2015年末、24000円視野に~何故黒田日銀と戦っても勝ち目はないのか~

円高が賃金下落圧力を定着させた

世界の労働市場は一物一価、同一労働同一賃金の原則が貫徹しつつある。生産性を上げぬままに賃金を引き上げても、それはインフレ→通貨安となって逆襲される、つまり世界賃金に回帰する。同様に生産性を上げぬままに通貨高になっても、国内賃金下落を引き起こし世界賃金に収斂する。過去20年間の執拗な円高は国内賃金の下落圧力を定着させ、日本に世界唯一のデフレをもたらした。一般的な通貨変動は購買力平価と比べてプラス・マイナス30%程度の為替変動が限度なのに、円の場合は一時2倍という異常な評価が与えられた。それによって国際水準に対して日本企業のコストは2倍となり、賃金も2倍となったために、企業は雇用削減、非正規雇用へのシフト、海外移転などを進めた。この結果、労働コストは大きく低下し、かろうじて競争力を維持できたものの、日本の労働者の賃金はいわばその犠牲となり、長期にわたって低下し日本にデフレをもたらしてきたと言える。

★図表3-4

「実質実効レートでみれば円高ではない」論の無意味さ

ちなみに、多くの経済学者が「実質実効為替レートで見れば歴史的円高ではない」と主張するが、それは因果関係をはき違えた議論であろう。そもそも実質実効為替レートで90年代前半ほど円高になっていないのは、円の名目為替レートがドルなどの主要通貨に対して上昇する中で、製造業を中心に単位労働コストが相対的に低下したためである。実質実効レートは事後的に均衡したにすぎない。むしろ、円高が進行したことで、日本の労働者の賃金は、他国に劣らない労働生産性の伸びが続いたにもかかわらず、大幅に下落してきたと捉えるのが正しい理解だろう。図表5は現地通貨ベースとドルベースで見た時間当たり賃金およびユニットレーバーコストの比較(製造業)だが、日本の賃金は大きく下落したのにドルベースでは大きく上昇し、日本の競争力を阻害したことが鮮明である。円高は修正するべき対象であり、容認するべき対象ではないと言える。

なお、アカデミズムで大きな影響力を持ち、2012年時点での円はことさら円高ではないと主張している吉川洋東大教授は、近著「デフレーション」(2013年1月刊、日本経済出版社)で「インフレは金融引き締めによる不況で抑制できるが、デフレは金融政策では抑制できない(何故ならゼロ金利下での超過準備引き上げに効果はないから)、つまりデフレは原因ではなく結果である」と述べたうえで、「日本のデフレの原因は1990年代に起こった大企業の雇用システム変貌、賃下げにある」と主張している。確かに企業の賃下げはデフレの原因(というよりデフレそのもの)であるが、なぜ企業が賃下げを余儀なくされたかの原因究明がなされていず、隔靴掻痒の議論である。

★図表5

株・不動産価格下落もデフレの一因

資産価格の下落による負の資産効果の影響も大きかった。バブルのピーク1992年の日本の株式と不動産の合計時価総額は3100兆円(対GDP比6倍)に達したが、それが2011年には1500兆円(対GDP比3倍)へと半減した。この下落は年間平均80兆円に達し、それは名目GDPの16%に相当する。この資産価格下落は、直ちに企業と金融機関の問題資産償却コストや担保価値下落による信用収縮となり、企業の収益とアニマルスピリットを奪った。負の波及効果は金融や不動産など内需関連業種に連鎖し、企業のコスト引き下げ=賃下げ圧力を高めた。今日、企業が空前の貯蓄余剰を抱えているのも、資産価格下落に際しての財務バッファーを確保するためという面が強い。

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