連携経済圏の形成か‐

2、新しいアジア地域連携経済圏の形成

 
◇アジアの相互依存関係の変化
 21世紀に入って、世界の相互依存関係は劇的な変化を見せた。
 第2次大戦後、日本も東南アジア諸国も、世界最大の市場・米国に輸出することで経済発展した。しかし、2000年代に入って、中国の経済発展に伴い、日本もASEAN諸国も、中国への依存が高まった。

 日本の対中輸出依存度は1995年の5.0%から、2013年18.0%に上昇(対米依存度は27.3%から18.5%に低下)、ASEANの対中輸出依存度は2.6%から12.3%に上昇(対米依存度19.1%から9.1%に低下)した(注、1995年はASEAN5)。日本も東南アジア諸国も、中国を相手にメシを食っている構図である。(詳しくは拙稿「アジアの相互依存関係の変化‐日本外交の効果を考える‐」『日本経済大学大学院紀要』Vol.3、No.1、pp1~15参照)。

 中国の輸入吸収力は巨大である。人口13億、しかも急速な経済成長に伴う一人当たり所得の増大が背景だ。IMF予測によると、今後も6~7%の経済成長が続くので、中国の輸入規模は拡大し、アジア各国の中国依存度は上昇しよう。

 なお、アジアの域内貿易も急増してきた。東アジア諸国の輸出総額に占める域内向け輸出の割合は、1995年45.2%、2000年46.8%から、2003年57.8%、2013年には83.3%に上昇した。(東アジア=ASEAN+ANIES+中国)。中国を除いた東アジアの域内貿易の比率も53.9%になっている。紛れもなく「東アジア経済圏」が、いつの間にか形成されているのである(表2参照)。域内諸国の所得・消費の増加とサプライチェーン形成の結果である。
 
 筆者は30年近く前、欧州のEC、北米のNAFTAに次ぐ第3の経済圏「東アジア経済圏」成立を予想した。アジアの経済発展が筆者の予想を的中させたのである(拙稿「“三極化”で世界経済はどう変わるか?」PHP研究所『THE 21』1988 年8月号、同「ブロック化は世界経済を変えるか」国民経済研究協会発行『景気観測』1988年7月号参照)。

★表2 アジア諸国の輸出先はどこか2     

◇中国主導の「アジアインフラ投資銀行」の効果(AIIBの衝撃)
 2014年5月、カザフスタン・アスタナで開かれたアジア開発銀行(中尾武彦総裁)年次総会で、中国主導の「アジアインフラ投資銀行」(Asian Infrastructure Investment Bank: AIIB)の設立構想が話題を集めた。これはアジアの交通インフラ整備の資金を供給することが目的である。経済発展著しいアジアのインフラ整備は大きな課題であるが、発展途上の各国がそれを賄うのは困難とみられている。そこで、中国は国際的な影響力を高める狙いから、資金を供給し主導権を発揮できる新たな国際金融機関をつくろうと言う動きである。
 
 日本と米国はAIIBに批判的で、同盟国に不参加を呼びかけているようだが、東南アジア、中央アジアの諸国は資金の供与を受ける立場からAIIBに賛同しており、10月にはアジア21国が設立準備に関するMOUを締結し、11月インドネシアも署名したので、参加国は22国になった。「中国という発展の列車に乗る」(11月北京APECでの習近平国家主席の呼びかけ)選択をアジア各国はしたのである。日本の参加、不参加に関係なく、2015年設立が内定している。
 
 AIIBはアジア各国にまたがる交通インフラ整備を促進するための国際金融機関であるが、中国とアジア地域をつなぐインフラ整備でもある。道路、鉄道、パイプライン、港湾などのインフラ整備が対象になる。それはアジアの域内経済連携を強化する手段となり、中国とアジア各国との相互依存関係の一層の深化をもたらすであろう。古代ローマ帝国の時代、「すべての道はローマに通じる」と言われた。AIIBが成功すれば、「アジアの全ての道は北京(中国)に通じる」ことになる。
 
 恐らく、自然発生的に「アジア地域連携経済圏」 (注、筆者の暫定的な造語である)が形成されていくのではないか。自然発生的であるから、クローズドな地域統合ではない。オープンな経済圏である。ただし、筆者が26年前に予想した「東アジア経済圏」とは違って、超大国の影響力の強い経済圏となろう。AIIBは中国のアジア経済戦略の柱かもしれない。
 
 この新しい経済圏は、世界で一番大きな、そして世界で一番高成長な経済圏となろう。TPPより大きな、そして世界一高成長の経済圏の誕生である。ただし、各国の条件の違いを前提とした緩やかな連携であって、「クローズドな統合市場」ではない。新しいアジア秩序の出現である。

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