「新しいIRとしてのエンゲージメント」

・第5は、過渡期の対応である。どの企業もいい時ばかりではない。むしろ苦しい局面が続くことも多い。事業の中身をみると、好調な部門もあれば、陰っている部門もある。次のビジネスモデルが十分見えずに、呻吟している場合もありうる。このような時に、どのようにIR活動を展開するのか。対話などしたくないと思うかもしれない。わが社は今苦しいとわざわざいいたくない、という気持ちになるのは普通である。いい時も、悪い時もIRを続けよといわれても気が重くなる。

・ではどうするのか。無理な対話をする必要はない。但し対話をしないと、意図せざる情報や曲解が流布することにもなりかねない。誤解が生まれないようにだけは十分心掛ける必要がある。会社が苦しいと分かれば、通常投資家は寄ってこない。既存の株主も減っていくかもしれない。しかし、ここがチャンスと考える投資家もいる。厳しい時、苦しい時にどのような手を打つかは、既存の株主に知ってもらうだけでなく、バリュー型の投資家もぜひ知りたいと思っている。ターンアラウンドできる力と施策が納得できれば、それが成果に結び付いた時のリターンは大きい、と知っているからである。したがって、苦しい時も投資家を選んで対話を続けるべきである。

・第6は、個人投資家と機関投資家はどこが違うかを認識した上で、どう対話をしていくかである。その場合、相手に合わせるだけでなく、自らの主張をいかに上手く盛り込んでいくかがポイントとなる。両者の最大の違いは、会社サイドに継続的にコンタクトをとって情報を入手できる頻度にある。一般に機関投資家は会社にコンタクトをしやすく、個人投資家はしにくいといえよう。よって、個人投資家には長持ちする情報が大事である。そのためには、ビジネスのコンセプトを語って、ビジネスモデルを十分理解してもらうことである。彼らは経営者の思いに共感し、印象を大事にする。多様な投資家の中に、分かってくれる人がいる。効率はよくないが、地道な個人投資家との対話の場を作っていく必要がある。

・問題は機関投資家である。プロの土俵で勝負しているので、彼らのルールを知っておく必要がある。彼らは長期投資といいながらも、短期の動きを重視する傾向が強い。ヘッジファンドなど多様なスタイルがあるので、求める情報もマチマチである。一般には数字を大事にして、現場の生の情報を活用する。また、中期計画の進捗を注意深くフォローする。マーケットにインパクトを与えるセルサイドアナリストの予想を参考に短期的なコンセンサスを判断し、その中で売買行動をとるタイプも多いので目先の情報にとらわれやすい。

・企業サイドとしては、中長期のビジネスモデルの強化策とKPIについて十分言及して、説得的な論理と実証によって納得感を得ておかないと、短期の情報収集合戦に巻き込まれかねない。機関投資家のニーズに応えながらも、その意味をよく考えて、提供する材料(情報)については、ミスマッチやギャップが生じないように十分認識しておく必要がある。

・第7として、ではどうしたらよいのか。これから最も有効になるのは、統合報告の活用であろう。財務情報と非財務情報を統合して、企業価値創造のプロセスを明解に語っていくという統合的思考(Integrated Thinking)を十分取り入れていくことである。そのためには、まず統合報告書を作ってみることである。

・その上で、決算説明会とは別に、統合報告説明会を行うことである。これは機関投資家のスチュワードシップにも合致したもので、互いにとって効果的、効率的なものとなろう。来期の業績予想や中期の業績計画に留まらない、より深い理解を得るための機会となろう。会社としても機関投資家のニーズをよく知って、それを経営改革に取り入れていくためのきっかけとして活用することができよう。

・統合報告は、個人投資家が要望する長持ちする情報にもほぼそのまま使える。さらに、既存株主との対話にも大いに活用できる。今後、株主総会での対話は統合報告の内容を軸にしたものに発展していこう。大事なことは、投資家との対話を通じて、自社の強みを一段と磨き、競争力を強化することである。そのことが、他のステークホルダーとの対話にも大いに貢献するものと期待される。

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