「アジアの経営者からみたアジア」

・SMインベストメンツは50年間、不動産、銀行、小売をコアとしてビジネスを展開してきた。SMプライムHDはディベロッパーとして国内最大である。600haの埋め立て地の開発も手掛けてきた。SMストアはトップの小売業である。ユニクロともJ.V.を展開している。BDOは12の銀行をM&Aして大きくなってきた。

・フィリピンには、技術と資本が欠けている。ポテンシャルは十分ある。マニラのインフラ不足はむしろ投資のチャンスにしてほしいという。2015年にアセアン統合がスタートする。6億人の市場ができる中で、フィリピンはタイよりも遅れている。これからインフラ投資が加速するとみている。

・フィリピンのサンミゲルのラモン・アン社長(COO、60歳)は、インフラ事業への多角化を進めてきた。サンミゲルといえば、ビールでの知名度が高いが、食品、飲料、容器のほかに、発電、石油精製など、インフラ関連が全体の7割を占めるコングロマリットである。

・フィリピンの経済は6.5%以上のGDP成長を遂げている。国の格付けも投資適格に入っている。1億人の平均年齢は23歳と若い。その中でサンミゲルはビールのシェア95%、ウィスキーや食品(加工肉、乳製品)、包装容器でもリーダーである。日本のキリンHDや山村硝子ともパートナーを組んでいる。それ以上に、電力、石油精製、高速道路、ガソリンスタンド、空港、鉄道、橋など、インフラ企業へと変身してきた。

・アン社長は、1)かくれたリスクに関する情報を十分収集せよ、2)そのためには、ローカルなパートナーと組むことである、3)しっかりした信頼関係を構築して、4)適切な品質と価格を提供することである、という。同時に、5)想定されたリスク(calculated risk)はとれ、6)想定外のリスクを十分考え、7)いつもイノベーティブに、8)チームワークと対話を続けていくべし、と強調する。

・サンミゲルは、フィリピンで2.3万件のガソリンスタンドをもつが、これからもインフラ関連投資はどんどん続けるという。投資のチャンスはアジアでもトップクラスと評価している。かつて戒厳令があったし、誘拐もあったが、今はない、セメントの消費量は1人当たり150㎏と、他のアジアに比べて圧倒的に少ない。フィリピンはリスクの少ない国になっている。

・フィリピンの人材は、バンカー、会計士、エンジニアなどプロフェッショナルサービス業に向いており、有望である。また、フィリピンは水力発電のリソースをもっており、パワーグリットのアセアン統合に大いなる期待を抱いている。

・中国のCITIC(中国中信集団)の常振明会長(58歳)は、北京第二外国語学院日本語学科を卒後しており、若い時には大和証券で研修を受けた。今回は日本語で講演した。CITICは2014年9月に香港に上場しており、時価総額5兆円、アジア最大のコングロマリットである。

・金融と実業の両部門を有し、金融では、銀行、証券、信託、保険などを手掛ける。実業では、重工などの製造業のほかに、不動産、建設・エンジニアリングに手を拡げる。アルミホイールのダイカストでは世界最大の企業である。2013年の売上高は6兆円、営業利益は1.3兆円であった。

・もともとは、中国企業の競争力を高めるために、海外からのマネジメント導入、技術導入、ファイナンスを担当する会社であった。日本との結び付きも強く、1982年に初めて債券を発行し、野村證券が幹事を務めた。90年代には東証へ上場することも検討したという。中国では、オリックス、野村證券、サントリー、神戸製鋼などと合弁を組んでいる。

・中国は今や転換期を迎えており、新しいチャレンジを行っている、という認識である。1)都市化、2)内需消費、3)環境、・エネルギー、4)ネット・IT など、新しい成長分野を自ら切り拓こうとしている。

・その中で、CITICは5つの優位性を生かし、大型のコングロマリットとして、一段と成長することを目指している。優位性とは、①ブランド、②ネットワーク、③人材、④資本力、⑤ガバナンスである。CITICの魂は、「市場化とイノベーションの精神」にあると強調する。

・このように5人の経営者の話を聴くと、1)中国は転換期にあるが、十分チャンスはある、2)アセアン統合による6億人の市場は魅力あるもので、かなりの発展が期待できる、3)フィリピンはかつてのイメージとは全く違って、成長の余地が大きい、という点が印象に残った。

・さらに、中国がリードして創設するアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、タイ、フィリピンの経営者が両手を上げて歓迎していたのには驚いた。アジア開銀(ADB)と競ってファイナンスの規模が広がるなら大いに結構という姿勢であった。それだけインフラ投資の機会が豊富にあるということである。ポートフォリオにおけるアセアンのウエイトを一段と高めておく必要があると感じた。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

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