平和と貿易の関係 ‐日本の輸出減少についての一考察‐

3、世界の相互依存関係の変化

 世界の相互依存関係は大きく変化した。1995年当時、日米貿易は輸出入総額で1878億㌦、米中貿易は572億㌦と、米中より日米のほうが3倍も貿易量が多かった。しかし、2013年現在、米中貿易は5622億㌦、日米は2038億ドルと、米中のほうが3倍近くも結びつきが強い(図4参照)。

 米国にとって、中国は輸出市場としても重要だ。2013年の中国向け輸出は1217億㌦、日本向けは652億㌦である。米国にとって、経済的には日本より中国のほうが大切になっているといえよう。

図4 相互依存関係の変化

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4、平和と貿易の関係

 日本の中国向け輸出の減少は何が原因か。独り日本だけ落ち込んでいるわけだから、中国経済が調整期にあるためと言うのは理由にならない。また、直接投資が日本からの輸出に代替しているという理由も弱い。欧米も直接投資による中国進出が多いからだ。また、日本の企業の競争力が急に低下したとする仮説も説得力がない。

 日中の政治的関係の悪化が影響しているのだろうか。かつては「政冷経熱」と言われてきた。 しかし、2012年9月の尖閣諸島国有化、安倍首相による靖国参拝で、日中関係は冷え切り、政府首脳間の接触も全くなくなっている。日中関係は異常な状態と言えよう。この日中間の「冷戦」が経済(貿易)に影響しているのではないか。

 戦争相手国とは「貿易」は発生できない。“平和”が貿易の大前提であることはあまりにも自明のことであろう。しかし、いま直面している日本の輸出低迷の原因分析ではこのことが忘れられているのではないか。貿易赤字の分析で対中貿易の異常な落ち込みが明示的に議論されているのは少ない。貿易の発展には平和が重要ということを改めて噛みしめたいものである。

 また、貿易(相互依存)が国際平和を創り出す。この点は貿易戦略が平和的な国際政治に有効性を持つと指摘したR.ローズクランス(『新貿易国家論』1986年)以来、よく論じられていることであるが、これも確認したい。相互依存が深まり、お互いが相手を必要とする限り、戦争は起きない。米国と中国が蜜月関係にあるように、貿易(相互依存)は戦争の抑止力になる。「集団的自衛権」より、貿易のほうが戦争抑止力になるのではないか。

 2000年代の中ごろ、世界経済に占める日本の比重は大きく凋落した。しかし、国内では「小泉劇場」と言われたように、大騒ぎであった(当WEBサイト2013年1月18日拙稿参照https://money.minkabu.jp/37516)。今再び、アベノミクスで燥いでいるとき、外では日本は沈んでいる。「中国は国内に矛盾を抱えていて国民の目をそらすため、対外的に強硬に出る」という指摘がよくあるが、逆に、日本は世界でうまくいかなくなっているとき国民の目を国内問題に誘導しているのであろうか。「平和」を維持し、冷戦のコストを削減しないと、経済面から日本の破綻が来るかもしれない。

 8月は「祈り」の月である。1945年、8月6日広島原爆投下、9日長崎原爆投下、15日敗戦。歴史に対する「祈り」だけではなく、未来への祈りも行いたいものである。

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