「労働力と生産性の観点から見たアベノミクスの成長戦略」

まず労働力人口不足の問題からみてみましょう。労働力不足解決には、やはり女性と高齢者の活用が重要だと思います。
第95号(4月30日)でもご紹介しておりますが、女性の労働力参加率をあげるための政策は、アベノミクスでも女性の活躍推進というテーマで成長戦略の中核のひとつにあげています。具体的には、女性の働く意欲を高めるため指導的地位に占める女性の割合を30%程度に高め、すべての上場会社で女性役員を1人登用することを企業に要請しています。出産後の女性の就労率をあげるため学童保育の拡充を図るとともに育児休暇を3年まで延長することを企業側に要望しています。女性の就労時間を引き上げるため、配偶者控除などの女性就労の足かせとなっている税・社会保障制度の見直しを図り、女性就労に中立的な税・社会保障制度等を中期的に検討していくようです。同時に企業に対し自由度の高い働き方(テレワーク、時短勤務等)の導入なども要請し、女性の就労率、就労時間を引き上げていきます。

一方、高齢者の労働力参加率をあげる直接的な施策はいまのところあまりでていません。おそらく年金・保険などの社会保障制度を見直し、就労するインセンティブを高める年金等の社会保障制度に導入することで問題を解決していくと思われます。高齢者は、体力的な衰えはあるものの、蓄積した経験や技能を持っています。これらを活かせる働き方や環境を提供できれば労働力参加率は向上させられると考えます。

前述の内閣府の試算でも、女性や高齢者の労働力を引きあげても労働力不足は解消できません。特に建設、介護などの非製造業では将来的には労働力不足が今以上に顕著になると考えられます。そのため現政権では、これを補うため外国人労働者の受け入れ環境を整えていく方針です。具体的は、高度外国人人材の受け入れ拡大・促進や外国人技能実習制度の抜本的見直しに着手しています。また現在人手不足が顕著になっている建設業については、外国人労働者活用の緊急措置として外国人技能実習制度の実習期間延長を決定したほか、これを農林水産業や製造業における短期就労にも拡大し、家事支援にも活用して行く方針です。
外国人労働者の受け入れは、労働力人口不足する日本にとっては必要な施策です。一方でこの問題は、日本のこれまでの雇用、社会にあり方を大きく変える問題でもあり、受け入れ範囲を単純労働まで拡大していくのかを含め慎重な議論が必要かもしれません。

女性や高齢者を活用したとしても2060年には1,200万人弱の労働力人口不足が生じます。不足分を外国人労働者ですべてまかなうのは現実的ではなく、潜在的成長率を引き上げるにはやはり生産性の向上が不可欠です。

次に「生産性の向上」の視点からアベノミクスの戦略を考察します。
わが国の生産性の向上は1990年以降伸び悩み傾向になっています。そのためアベノミクスの成長戦略も生産性の向上を意識した内容が盛り込まれています。
そのひとつがICT戦略です。わが国の非製造業の生産性の低さの背景にIT技術を十分に活用できていないことがあります。IT技術を活用することにより、人員を削減すると同時にビッグデータなどを活用し一人当たりに売上げを伸ばして生産性を向上していくことが必要です。そのため政府もこれを後押しするため公共データの民間開放やビッグデータ活用推進について検討しています。

またICTの活用では政府推進しようとしているスマートアグリも注目できます。スマートアグリとはIT技術で制御された農業です。光や二酸化炭素の濃度、成長に応じた肥料の量などの加減をIT技術で制御します。これにより大量の農作物が均一で収穫され生産性が大幅に改善するというものです。またコンピュータで基本制御されるため労働者の負荷が下がるため、就労者の確保も容易になります。高齢化が進んでいるわが国の農業の生産性向上の切り札になるかもしれません。

また成長戦略にあげている各種「特区戦略」やスマートシティ構想などが実現されれば、企業の集積度合いが高まり、結果としてエリアの人口密度が高まるため、サービス産業の効率も上がり生産性の向上につながると考えられます。

最も注目されるのが、今年6月に成長戦略の改訂で発表されたロボットによる産業革命です。少子高齢化で労働力不足が確実な日本にとって、労働力をロボットに置き換えることができれば理想的です。安倍政権も国をあげてプロジェクトを進めていきます。汎用人型ロボットの実現にはかなり時間を要すると思います。しかし介護や工事現場の働く人をサポートするパワードスーツなどは実用化が目前に迫っています。パワードスーツなどが量産化され高齢者や女性などの労働力を幅広く利用できるようになり、生産性の向上だけでなく、労働力不足の解消にもつながります。

アベノミクスの成長戦略は、労働力人口不足が深刻化する日本経済の問題点を意識した内容になっており、戦略内容ではなくその実行力が問われているのかもしれません。

※当コラムは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。

このページのコンテンツは、スパークス・アセット・マネジメント㈱の協力により、転載いたしております。

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