Industrial Upgrading: 日本の経験 ‐日本のモノづくりの進化と雇用労働改革への問題提起‐

4、世界のシルク(蚕糸絹業)は成長産業

 日本の養蚕業は典型的な衰退産業である。しかし、世界の養蚕業は「成長産業」である。図1に示すように、世界の生糸生産量は2000年の11万㌧から、2012年には16万㌧に増えた。上昇トレンドにある。シルクは高級材であり、先進国・高所得国で消費が伸びている。

図1 世界の生糸生産の推移

 これに対し、日本のシルク需要は一貫して減少してきた。輸入主体であるが、シルクの需要は1975年には2万8000㌧(生糸量換算)もあったが、縮減一途をたどり、2012年には1万1000㌧に激減した。

 供給面で見ると、日本のシルク産業の衰退はもっと劇的である。国産の生糸の生産は、第2次大戦前は4万㌧、戦後も1975年は2万㌧もあったが、今はわずか280㌧である。約100分の一。1950年代は日本の生糸生産は世界の約60%を占めていたが、2012年は0.2%である。一方、1950年代には20%を占めるにすぎなかった中国は2012年には約80%を占めるようになった。

 以上のように、日本の蚕糸絹業は衰退した。しかし、日本の養蚕業の衰退からシルクを衰退産業とみるのは早計であろう。図1に示したように、世界の養蚕業は成長産業であることも事実である。(拙稿「世界のシルクは成長産業」当Webサイト2014年8月1日参照。https://money.minkabu.jp/45988)。

 中国が主な供給国であるが、主な輸出先は欧米の先進国、高所得の中近東である。近年は中産階級の台頭がめざましいアジアの新興国での消費も増えている。シルクは価格は高いが、肌触りの良い高級材である。低所得層の消費行動は価格選好が強いが、高所得層は品質選好が強い。こうした要因が、シルクの根強い需要の背景である。世界のシルク需要が上昇トレンドにあるのは、世界の消費者の所得上昇に対応したものであろう。

 シルクは高級素材である。いかに合成繊維の技術進歩があっても、高所得層にはシルク選好が根強くあると言えよう。生活水準の向上は、ここでも高級品志向として現れている。

5、中国の経済成長の限界

 技術革新の要因は、次の3つであろう。第1はR&D努力、第2は競争市場であるが、第3に雇用労働市場の在り方も重要である。
 中国の経済発展、とくに「世界の工場」としての大発展は、エレクトロニクス分野を典型に、モジュール型イノベーションが世界の技術革新の潮流になっていたことが大きく貢献した。モジュール型イノベーションであったからこそ、未熟練の農民工に支えられた広東省が大発展できたのである。テレビ、パソコン、携帯電話などのハイテク製品分野で世界の工場になり、産業構造の高度化に成功したのはモジュール型イノベーションのお陰である。

 しかし、この分野で先進国にキャッチアップした今日、この「産業構造」の高度化による経済成長は限界が来る。後発国の追い上げに見舞われるからである。量産はできる。しかし、技術がないため、超精密な高級品を自力生産できる能力には欠けている。今の中国産業の現状である。

 今後は「熟練」が大きな役割をなす「産業内」Upgradingのイノベーションを追求しなければならない。日本型雇用形態として「終身雇用・年功序列賃金」が言われてきたが、長期雇用の下で「熟練」が形成され、この熟練工が産業内Upgradingのイノベーションに大きく貢献した。中国が先進国にキャッチアップした後、経済成長を追求するためには、雇用労働市場の在り方が問われるかもしれない。

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