「失われた20年」ではなく「モデル転換の20年」~過去最高企業利益の真因~

異常なペナルティ円高の定着

このように本来為替動向は、①か②によって説明できるはずなのに、①でも②でもない異常値の円高が1990年代の日本に定着した。円が急騰した1980年代後半、又は1994年頃、日本の金利水準は米国に比べて名目でも実質でも決して高くはなく、金利差要因から円高になる必然性はなかった。また購買力要因面でも購買力平価は1ドル200円近くと低く、かつ物価上昇率格差もわずかだったので、1ドル100円超までの大幅な円高を正当化する理由とは到底言えなかった。つまり日本の1990年代以降の円高は極めて特殊な円高、日本へのペナルティとしての円高と考えられる。1990年当時の手がつけられない日本の競争力、近隣破壊的競争力、その結果としての大幅貿易黒字を抑止するためのものだったと言える。日本の突出した競争力は①ただ乗り(米国の寛大な技術供与、市場開放など)②固定レート時代、1ドル360円という購買力平価からかけ離れた過度の円安が続いたこと③日本の閉鎖市場、等過去の特殊な環境の賜物であった。故に長期の経済合理性から考えれば、フリーランチを清算するものとしての異常な円高にも必然性があったと考えられる。

2008年からの円高要因は金利差

もっともようやく膨大な内外価格差(ドルベース輸出価格を上回るコスト高)は解消した。2009年のGDPベースの購買力平価は115円と、実際の為替レートにほぼ収斂してきている。また、日本の突出した産業競争力も韓国、中国などの台頭により、過去のものとなった。日本の貿易黒字は大きく減少し、対外経常黒字は残っているものの、中国の影に隠れて殆ど見えなくなっている。日本は15年以上かけて、ただ乗りのコストを払い終わり、もはや購買力平価を上回る円高を甘受する必要はなくなった、日本円は今や他通貨と同様、購買力平価プラスマイナス30%で推移する普通の状態になった、と言えるのではないか。

このように考えると、2008年後半以降の110円から直近85円(購買力平価比30%高)までの円高は、ペナルティとしての円高の再来では全くなく、ひとえに米国の大不況・ゼロ金利導入による金利差要因の円高であった、と結論付けることができる。従って、今後米国景況感の回復と米国のゼロ金利解除が実現すれば円安転換が起きると予想できる。既に米国公定歩合の引き上げなど、緊急避難的金融緩和の出口論議が浮上しており、円高のピークは過ぎたと考えられる。

★図表10 ★図表11

為替の自己実現性に注意すべき

もっとも為替の自己実現性、一方方向のスパイラルには注意が必要である。円高でも円安でも、ひとたび一方向に揺れると円高(円安)が更なる円高(円安)の原因を作り、円高(円安)に弾みがつくという傾向である。円高→デフレ・実質金利高→一段の円高、円安→インフレ・実質金利低→一段の円安、という悪循環である。それは為替変動を極端にし、経済の持続性・サステイナナビリティーを阻害するので望ましくない。従って適度の為替介入は必要である。また日本の現状を考えた場合、購買力平価(2009年115円/ドル)に収斂する適度の円安水準が望ましい。それを実現する為替政策・金融政策が望まれる。

★図表12

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