世界のシルク(蚕糸絹業)は成長産業

3、日本のシルク産業も転機を迎えるか?

 世界のシルク産業は成長産業であるのに、なぜ日本は衰退に向かったか。着物から洋服への変化から、長期的には和装類の需要が縮減一途だからである。しかし、この縮減率は小さくなってきた。つまり、足を引っ張る要素が逓減してきた。また、日本経済にも明るさが一部出てきている。特にシルク選好の強い高所得層で景気復活が見られる。日本のシルク産業も転換点に近づいているのではないか。

 一方、先端技術で新しいシルク需要が開発されつつある。東京農業大学の長島孝行教授によると、「カイコのシルクの断面は直径10μmの三角形だが、ヤママユガ科のものは直径が30μmで台形に近い形をしている。しかもある種の糸の中には、一断面に200nmの穴(実際にはチューブ状)が1800個存在する。カイコの糸でさえ、現代の科学技術で作れないといわれているのだから、このようなナノレベルでも特殊な構造をしたものは作られるものではない。従って、この仲間のシルクを利用すれば、カイコのシルクより遥かに軽く、滑らない製品もできる。また、ある種のシルクを使うことで、全紫外線を98%カットする日傘、温湿度調整の 上手な2日間履き続けても臭わない靴下、軽くて柔らかく満員電車の中でも汗をかかないマフラーなど様々な製品が今誕生しつつある」(『新・実学ジャーナル』2011年6月号から引用)。

 シルクは高純度の「タンパク質」から成る。この機能性を利用して、非繊維利用でも新しいシルク製品が続々誕生している。防腐剤のいらない美容液、メタボ対策用シルクゼリー、アレルギーの人でも安心して使用できるUVカットクリームなど、医薬品、化粧品、食品加工の分野で新製品開発が進んでいる。長島教授によると、日本の蚕・シルク研究の水準は世界一という。

 シルクは欧米の高所得国で需要が伸びている事実、またその高機能性を活用した先端技術商品の開発で日本は強いことを考えると、日本のシルク需要も近い将来、転機が訪れるであろう。
 ただし、日本は高賃金・労働力不足の国であるから、1次産業の「養蚕」の復活ではないであろう。シルクの原料は輸入に依存することになろう。

◇ミャンマー養蚕業開発に日本の協力
 先に見たように、世界の生糸産地はよく移動している。いま、世界の生糸生産の8割は中国が占め、その中国でも先に経済発展した東部地区から西の広西自治区へ産地シフトが見られる。その先にはミャンマーが見える。ミャンマーは経済が未発達で、豊富な労働力が半失業状態にある。賃金は中国の5分の一と低く、そして余剰労働力は海外への出稼ぎに出ている。養蚕業の発展にいい条件があるといえよう。

 いま、ミャンマーでは、日本の協力により、養蚕業の発展に向けた動きが出ている。日本のシルク輸入は生糸の7割、絹糸の6割、絹織物の8割を中国に依存しているが、中国の賃金上昇が激しいので、これをミャンマーに転換しようという動きである。ミャンマー産が中国産に代替できれば、ミャンマーに新しい輸出産業の成立を意味する。

 ミャンマーは経済の発展段階が低く、雇用の場が少ないので、海外への出稼ぎ労働者が多い。隣国・タイやマレーシアに300~400万人もの出稼ぎがいる。養蚕業が成立すれば、地方で雇用が創出され、特に若い女性たちが国内で働く機会が増える。一番歓迎すべきことである。

 また、日本の明治期に、生糸は主要な外貨獲得源として日本の近代産業の発展に大きく寄与した。ミャンマーにおいても、養蚕業の輸出産業化は外貨獲得でミャンマーの経済発展に大きく貢献するであろう(ただし、100年以上の時間差で産業が多様化しているので、明治期日本ほど貢献度は大きくはない)。養蚕業開発の支援協力は、ミャンマーの経済発展への大きな協力になるであろう。

付表1 生糸生産(日本)の長期推移
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