インフレ懸念とインフレ期待

・消費税率引き上げ後の景気後退

先週9日発表の、8月の消費者態度指数は前月比0.3ポイント低下と、増税後初の悪化だった。内閣府は消費者心理の基調判断を「持ち直している」から「持ち直しのテンポが緩やかになっている」に下方修正した。

10日朝のテレビ東京のモーニングサテライトでは、解説者が消費税率引き上げ後の消費動向を、収入別に5つのカテゴリーに分類していた。消費減となったのは、下位20%以下と、20~40%で、中位40~60%は微増、上位20~40%の消費増が最も高く、上位20%以上も増加した。解説者は、企業収益増、雇用市場の回復で、下位40%以下の消費もV字、U字回復するのではないかと述べていた。

私もそう期待するが、税率が10%にまで引き上げられると、望み薄と言わざるを得ない。

10日付けのニューヨーク・タイムズも、4~6月期のGDPが落ち込んだ点を踏まえ、来年10月に予定される消費税率10%への再引き上げを「延期すべきだ」とする社説を掲載した。財政赤字削減の必要性は理解する一方で、好転しかけた日本経済への悪影響をより懸念した。

私が収入別5つのカテゴリーで感じたのは、消費増税は、引き上げ前に指摘されていた通り、やはり弱者に厳しかったということだ。これは考えるまでもなく、カツカツの生活をしている人への値上げ攻勢は、生活の質の低下を意味するのだ。その分、女性や高齢者が働けば良いという言い分も分かるが、そういったいわば余剰労働力を持たない家計には、生活の危機が訪れる。増税による可処分所得の減少は、国民の約半数の消費減、景気後退の原因となっているのだ。

上位20~40%の消費増が最も高いのも理解できる。この層が賃上げや株高の恩恵を最も受けていると思われるからだ。上位20%以上となると、欲しいものはいつでも買える層なので、外部環境の変化を受け難い。

関連:ランチ代、平均520円=消費増税が響く? ―第一生命
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140911-00000101-jij-bus_all

・通貨安が望ましいのは公然の「秘密」

9月4日、デフレ対策と称して、欧州中銀は利下げと、部分的な量的緩和を発表した。先週になって、何人かの理事が、利下げの主目的は通貨安誘導だと公表した。通貨安誘導は為替操作として、通貨戦争にも例えられる行為だ。これまでの金融緩和はデフレ対策や景気対策などとされ、通貨安誘導という表現は意識的に避けられてきた。

通貨安が望ましいのは公然の秘密だ。公然の「秘密」にする必要があるのは、1つの通貨安は他の通貨高となり、他国の望ましくない事態に直結するからだ。すべての国が通貨安となることはできないので、より有利な通貨レートをめぐっての通貨戦争が起きてしまう。

通貨安はモノの値段の上昇につながる。インフレだ。自国通貨安は輸入物価の上昇につながる。そのことで、円安の悪影響を語る人が増えてきた。増えてきたというより、円高不況と言われた時ですら、円高の恩恵を強調する人は常にいた。円高とは、外貨安、主にドル安なので、円高を称える理由は公然の「秘密」だったのだ。

輸入物価の上昇は、燃料費など国内に代替投資がないものには悪いインフレとなる。しかし、それまで安い輸入品が国内産を圧迫し、産業の危機となっていたものには復活のチャンスとなる。経済危機、通貨危機に陥った国々は、通貨の価値が3分の1、4分の1になることで、輸入物価は3倍、4倍に跳ね上がったが、国内産業の復活、輸出急増で生き返ってきたのだ。通貨安によるインフレは、必ずしも悪いものではない。

黒田総裁も「円安、マイナスと思わず」と発言したが、私は黒田日銀による量的緩和の一番大きな成果は、円安の「一因」となったことだと評価している。一方で、黒田総裁が支持している消費増税、その結果の部分によるインフレは、国内産業の復活や輸出増が見込めず、経済的には最悪だと見ている。ここで円高になったなら、日本は目も当てられない。

もっとも、何事もバランスで、だからこそ金融政策は、調節、調整などという表現を好む。現状の円安、あるいは150円くらいまでの円安は、日本経済におおいにプラスかと思う。

・景気見通しに悲観的な日本人

米ピュー・リサーチ・センター、経済見通しに関する最新調査で、「日本では向こう12カ月間の経済見通しが急速に悪化し、景気改善を予想する割合が1年前の40%から15%に急低下した」ことが分かった。調査対象44カ国のうち日本が最も将来に楽観的でないことが示された。

中国人は対照的に、80%が将来を楽観している。先進国では米国が最も楽観的で、景気が改善すると見込む割合は45%に上った。
参照:日本人は暗い将来像、楽観的見方は44カ国で最低
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052970203714004580145393759266422?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesThird

世界の多くの国々で、増税と金融緩和が併せて行われている。日本も消費増税と異次元緩和が継続中だ。吸い上げて、放出するのなら、結果は同じだろうか?

消費増税は全国民が対象だ。一方で、緩和や財政政策、公共投資などの恩恵は一律ではない。その結果の一例が、上記の「収入別5つのカテゴリー分類」に見られるのだ。

私はプロの資金運用者として、世界で進行中の矛盾や不合理を発見し、それを収益に換える訓練を受けてきた。矛盾や不合理に怒りを覚えないといえば嘘になるが、ルールを変えるために政治家になろうとも、政治家に圧力をかけようとも思わない。自分に明らかにできることがあるのに、できないことで苦悩したくないのだ。自分という限りのあるリソースを有効に活用するには、ルールの是非には目を瞑って、ルールのなかでどうすればいいのかを考え、行動するのが最善だと考えている。

大きな政府による資金の吸い上げに抵抗するのは、他の誰かにお願いしたい。私は私で、世界で進行中の矛盾や不合理を発見し、それを収益に換えること。つまり、金融緩和の恩恵を、一市民としてどのように享受するかを提案し続けている。先週発表されたNISAの浸透度を見ても、私の力など無きに等しいが、それでも、少しでも多くの人々にとって、インフレ政策が懸念だけではなく、期待ともなるように、対応の仕方を提案していきたい。

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