ベトナム訪問記-チャイナプラスワンが農業発展への道-

4、NGOのマネジメント能力が生物多様性を守るか 

 今回のベトナム行は、経団連自然保護協議会(佐藤正敏会長)の現地視察ミッションに参加したものである。経団連自然保護協議会は世界中の自然保護関係NGOに助成金を出しているのであるが、助成金が効果的に使われているかの検証、さらに、どういうプロジェクトに助成金を出せば自然保護に役立つかを発見するために、毎年世界のNGOの活動サイトを現地視察している。

 ハノイ北方のバッカン省を訪問した。中国との国境に近い。ここはベトナムで最貧と言われるが、意外に生活水準の高さを感じた。2年前、同じく経団連自然保護協議会の現地視察団で、ミャンマーの中央乾燥地帯パコック県を訪問したが、本当に貧しさを感じた。今年3月に訪問したラオス中部の焼畑地帯ピン郡も貧しかった。同じく最貧地帯と言われるが、ベトナムの方がスタンダードが高い。中国の農村よりも水準が高い。何故であろうか(ちなみに2012年1人当たりGDP:中国6,071㌦、ベトナム1,753㌦、ラオス1,380㌦、ミャンマー868㌦)。水田地帯ということで説明できるのであろうか。

◇貧困地区バッカン省の自然保護
 国際NGO「TRAFFIC」は、教育(知的)水準が高く、創造的で、使命感の強い人達であった。環境保護NGOは“知識集約型産業”という私の仮説を実証できた。トラフィックは、野生生物の違法な国際取引が生態系を脅かさないようモニタリング活動を行っているが、ベトナムでは経団連自然保護基金の支援を受け、ハノイ北方のバッカン省(南シュアンラク村)で、希少種の野生薬用植物(漢方薬の原料)の保護活動を行っていた。過剰採集でその多くが絶滅の危機に瀕している。

 過剰採集による野生種の減少を防ぐため、代替的な収入方法として農家に薬用植物の“栽培”を指導している。ショウガ科のアルピニア(胃の疾患治療剤)とアモマム(解熱薬、利尿薬)が栽培の対象になっていた。選果し、乾燥させてから販売する方法も指導していた(選果・乾燥後の1㎏当たり価格は10倍になる)。栽培農家は所得が増えるなど成功の兆しは見えるが、野生種の保全に成功するか否か、私にはまだ確信はない。国境を越えてくる中国人バイヤーは野生種を欲しがっているからだ。野生種の採集の方が薬効が高いと信じられている。実際、野生種は栽培種よりも高値で買っている。

 また、どの品種でも、何処でも、栽培化が可能というわけではない。野生種の種類によっては、成長が遅いとか、特殊な土壌を必要とするなど、多くの薬用植物が栽培品種化が困難である。そのため、栽培化の指導だけで生物多様性を保全することはできないであろう。

 NGOトラフィックは違法取引のモニタリングに際し税関、警察、森林保護局等の執行機関との連携が強い。当局を巻き込むマネジメント能力に長けていると言えよう。野生種の保全には、代替的な収入源の開発(栽培の普及)だけではなく、効果的な規制が必要であろう(インセンティブと規制の組み合わせ)。トラフィックの当局を巻き込んでのモニタリング能力こそ、野生薬用植物の保全に効果をもたらすであろう。そのためには当局に、野生種保護の重要性を理解させることが一番重要なことである。

 今回の経団連視察団の現地訪問は、NGOを勇気づけるだけではなく、現地の当局者たちに野生種保全の重要性を認識させるのに役立ったと思われる。野生種の保護のために、わざわざ遠く日本からやってきたというメッセージになるからだ。トラフィックは日本経団連をも上手に利用したのである。

 (参考)叶芳和「ベトナムの変化と日本外交の効果」Webみんかぶ(コラム)2013年11月5日掲載。https://money.minkabu.jp/41949

付表1 各国の経済比較(2012年)      
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