ベトナム訪問記-チャイナプラスワンが農業発展への道-

2、ハノイの農家は日本より上だった

◇バイク乗者のマスクと有機野菜
 ハノイの街はバイクで溢れている。街角に立っていると、バイクの波が押し寄せてくる。バイク乗者の4~5割はマスクを着けている。空気が汚れているせいか。
有機無農薬野菜は3~5倍の高値で取引されている。食の安全はベトナムでも深刻な問題になっている。これらの事実から示唆されるように、経済発展の緒に就いたことから、環境問題に極めて敏感になっている。

 中国からも、食品が輸入されている。しかも、ベトナム産と混ざっている。消費者は毎日、不安だという。地元産の有機野菜は3~5倍もの高値の背景だ。

 有機無農薬野菜の価格が異常に高いが、これは中進国入りの初期段階にある国の特徴である。1990年頃、台湾を訪問した時、医者や弁護士など高所得層は自国産の野菜を食べないという話を聞いた。農薬まみれの野菜を恐れたのである。
 後進国は農薬を使わない。農薬や化学肥料を買う金はなく、使い方も知らない。一方、先進国は安全健康志向が強く、また規制も厳しく、農薬の使用は制限されている。結局、生産性至上主義の初期中進国で農薬汚染がはげしい。ベトナムはいま、そのような発展段階という事であろうか。(注、ベトナムの1人当たりGDPは1,500㌦)。国際比較については付表1参照。

◇農家は工場労働者より高所得
 ハノイ市農業局の案内で、近郊農村を幾つか視察した。ドエンファ村(Thanh Tri郡Duyen Ha)には「クリーン農業栽培ゾーン」がある。村の全農家300戸が参加し、総面積50㌶である(土地は国の所有、農家は使用権)。農家の経営規模は平均1,800㎡(18㌃/戸)の零細である。各農家は自分が作りたいものを自由に作り、出荷も自由である。ただし、栽培管理の仕方はハノイ市農業センターの指導に従う。農薬は使うが、許可されたものだけを使う、また販売前○日は散布しないなどの規制が厳しい。

 元々、組合は昔からあった。2008年から、ハノイ市は当地域を野菜専用地帯として決め、300農家に説明し納得してもらい、50㌶で集中的にクリーン野菜作りをしている。技術は農業センターが教える。病虫害対策で農薬を出来るだけ使わないようにするのがポイントだ。畑はモンシロチョウみたいな小さな蝶々がいっぱい飛んでいる。農薬を使っていない証拠だ。

 収穫後、何処に出荷するかは農家の自由である。組合は注文を受けた分、センターで初期処理して出荷する。ビニル袋にハノイ市公認安全野菜のシールを張るので、ブランド化される。価格は市場流通品より2~3倍高い(3割高ではない。3倍!)。ちなみに、小松菜1㎏60円、さやえんどう1㎏100円である。
 レストラン、スーパー、会社食堂などからの注文であるが、まだ全生産量の約3割分しか注文を獲れない。7割は農家が自分で市場に出す。一般市場で売る分は組合経由より安い。直接ここ農場に来て、農民から買う人もいる。

 農家の年間収入は5000~7000US㌦(50~70万円)である。10a当たり収入は27~37万円である。経費は30%と言われるから、所得率は70%と高い(10a当たり所得は19~26万円)。日本のコメの場合、10a当たり粗収入は10万円程度であるから、ハノイ農家の単収はかなり高いと言えよう。

 ハノイの工場労働者の賃金は、ワーカーは月額150㌦(1万5000円)程度、エンジニアは340㌦(3万円強)であるから、クリーン野菜農家は都市の工場労働者より所得が高い。(ただし、これは工業がまだ未発達というという要因もある)。

 日本は1960年代(昭和30年代)の近代化農政以降、都会並みの所得が農家の目標であったが、ベトナムでは早くもそれが実現していた。ハノイの農家は日本より上だった。これも今のベトナム社会の一断面である。

 ハノイ市は、ドエンファ村のようなクリーン野菜センターを増やす政策に力を入れている。クリーン野菜センターは、現在、116拠点、4,500haであるが、2015年には300拠点、6,000ha、2020年には9,000haを目標にしている。当初は50㌶規模であったが、いまは20㌶規模のエリアでも認可している。ベトナム農業の今を見た思いである。

◇有機野菜づくり自主グループ、リーダーは法学部出身
 「農業はチャンスです。良いもの作ればベトナム人に歓迎される。中国にも売り込める。雲南省への高速道路300㎞が来年完成する」。こう語るのは、ハノイ市西北のソクソン郡(Soc Son)で有機野菜を経営し、1ケ月で4,000万ドン(2,000US㌦、20万円)出荷しているハウさん(35歳、2児の母親)である。年収は240万円であり、ベトナムの発展段階からすると大変な高所得である。

 彼女はこの地域の有機野菜づくりの自主グループのリーダーである。ドエンファ村のようなハノイ市公認のクリーン野菜センターとは違う。グループ平均では、1人当たり収入は1ケ月15,000~20,000円である。主婦業兼務であり、自由時間が多いにもかかわらず、工場のワーカーより高所得である。補助金なしで、都市労働者より高い所得を稼いでいる。「ハノイの農家は日本より上だ」と強く感じたものである。

 圃場を見て興味深かったのは、一つの畝に紫蘇や小松菜など何種類もの野菜が混植されていたことだ。理由を聞くと、毎日、色々な種類の野菜が収穫できる、病害虫は其々の野菜に其々の虫がつくが、混植にすると虫が広がらない、単菜だと害虫が一挙に広がるという。確かに理に適っている。近代農業を見慣れていると見失いがちな発想だ。こうした有機無農薬栽培で、収穫は以前より2~3割アップした。ハウさんの圃場は6畝あり、全部で50種類の野菜が作られている。

 このグループが有機野菜を始めたのは、今年1月からである。市公認のクリーン野菜センターとは違い、完全な無農薬であり、普通の3~5倍の高値で売れている。栽培技術はデンマークの技術である。ベトナム農業中央会がデンマークから技術者を招聘して、ハノイ市内でインストラクターを育成支援している。その講習会にこの村から3人参加し(2008~09年)、その3人が村の400人に技術を教えた。ハウさんは、その400人の中の1人である。経営耕地が2haと大きく、また大学卒(法学部)ということが、リーダーになれた背景であろうか。

 グループは現在、73戸、6haである。村の総農家数は2,800戸。この有機野菜づくりは、健康に良い、環境に良い、収入が高い、ということで、若者が関心を持っている。工場団地で働く人は高卒で、仕事もつらい、ここの農家の方が収入も高い。この1年で、60組視察団を受け入れた。村の中にも、やりたい人が多い。いま6haであるが、近いうち5ha増やす。土地を交換して集約化中とのこと。

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