ベトナムの変化と日本外交の効果

2、モンゴルも変わった

 1990年代の中葉、民主化直後のモンゴルを2回訪問した。強く印象に残ったのは、モンゴル人の中国嫌いであった。内モンゴル地区を中国に獲られたという歴史が背景であろうか。しかし、最近、モンゴル人知人と話してビックリした。「中国嫌い」ではないという。中国のお陰でモンゴルが経済発展できるようになったという。

 モンゴルの輸出の9割は中国向けである(現状)。中国向け輸出が、モンゴルの経済成長を支えている。主な輸出商品は石炭、銅精鉱、亜鉛精鉱、鉄鉱石、カシミヤである。そのほとんどが中国向けである。

 90年代中頃、モンゴルを訪問した時、彼らは地下資源の豊富さを強調していた。「元素記号表に載っているもので無いものはない」と誇っていた。しかし、この地下資源は経済発展に結びついていなかった。モンゴルは内陸国で、港がない。石炭や鉄鉱石は豊富でも、重量当たり単価が低く、輸出できない。アルミニウムなど、銅以上の非鉄金属しか輸出できないと言われていた。

 しかし、隣国の中国が経済発展し、しかも世界中の資源を鯨飲するかのように輸入することで経済成長している。資源価格も高騰した。90年代には予想もしなかった高価格で、しかも隣国が資源輸入国になった。ここに初めて、モンゴルは豊富な地下資源を輸出できるようになった。近年は鉱業開発が盛んである。GDP成長率は、工業成長率よりも高い。これも資源輸出が要因であろう(2011年、12年の成長率は、工業9.0%、7.2%に対し、GDP成長率は17.5%、12.4%と高い)。

 中国向け輸出で経済成長できるようになった。そのためであろうか、「中国嫌い」ではないと言う。経済の相互依存の変化が、政治的関係まで変化させたと言えよう。

表2 モンゴルの貿易構造(地域別)
表2 モンゴルの貿易構造

3、日本の「自由と繁栄の弧」外交に影響するか

 安倍首相は、第2次安倍内閣後の最初の外国訪問先として、2013年1月、ベトナム、タイ、インドネシアの東南アジア諸国を訪問した。次いで、3月にはモンゴルを訪問した。第1次安倍内閣(2006年~)の外交方針「自由と繁栄の弧」を踏襲したものであろうか。「自由と繁栄の弧」とは、ユーラシア大陸に沿って自由の輪を拡げ、普遍的価値を基礎とする豊かで安定した地域を形成するというもの。
 東の米、豪、中央のインド、西のEU、NATO等と緊密に協力し、新興の民主主義国を帯のようにつないで「自由と繁栄の弧」をつくろうというもの。当時、中国やロシアに対する包囲網とも取られた。今回のベトナム、モンゴル訪問も、この「価値観外交」に沿ったものであろうか。

 しかし、この数年、アジアの相互依存関係には変化がみられる。上述のように、
モンゴルは輸出の9割が中国向けであり、それによって経済発展している。また、ベトナムと中国の相互依存関係も強化されつつある。2003年以前(中国のWTO加盟以前)あるいはリーマンショック以前と比べ、世界の相互依存の関係は大きく変わった。

 モンゴルやベトナムは、「中国包囲網」に加わるであろうか。確かに、日本はモンゴルに対する最大の援助供与国である(2012年度までに累計22億㌦の援助)。しかし、モンゴルの中国市場依存(輸出)は年間40億㌦である(2012年)。また、日本のベトナム援助は23億㌦(2012年度)、これに対し、ベトナムの中国市場依存(輸出)は131億㌦(2012年)である。日本の援助額の伸びより、中国市場への輸出額の方が今後の伸び率も大きくなるであろう。

 「中国包囲網」の効果はあるであろうか。下手すると(もし効果がない場合)、空回りし、逆に、日本の「外交力」の劣化を導きかねない。最近の世界の相互依存関係の変化を分析すると、日本の「価値観外交」は大丈夫だろうかと心配になってくる。10年以上前の国際情勢を前提に作られた外交理念で大丈夫であろうか。そんなことを考えさせられたベトナム旅行であった。

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