年初のテクニカル調整は終わったか

(3)根拠に乏しい悲観論

株価下落によって一気に噴き出した悲観論を検証すると、いずれも根拠に乏しいことがわかる。

① 1994年テキーラショックとの決定的相違
FRBの引き締めが国際金融混乱をもたらしたケースは、1994年のテキーラショックである。当時FRBは長期続いた低金利からの引き締めを開始し、FFレートは3%から6%へと一年間で倍増した。長期金利(10年国債利回り)はそれに完全に連動し、やはり一年間に5%から8%へと急騰した。この長期金利の急上昇で、多くのリスク資産投資の巻き戻しが起き、最も脆弱であったメキシコペソが急落し、米国国内ではカリフォルニア州オレンジ郡が債務不履行に陥った。しかし今回は新興国から還流した資金が米国長期金利を押し下げている。それは今後のリスク資産投資を後押しする要因になるという点で、テキーラショック時と事情は正反対である。それでは、1997年のアジア通貨危機や1998年のロシアルーブル危機と今回の新興国通貨不安の類似性はあるかと考えると、これも全くないと言える。そもそもアジア危機、ロシア危機はFRBの政策変化が全くないところで起きた危機である。つまりテ―パリング(QEの縮小)が新興国の通貨不安を引き起しそれが先進国のリスク資産の価値を引き下げるなどと言う因果関連は、全くないと言っていいのである。では新興国に世界を脅かす危機の種があるかと考えると、中国以外にないと言える。いわゆるフラジャイル5(BIITS:ブラジル、インド、インドネシアネシア、トルコ、南アフリカ)は経常赤字が大きいため、通貨と金融が不安定であるが、既にオープンな資金移動によりショックには至らない。

② アベノミクス賞味期限切れとの謬論
アベノミクス賞味期限切れ、無効説も根拠に乏しい。断片的事実によるアベノミクス批判のいずれも根拠は薄弱と考えられる。

(a) インフレによる実質賃金の低下という懸念 → 円安による輸入物価の上昇により物価が上昇している。1月の物価は前年比1.6%(食糧、エネルギーを除くコア・コアで0.7%)となりデフレ脱却が現実になった。賃金の上昇は遅行するので、今のところ実質賃金はマイナスである。しかしそれは過渡期における不可避の一時的現象であり、やがて実質成長の増加、賃金上昇がおきれば回復するだろう。実質賃金が低下し続けるとするのは、アベノミクスが失敗するとの結論を根拠とした批判と言える。

(b) 輸出が伸びず円安の効果がマイナスに → 輸出数量の回復が遅れているのは、企業の国際工程間分業の再構築に時間がかかるため。①企業の海外生産シフトの定着、②既に日本で生産力が失われた商品の復活には時間がかかっている、③日本の内需が外需より勢いがあり輸入数量が減らない、などの長期変化が起こっているため。しかし円安メリットは企業の採算にはっきりと表れており、円高に戻らないことを確信した企業は、時間をかけて国際工程分業の再アロケーションを行うので、いずれ貿易数量にプラスに働くだろう。Jカーブ効果は生きているが発現に時間がかかるということである。

(c) 円安に支えられた企業収益は一過性 → 大幅な企業収益は円安による、タナボタ利益と見えるが、それは長期円高局面で日本企業が成し遂げた世界最高のコスト削減の賜物。日本企業のULC(単位労働コスト)は世界で一番低下してきた。円安になりその成果が表面化したと考えられる。しかし、アベノミクスの成功による売り上げ数量の顕著な増加は未だ実現していない。今後は大きく低下した損益分岐点売上高の下で、数量成長がおきれば、そのギアリング効果により高い増益率が維持されると考えられる。

(d) 第三の矢の失望 → アベノミクス第三の矢、成長戦略が不発で失望を招いているという解釈が広がっている。しかし、成長戦略、構造改革、規制緩和は長期間かけて実現し、その成果も長期にわたって徐々に現われていくもの、短期の株価や経済成長の変化を説明するものではない。アベノミクスの第一の矢、金融緩和が失敗するとする論者の口実である。数年のスパンを見れば実際は雇用制度、法人税、農業改革など着実に進展している。
(e) 唯一の正当な懸念は増税のマイナス → これはマイナスだが5兆円の財政対策と円安の効果で吸収可能であろう。

円安と好業績を打ち消す悪材料はない
断片ではなく全体像を見ることが大切である。全体像を考える時、円安と企業業績の持続性が決定的に大切である。円安持続がデフレ脱却と企業業績のカギである。そして企業業績が、雇用、賃金(ひいては消費)、企業投資、株価のすべての変化の起点である。今円安と企業業績にゆるぎない好条件が備わっていることを過小評価してはいけない。そしてそのための必須の条件が日銀による質的量的金融緩和の維持にあることは言うまでもなく、それに対しても不安は全くないのである。

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