2015年末、24000円視野に~何故黒田日銀と戦っても勝ち目はないのか~

(3)デフレが構造変化を阻害した

デフレ=価格メカニズム麻痺は、構造変化を妨げ、経済を死に追いやる

デフレは財・サービス市場における価格メカニズムの麻痺、金融市場における貨幣の偏愛=リスクキャピタルの喪失、という二つの経路の遮断を通じて、資源配分の変化=構造変化を阻害した。鍵は国内の成長セクター(=需要・雇用拡大が見込めるセクター)に如何に資源配分するか(=儲けさせ、資本を集めるか)にあるが、デフレが最適資源配分の最大の障害になってきた。所得を再配分するためにはインフレが決定的に重要である。言うまでもなく、市場における「神の見えざる手」と言うのは価格メカニズムであるが、デフレ(より端的にいえばサービス価格デフレ=後述)によりそれが機能しなくなったのである。

生産性上昇率の格差を埋めるサービス価格インフレが日本から消えた

その事情は日本の高度成長期の歴史を振り返ればはっきりわかる。技術革新と生産性向上によって国民生活は急速に向上し、都市と農村間、製造業とサービス業間の所得格差が縮小したが、それは製造業等の高生産性セクターが稼いだ所得が、サービス価格インフレ、農産物価格インフレとなってサービス産業や農業に移転することによって可能となった。いわゆる「生産性上昇率格差インフレ」である。

このサービス価格インフレが停止した結果、日本では所得の再配分が停止し、サービス業の成長と雇用が止まった。図表6は日・米・独・英の製造業と非製造業の雇用推移だが、日本だけが非製造業の雇用停滞に陥っていることがわかる。そしてその原因はサービス価格のデフレにある。図表8に見る項目別物価の各国比較を見ると、製造業製品価格は各国共通で低下傾向なのに、サービス価格は日本だけが低下、他は上昇、と著しい相違があることがわかる。そして図表7によって賃金推移を見ると、日本だけ賃金が下落しており、特に非製造業の下落が大きいことが明瞭である。つまり、世界中で日本だけが『サービス価格デフレ→サービス産業の収益悪化・賃金下落・雇用悪化』という悪循環に陥っていることが明瞭である。

★図表6

★図表7

★図表8

日本と好対照の米国

図表9に1995年以降の米国のセクター別雇用数推移を示す。過去15年間米国では、労働生産性(物的生産性)が大きく上昇し、所得創造=経済成長をけん引した製造業、情報産業で雇用が大きく減少した一方、労働生産性(物的生産性)が余り上昇したとは思われない教育医療、娯楽、サービス等の産業群で雇用が大きく増加した。所得が製造業・情報産業からサービス産業に向けて移転し、サービス産業では雇用増加を可能にする所得が確保され続けたのである。その所得移転の主たる経路は、サービス価格インフレであった。

* 中国などからの低コスト輸入品デフレ、ハイテク製品や通信費など技術革新デフレは世界共通。
★図表9

デフレによるリスクマネーの消滅

デフレはまた究極の貨幣偏愛をもたらし、金融市場がリスクキャピタル提供の場として機能することを阻害した。20年間のデフレと株価、地価など資産価格の下落により、cash is king メンタリティーが定着した。その結果、極端なリスク回避がおき、リスク資産に全く資金が配分されなくなっている。株式益回りは7~8%と社債利回り1%の7~8倍もあるのに、資本が向かわない。いわば資本は現金として死蔵され、金利裁定は停止した。

このように見てくると、ハイエクが言うように、デフレの定着(=相対価格の歪み)が、セクター間の資源配分を完全に停止させ、経済を困難に陥れたのである。この状態を「デフレ下の安定」(中前忠氏「日本経済は市場の日本売りにやられる」週刊エコノミスト2013年2月19日号)、等と美化する人々がいるが、それは事態の深刻さを見誤っている。デフレによる市場機構の麻痺は経済にとって死にいたる病である。一見安定して見えているのは、グローバル経済の成長と財政による需要補てんという、特殊なミルク補給があったからにすぎない。

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