2015年末、24000円視野に~何故黒田日銀と戦っても勝ち目はないのか~

(4)金融政策レジームの転換が鍵を握る

円高デフレを容認し続けた日銀

この過剰な円高と資産価格下落に、金融政策が決定的な影響を及ぼした。日銀は「通貨は財務省管轄、資産価格は市場が決定するものであずかり知らぬ」という態度を取り続けてきたが、それが誤りであった。1990年前後のバブル形成とバブル潰しにおいては、日銀の金融政策は決定的な役割を果たし、それを指揮した当時の三重野総裁は「平成の鬼平」とジャーナリズムからの喝さいを浴びた。しかし「失われた20年」後半の過剰な(異常な!!)資産価格下落を放置したことは、日銀の片手落ちであった。プラスのバブルを潰しながら、マイナスのバブルを容認し続けたのであるから、市場が極端なリスク回避にとらわれ続けたのも当然であった。

シャドーバンキング時代に対応した新金融レジーム

リーマンショック以降、世界の中央銀行は新たなレジームに移行している。米国や英国の中央銀行で始められた非伝統的金融政策、量的金融緩和政策の常態化である。それは中銀が、①金融危機に際しては、最後の貸し手(lender of last resort)ではなく、最後の買い手(buyer of last resort)として振る舞う。また、②流動性供給手段としては、従来の銀行貸し出しを経由したそれではなく、市場価格の引き上げ=リスクプレミアムの引き下げを通した購買力の創造としてそれを遂行する、③そうした新政策は「成長・失業率」等の新たな政策目的を導入することで正当化される、という3点に整理されるだろう。

何故そうした変化が求められたかと言うと、金融の構造が大きく変化しているからである。かつての銀行貸出中心の間接金融時代から市場を通した直接金融・市場金融時代へと金融チャンネルが変化し、今ではシャドーバンキングが金融のメインストリームになっている。それに伴い、信用創造の形態も融資から資産価格上昇へと変化してきているのである。信用(=購買力)は契約ではなく市場価格の変化によって移転するわけで、信用創造とは市場価格の上昇を意味することとなる。金融を監視する役割の中央銀行は市場価格をも管理せざるを得なくなり、銀行融資管理から資産価格管理へと中央銀行のウィングが広がらざるを得なくなる。それはバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が繰り返し述べてきたように、リスクプレミアムのマネジメントを通して行われる。ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁がOMT導入に際して「ユーロ崩壊プレミアムを潰す」と布告したのも、売り叩かれた南欧諸国の国債価格引き上げに焦点があった。中央銀行がリスクプレミアムに影響を及ぼす過程では、リスク選好度の最重要指標としての株価が重要になってくる。グリーンスパン前FRB議長、バーナンキFRB議長は暗黙の政策目標として株価を意識してきており、株価を無視してきた日銀思想の改変が必要になってくるのは当然であろう。

非伝統的金融政策の結果、①中銀総資産の急膨張、②中銀資産中に価格変動のリスクを持つ金融資産の増加、が顕著となり財政コストの発生が懸念されている。これを中銀の堕落、頽廃、モラルハザードの促進と見るか、進化と見るか、議論は分かれる。悲観論者は頽廃と見て、非伝統的政策は失敗し、経済はより大きな困難に陥ると主張する。楽観論者である筆者は、これは中央銀行の進化であり、政策は成功する可能性が高いと主張してきた(2012年9月10日付ストラテジーブレティン(78号)「QE、SM2(スーパーマリオ)で大転換する金融市場~深化する世界の中銀・取り残される日銀」、9月20日付(79号)「ブラックスワン対中央銀行、見劣りする日銀」)。議論はプラグマテックに立てられなければならない。バブル崩壊後の経済で雇用を回復させ、景気を拡大基調に乗せることはそもそも可能なのか、不可能なのか。可能とすればどのような政策によりどのような経路を通ってそれを実現するのか、ということである。その際、日銀白川総裁を初めとして全ての悲観論者が依拠する過去の教科書や思想家の心情、倫理、正義感等は何の役にも立たないのではないか。

★図表10

現在の問題は潤沢な資本が正しい使い手に配分されていないことである。それが是正されれば新たな需要と雇用がもたらされるはずである。その対応策が、主要国の経済当局者に求められている。米国の中央銀行は、この余剰資本を金融市場と実体経済の両面において、リスクテイクを促進する方向に誘導しようとしている。金融市場では株式などリスク資産への投資を鼓舞すること、実体経済では目先の消費だけではなくより長期の耐久財支出や投資を鼓舞しようとしている。

進化する中央銀行

現在、中央銀行のあり方が変わりつつあるように思える。中央銀行における通貨発行の裏付けが変化しつつある。中央銀行のバランスシートは、金本位制では通貨と金、管理通貨制では通貨と国債をバランスさせてきた。しかしながら、ギリシャ危機に見られるように、国債保有に関して疑問が持たれるようになってきている。FRBのバランスシートを見ると、リーマンショック前の資産は、ほとんどが国債であった。リーマンショック以後は、モーゲージ債など市場性証券を多額に組み入れている。また保有国債も償還期限が長く、価格変動の大きな長期債の比重を高めている(例えばFRBのオペレーションツイスト)。これは、中央銀行における歴史的変化とも言えるのではないか。

金から国債へ、国債から(価格変動するリスク資産)市場性証券へ、という資産保有の変化は注目に値する。今は危機対応の対症療法で一時的なものに見えていても、それが定着するという可能性もある。金本位制が廃棄された時も、単に目先の安定を得るためだけの一時的対症療法と考えられていた。当時、金の替わりに何の裏づけもない国債を基に通貨を発行する中央銀行制度が長く続くはずはない、いずれ金本位制に戻ると誰もが考えていたはずである。ニクソンショックによるペーパードル本位制も当時はやはりその場しのぎの対症療法と考えられていた。しかし今になって振り返ると、どちらも新たな通貨制度の始まりであった。今回の変化も同様のものなのかもしれない。

これまでの通貨制度は、誰かが理念的に計画して開発した制度ではなく、市場の必要性に応じて変えられてきたものである。金本位制は、誰もが金に価値があると信じた共同幻想で成り立っていた。国債もまた、徴税権を持つ政府が必ず返済してくれるという信用が裏付けとなってきたが、これが揺らぎ始めている。それでは市場性証券の裏づけは、一体、何であろうか。これは、中央銀行の資産の中に、初めて登場した経済的価値であるといえよう。市場性証券は、将来、明確に予想できるキャッシュフローの現在価値である。金や国債よりも確かな裏付けを持っているとさえ言えるかもしれない。このように、市場性証券を裏付けとした通貨発行のメカニズムが、現在、起こり始めているように思えるが、果たして、新しい変化なのか、それとも一時的なものなのかは現時点ではわからない。しかしながら、新たな通貨メカニズムの導入により、新たな需要創造が必要であることは確かである。需要が急速な生産性の高まりと世界的な供給力の増加に追いついていかなければ、供給過剰で大不況に陥る可能性も高くなってしまう。このように考えるとアメリカは、次世代を考えた経済政策をとりはじめたのかもしれない。アベノミクスにより日銀も世界の潮流に追随せざるを得なくなっている。

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