なぜ米国長期金利の急低下が株高ドル高要因なのか

何故量的金融緩和政策が正当化されるのか
長期金利低下の原因を「企業の稼ぐ力の低下、資本主義の頽廃」と見るか「資本生産性の向上、企業利潤の上昇」と見るかで、量的金融緩和に対して正反対の評価をもたらす。前者の立場に立つ論者にとっては、量的金融緩和は、頽廃している経済実態に対して紙幣を供給しバブルを助長する謬策となる。しかし後者の立場に立てば、量的金融緩和は「市場に存在する資本の余剰(slack)を稼働させるという」健全・適切な政策ということになる。

そこに余剰の未稼働資本が存在しているなら、更なる資金コストの引き下げによりそれを稼働させれば経済的更生は高まる。バーナンキ前議長によって定着した金融政策=量的金融緩和が創造的であるのは、経済の「slack(余剰)」の解消に照準を定めたことにあるが、「slack(余剰)」は労働のみならず資本もそうである。本質的に労働の余剰と資本の余剰はメダルの裏表であり、連動している。実は労働に余剰がある状態とは資本に余剰がある状態とも言えるのである。

それにしてもなぜ今年に入ってからの中央銀行の緩和的姿勢の表明が、更なる長期金利の低下をもたらしたと言われるのだろうか。仮に中銀の緩和姿勢の表明がなかったとすれば長期金利は低下しなかったのであろうか。多分そうだろう。中銀のFF金利のターミナルバリュー引き下げの示唆が、銀行の予想資金コストを引き下げ長期金利の低下をもたらしたと考えられる。それは、市場に未稼働の資本が存在しているからこそ有効なのである。一段と低下した長期金利は、資金コストの引き下げを通じて余剰資金を稼働させ、新規需要創造と成長率引き上げに寄与するだろう。それは中長期的にはドル高要因である。

新産業革命の成果をいかに捕捉するか
上述の新産業革命による労働と資本の生産性上昇が「slack(余剰)」の原点という見方は、経済統計との整合性が取れないという議論があろう。米国労働省統計による米国労働生産性はこのところ1.4%前後とかつてよりも低下傾向にある。新産業革命の下でなぜ労働生産性統計データは低調なのか。生産性とは価値創造を労働投入によって除して計算するので、価格下落が大きければ物的生産性が高くても、生産性が高まらない場合がある。また生産性が低いセクターの比率の高まりが全体の生産性を押し下げている可能性がある。更に、生産性上昇が高い産業で雇用が減少し、同時に当該産業での販売価格が低下して名目付加価値創造が停滞し、他方その産業で生まれた失業者が新たな雇用につかず「slack(余剰)」のままとなると、経済全体では生産性が停滞することとなる。

このような場合、企業内で物的生産性が上昇していても、マクロ統計では捕捉できないことになってしまう。それでは新産業革命で発生した真実の生産性上昇を捕捉する手掛かりは何かというと、労働と資本の「slack(余剰)」の程度ということになる。つまり、雇用の停滞と金利の低下そのものが、新産業革命による労働と資本の生産性上昇の傍証と言えるのである。

このように考えると、需要創造により「slack(余剰)」を解消する政策が如何に適切であるかが分かる。逆に資本に余剰があり、長期金利が低迷しているのに、FF金利(ビジネスの資本コスト)を引き上げると、資金余剰は一段と高まり、リセッション、金利低下と株価急落がもたらされであろう。2000年、2005~2006年のグリーンスパン時代の利上げ、逆イールド化(長短金利逆転化)が、ITバブル崩壊、住宅バブル崩壊という金融危機をもたらしたのは当然の帰結であったと言えるが、それが正しかったかどうかについては疑問が残る。当時必要だったのは、金融引き締めによるバブルつぶしではなく、余剰資本をバブル形成ではなくより持続性のある需要分野へと誘導する政策であったと考える。望まれたのは緩和的金融政策を維持しつつ、制度変更や財政、税制などを総動員する総合的マクロ政策だったのではないか。

最近サマーズ氏やクルーグマン氏など米国のオピニオンリーダーにより、金融緩和を維持しつつも、更なる財政政策や税制改正、所得分配是正などが需要創造、成長力の引き上げに必要だとする議論が提示されている。サマーズ氏の議論を「長期停滞論」と悲観的に解釈する向きもあるが、氏の主張は適切な政策により更に潜在成長率を高めることができる、というものである。その含意は決して株式に対する悲観的見通しではないことを、確認しておきたい。

結論: 長期金利と株価
このように考えると長期金利の低迷or下落は、利用可能な余剰資金が存在しているということであるから、本質的に良いことである。問題はこの余剰資金が有効に稼働する政策がとられるのか、それともそれを阻害する政策がとられるのかということ。前者なら株高、後者なら株価下落、株式市場は金融政策に大きく依存する局面にあると言える。

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