「失われた20年」ではなく「モデル転換の20年」~過去最高企業利益の真因~

(3) 「雇用輸出」モデル、品質優位・技術独占モデルへの転換完了

海外投資著増、モデル転換進展

1990年にピークに達した「失業の輸出のビジネスモデル」、「価格競争を挑むビジネスモデル」はここ20年間で大きく変わった。日本企業は国内を空洞化させつつも、工場の海外移転を進め、とうとう日本は世界最大の貿易黒字国から大幅な貿易赤字国となった(図表9参照)。

図表10に見るように日本の製造業の海外生産比率は30%以上に高まった。もっとも海外生産を売上高や付加価値ベースでみれば、(技術開発やマザー工場を展開する)日本でのコストが高いために依然として国内生産のほうが大きく見える。しかし雇用ベースでは圧倒的に海外が大きくなっていると推察される。経産省の「海外事業活動基本調査」では、アンケート回答企業だけでも海外雇用は2012年度で558万人(うち製造業436万人)となり、それは20年間で倍増している。主要製造企業では海外雇用者が日本国内を大きく上回る状況となっている。さらに海外現地法人の純利益は2012年度6.4兆円(2003年度は3.2兆円)と10年間で倍増している。

図表11は日銀の資金循環勘定による日本企業の海外投資残高推移であるが、ここ20年間の急増が分かる。過去20年間長期デフレで日本の名目GDPが全く成長しなかったのと同様、日本企業の総資産は20年間ほぼ横ばいであった。その中で現金とともに海外資産だけは急増し、総資産に占める海外比率は1990年の1.5%から2012年には6.3%へと上昇している。日本企業は海外生産で所得を稼ぐモデルに完全に転換したと言える。

困難な中、技術開発投資を継続

そうした中で日本企業の技術優位は基本的に維持された。図表12に主要国の研究開発費総額対GDP比の国際比較を示すが、日本は経済困難な中で、世界最高水準の技術開発投資を続けてきたことが分かる。既存商品、既存技術では、追い上げる韓国・台湾・中国にコスト面で対応できない。また日本を追いかけてきた韓国、台湾企業は今中国の追撃に直面している。そうした中、日本企業は主たるビジネス分野を脱競争の技術独占分野に移行させてきた。ハイテク商品ではあっても、テレビやパソコンなどコモディティー化したものは既に日本企業の担当分野ではない。日本企業はハイテク素材、ハイテク部品、ハイテク装置、ハイテクのマンマシンインタフェース技術、システム技術などに特化している。過去最高利益を稼ぎ出しているのは、そうした高技術製品群である。

★図表9-10

★図表11-12

1980~90年代の米国のモデル転換の成功例

なお、先進国におけるビジネスモデルの大転換は1980~90年代の米国での経験が参考になる。それまで大きな政府(ケインズ主義、修正資本主義体制)下の米国企業は、賃金・物価上昇の悪循環の下でインフレが進行し、企業の価値創造は停滞していた。そこに台頭してきた日本企業の挑戦を受け、競争力危機に瀕していった。1984年のヤングレポートなどの研究が、米国企業のリストラとビジネスネスモデル転換を迫った。レーガン大統領のレッセフェール政策の下で、米国企業は国内のリストラ(単位労働コスト抑制)、工場の海外移転、ハイテクへの産業シフトと独占市場の囲い込み(インテル、マイクロソフト等)により、新たな価値創造のモデルを確立した。この「価値創造モデルの転換」こそ、1990年代後半以降の世界唯一の超大国米国の覇権復活をもたらした真因である。筆者は「アメリカ、蘇生する資本主義」(1993年東洋経済新報社)を著わし、その事実をレポートした。現在の日本は「価値創造モデルの転換」という点で、1990年代初頭の米国を彷彿とさせる。

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